1年ほど前から左目がかすんで見えるようになった。近眼が進んだにしてはおかしいと思って近くの眼科に行ったら、予想通り白内障と言われた。まだ手術するほどひどくはなかったのでしばらくは様子を見ることにした。というか目の手術というのは何となく怖いから、先延ばしにしたというべきか。
今年に入って仕事を完全リタイアーし、関西棋院公認の囲碁インストラクターになった。しかし、時々しょうもないミスをやらかす。これは白内障で目がよく見えないせいに違いないと思い、ついに目の手術を受ける決心をする。三国丘高校卒の教え子のSドクターが「白内障は我慢していてもダメ。さっさと手術をした方がいい」とアドバイスしてくれたことも後押しとなった。手術は行きつけの関西電力病院で行うことにした。
そもそも白内障というのはどういう病気か?
白内障は加齢によって水晶体が濁り、そのため光が目の中に入りにくくなって視力が低下する。だから、治療は手術によって濁った水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを入れる(水晶体再建術)。手術そのものは10分ほどで終わり日帰りでもできる。しかし、手術前に瞳孔を広げるための眼薬5回ほどをさすため、1日入院の形をとる。
この日、白内障の手術を受けるのは4人。私は2番目であった。車椅子に乗せられて手術室に入ると4~5人のスタッフが待ち構えていた。ベッドにあおむけになり、心電図、血圧計、酸素測定器が取り付けられ、目の周りの消毒が行われる。目薬による麻酔がなされ、顔全体がシーツでおおわれる。瞼に器械が取り付けられ眼が開かれる。いよいよ手術開始である。
昔、目の手術をした人が「目の前にメスが見えてそりゃ怖いものがありましたよ」と体験を語っていたが、そんなことはない。手術器具などは一切見えないし、いまどんなことが行われているのかはドクターの説明によってしか知ることができない。
目に強烈なまぶしい光が入り込む。その光の中でなぜか赤色と青色の半円状のものが見える(ただし、それが何かはわからない)。それ以外は何も見えない。やがて水晶体を包んでいる膜が切開され、そこから超音波の器械が挿入されて濁った水晶体が吸引される。吸引される時に発する「ザー、ザー」という器械の音が聞こえる。吸引が終わるとそれまで見えていた赤色と青色の半円状のものが見えなくなり、白一色になる。
そのあと「これからレンズを入れます」というドクターの声が聞こえ、手術は10分ほどで終わる。実にあっけなかった。痛みは全くなかった。怖さもなかった。手術中、看護師さんがずっと手を握ってくれていたのですごく安心感があった。
手術は午前中に行われ、そのあと部屋に戻って1時間ほどベッドで安静にしているように言われた。病院の天井を見つめながらいろいろ考えた。数年前に禅寺で座禅をしたことがあるが、それ以来の瞑想である。昼食をとった後、午後2時にはもう退院の手続きが行われる。手術費用5万3540円を支払ってタクシーで帰宅する。
家に帰って、眼帯を付けた写真を自撮りした。鏡に映して自撮りしたため右目に見えるが、実際は左目である。
翌日、再び病院に行って術後の診察を受け、恐る恐る眼帯を外してもらう。恐ろしくよく見えるようになっていて驚いた。目の保護のために1週間程度は透明の眼帯をする必要がある。妻が術後専用眼鏡を持っていたのでそれを使うことにした。
この後、眼鏡を作り替える必要がある。症状が安定する1か月ほど先になりそうである。