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「働き方」法案は撤回以外ない ― 労働時間調査削除

2018-05-20 | 人権・生存権・労働者の権利を守ろう

 「働き方改革」一括法案に関わる労働時間の調査で大量の虚偽データが見つかった問題で、厚生労働省は、調査対象の1万1575事業所のうち2492事業所のデータに「異常値」があったとして、この部分を調査結果から削除しました。国会で審議中の「働き方」法案づくりの基礎となった重要な調査データの2割以上が削除されるというのは前代未聞であり、法案の大前提が成り立たないことはいよいよ明白です。「働き方」法案の今国会成立を強行するなど、とんでもない話です。安倍晋三政権は法案を白紙撤回すべきです。

統計として成り立たぬ

 問題の調査は、2013年度の労働時間等総合実態調査です。同調査をめぐっては、1月の国会で安倍首相が、いくら働いても事前に決めた「みなし労働」分しか賃金を支払わない裁量労働制の労働者が一般労働者よりも労働時間が短いと答弁した根拠にされたため、不自然さが大問題になりました。その後、この調査が誤りだらけの上、本来比較できないデータを比べるというねつ造も発覚、安倍政権は3月、「働き方」法案から裁量労働制の拡大を削除する事態となりました。

 労働時間調査について厚労省は、裁量労働制の部分は3月に撤回、一般労働者の分については「精査」を続け、今回その結果をようやく発表したものです。その内容は、労働時間調査がいかにずさんだったか浮き彫りにしています。

 「精査」では、一般労働者のデータで1日の残業が45時間などありえない数値が多数見つかりました。再集計の結果、一般労働者の「平均的な者」の年間残業時間は、78時間30分から65時間51分へ12時間以上も短くなりました。一般労働者の残業時間を長く見せかけようとした意図が透けてみえます。

 調査対象の2割を超える調査結果を削除すること自体が、統計全体としての信頼性・信ぴょう性を根本から失わせています。調査結果について安倍政権が「統計として一定の姿になっている」(加藤勝信厚労相)と居直り、「働き方」法案成立を推し進めようとしていることは、あまりにも無反省です。

 この調査は、裁量労働制の拡大だけでなく、「高度プロフェッショナル制度」(「残業代ゼロ」制度)を柱とする「働き方」法案づくりの大本となった資料です。厚労省の労働政策審議会では、同調査を使って法案の議論を続けてきた経過があります。その元データがでたらめだった以上、法案そのものを引っ込める以外にありません。

 「働き方」法案の国会審議では、野党議員の追及で、残業時間の「上限規制」は抜け穴だらけで歯止めがないこと、「高プロ」制度が労働時間短縮にも「生産性向上」にもつながらず、政府の口実が通用しないことなど重大な問題が次々と明らかになっています。過労死をまん延させ、働く者の命を危険にさらす「働かせ方」大改悪法案を絶対に許すわけにはいきません。

世論と運動を広げて

 安倍政権は、「働き方」法案を衆院厚労委員会で採決する動きを強めています。「森友・加計」問題などにフタをしたまま、悪法を強行することなど論外です。世論調査でも今国会成立は「必要がない」が68・4%(共同通信)と多数です。世論と運動を広げ徹底審議で廃案に追い込むことが急務です。


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