(金沢大学経済学部校舎)
66年間の人生を振り返って、一番楽しかったのは大学で過ごした4年間だったような気がする。世間知らずで、ただひたすら夢を追いかけ、みんなが幸せに暮らすことができる社会をどうすれば実現できるかを考えていた。純粋にそういう学問に打ち込めた。
あの頃は左翼全盛時代だった。左翼であることが、ある種の「正義」のように思われていた時代であった。貧富の差がなく、恐慌も失業もなく、社会保障が行き届いており、みんなが幸せだと感じられる社会を目指しましょうと言ったら、だれも反対できない。そんな「空気」を反映して、左翼系の学生団体が主催する歌声喫茶が多く開催されていた。
大学の講義の多くもマルクス経済学だった。そんな中でマルクスと決別し、近代経済学を学ぶことを決意した私は、学生たちでつくる「ケインズ研究会」に入り多くを学んだ。大学の図書館によく通い、講義にはあまりまじめに出なかった記憶がある。それでも、講義を通して貧しい人々の立場に立つマルクスの精神だけは心に沁みついた。今のように競争、競争と追いまくられる時代にあって、そうした講義を受けることができた体験は良かったともいえる。
大学の図書館
大学を卒業してすでに40年以上が過ぎた。気がつけば66歳。40年前には想像もつかなかった政治が繰り広げられる毎日である。世の中とはこんな風に少しずつ変化していくものであることを実感する。
去年、かつて歌声喫茶でよく歌われた曲を集めたCD(全10巻)が発売されたので買った。その中の「心騒ぐ青春の歌」が聞きたかったからである。この歌には懐かしい学生時代の思い出がある。
それにしても最近は「おじさん」が歌える歌がなんと少ないことか(笑)。