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『おとなのけんか』

2012年03月13日 | 映画(あ行)
『おとなのけんか』(原題:Carnage)
監督:ロマン・ポランスキー
出演:ジョディ・フォスター,ケイト・ウィンスレット,クリストフ・ヴァルツ,ジョン・C・ライリー

大阪ステーションシティシネマにて。
上映時間が長い作品が増えるなか、本作はなんと79分の潔さ。

フランス/ドイツ/ポーランド作品です。
第63回トニー賞の演劇作品賞を受賞した舞台劇を、巨匠が映画化。
原題は“Carnage”で、「修羅場」の意。
ちなみに舞台の原題は“God of Carnage”で、『大人は、かく戦えり』と訳されています。
なんだかウディ・アレンっぽいタイトルだし、内容もそれっぽい。
『ゴーストライター』(2010)の次にこんな作品を撮っちゃうなんて、
どれだけ引き出しが広いんでしょ、ロマン・ポランスキー監督。

ニューヨーク、ブルックリン。11歳の男の子同士が喧嘩。
片方がもう片方から木の枝で顔をはたかれて前歯を折る怪我をする。
「加害者」の両親であるアランとナンシー、カウアン夫妻は、
「被害者」の両親であるマイケルとペネロペ、ロングストリート夫妻のもとへ。
詫びるカウアン夫妻をロングストリート夫妻がもてなし、
友好的に和解の話し合いが進むかに思われたが、いつしか本音が飛び出し……。

これだけの話です。
タイトル・シークエンス(冒頭のタイトルと出演者名が流れるヤツ)の背景に、
公園で子どもたちが喧嘩するシーンが遠巻きに映し出され、
それが終わればいきなりロングストリート夫妻宅へと移ります。
撮影場所は99%と言ってもいいほどアパートの一室、
残り1%がアパートのエレベーターホールと公園なので、
製作費は前々述の『昼間から呑む』より安く済みそう。
しかし、役者の顔ぶれを見れば、ギャラは相当払わなきゃならんでしょう。
そして、2組の夫婦4人とも、ギャラが高いのは仕方なしと思える快演です。

いずれもモンスターペアレントなどという印象はありません。
子どもたちの喧嘩のいきさつを冷静に紙にまとめ、
怪我をさせたことを詫びて詫びられて、一件落着。
と行きたいところですが、体面だけを保ったやりとりは続かない。

親がいくら謝ろうとも、子ども自身が反省しなければ意味がないと片方は考えるし、
うちの子だけが悪いのか、はたくには何か理由があったのではともう片方は考えます。
しかも、とりあえずは懸命に詫びるナンシーの隣で、アランがしょっちゅう携帯をいじるから、
ペネロペは誠意がないとイライラ、ナンシーもアランの態度に辟易。
ひとり能天気にかまえるマイケルがウイスキーを持ち出して、
全員が飲みはじめたものだから、場はしっちゃかめっちゃかに。
最初は夫婦対夫婦だったはずが、女性対男性になったり、1人対3人になったり。
「良識あるのは私だけ」というペネロペの叫び声がむなしく響きます。

そんなおとなたちをよそにした、エンロドールの背景が秀逸。

本作で思い出したのは『サイドウォーク・オブ・ニューヨーク』(2001)でした。
そうよ、女はこうなっちゃうんです。

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