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希望捨てない 国は支援を ― 九州豪雨 泥に覆われた自宅・畑

2017-07-24 | 被害状況・被災地の現実

 死者35人、不明者6人を出した九州北部豪雨の被害がとりわけ大きかった福岡県朝倉市、東峰村、大分県日田市で、支援策の前提となる罹災(りさい)証明書の発行が始まり、ボランティア活動も広がっています。一方で道が崩落して重機も入らず、手つかずの地域が残されています


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(写真)徒歩で、自宅の状況を見に来た住民と話をする小ノ上さん(右端)=22日、福岡県朝倉市杷木松末

 朝倉市杷木松末(はきますえ)の石詰集落は乙石川沿いに18世帯(市統計)が暮らしていましたが、9軒が流失、2家族の4人が死亡、1人が今も行方不明と、被害が甚大な地域です。

 5ヘクタールの畑でカキとスモモを栽培する小ノ上喜三さん(68)は22日、避難先の福岡県うきは市から、同集落の自宅と畑を見に帰りました。石詰集落は農道が崩落し、車が近づけず孤立状態。

 車で近づけるのは松末小学校まで。氾濫して平たく広いながれになった乙石川沿いを徒歩で上ります。時折、自衛隊員十数人を乗せたキャタピラ車両とすれ違います。15分ほど上ると石詰集落です。

 小ノ上さん宅はひざ上まで泥がたまり、山から下りてきた水が流れています。選果場はべたべたの泥で機材が覆われ、においが鼻をつきます。スモモ畑の上には約30センチの泥。電気も水道も不通。出荷を前に大型冷蔵庫に入っていたスモモが捨てられていました。

 2トン車や高所作業車が7台、買ったばかりの乗用草刈り機2台が流出・埋没し、被害額は約1千万円。

 それでも、小ノ上さんはカキづくりを諦めていません。選果場を整備し、他地区の畑での生産を中心にするのです。選果場整備には農道復旧が不可欠です。

 生まれ変わったら、またカキ農家になりたいという小ノ上さん。

 「人は希望がないと生きられん。私の希望はカキをお客さんに届けること、事業を娘に引き継ぐこと」

 34度前後の気温のなか、小ノ上さんは背負子(しょいこ)に家財道具を積み、徒歩で川を下って帰ります。

 「みんな大変だからエゴは言えんが、国には、遅くともカキの収穫が始まる10月までに農道を何とかしてほしい。政府は政局で動くのでなく、被災者の方を向いてほしい」

 福岡県朝倉市杷木星丸で酪農を営む高倉守雄さん(51)の自宅では22日、ボランティアの協力も得て、泥出しが始まっていました。農道が崩落して孤立状態の杷木松末とは違い、寸断しているものの県道52号に家が面しているので重機も入ります。

 高倉さんが当面一番、困っているのは断水。「家の泥出しをしても水がないので、洗うことができない。飲料水はペットボトルでなんとかできるけど…」と話します。

 飼っていた乳牛21頭は知り合いの牧場にあずかってもらいました。今後、引き取ることについては、全くの未定です。

 「道路を直して、次は川、住宅。農地は最後になるだろう。酪農がここで再開できるかどうかは10年くらいかけて決めることになるのではないか。その間、国は支援を続けてほしい」と高倉さんはいいます。

 松末コミュニティー協議会事務局長の日隈繁夫さん(58)も「まずは国が復旧費用全額持ってほしい。そうでないと小さい自治体はもたない。農業支援もお願いしたい。そうしないと集落に残る人は3分の1くらいになってしまうのではないか」と話しています


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