見出し画像

南英世の 「くろねこ日記」

あしび山荘


天王寺高校は奈良県東吉野村に「あしび山荘」という自前の山荘を持っている。標高1300メートル。ここで、1年生が毎年クラス単位で一泊2日の宿泊研修をする。山荘には水道も電気もガスもない。もちろんトイレもない。穴を掘って簡易トイレを作る。女子生徒などはここで用を足すことで「クソ度胸」がつくというのは嘘か真か(笑)。

もともと山荘には燃料も何もない。そこで、宿泊研修の前に、山岳スキー部とワンダーフォーゲル部の生徒が事前に大量の薪などを山荘に運び上げる。この作業を「歩荷(ぼっか)」という。私も歩荷に同行することになった。

歩荷当日、奈良県には大雨警報が出ていたが、天気図を見ると昼過ぎには雨雲が抜けそうというので、ともかく現地まで出向く。
しかし、現地についても雨は相変わらずひどい。
傘を差しながら、とりあえず昼食を食べる。



あしび山荘までの途中に何箇所か川を渡らなければならない。
もちろん橋はかかっていない。
増水すると渡れなくなる。
今日の雨の具合だと、上流に降った雨の影響で明日はさらに水かさが増するかもしれない。
ということで、山小屋に一泊することをあきらめ、急きょ日帰りで荷揚げをすることを決定する。

普通なら、山荘まで3時間あまりかかるところを、2時間程度で登るという強行軍。
体力的に自信がなかった私は泣く泣くここでリタイアーを決める。全体の足を引っ張っては申し訳ない。
待機を申し出た生徒9人とともにバスに残る。

精鋭27人が、リュックに荷揚げに必要な荷物を詰め込み、登山開始。
しかし、残念ながらすでに川が増水し、山小屋にはたどり着けず、途中で引き返してきたことを後で知る。

「井戸の水を飲むときには、井戸を掘った人の恩を忘れてはならない」という言葉がある。
事前にこういう下準備があるからこそ、クラス行事がスムーズにいく。
それがどれだけの人にわかってもらえるか。
私もこういう経験がなければわからなかったかもしれない。

帰りに「やはた温泉」に寄り、ひと風呂浴び、びしょびしょになった服を着替える。
総檜造りの温泉は格別だった。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「日常の風景」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事