375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

名曲夜話(15) チャイコフスキー <3大バレエ>組曲集

2007年03月05日 | 名曲夜話① ロシア・旧ソ連編

チャイコフスキー <3大バレエ>組曲集
組曲「白鳥の湖」(作品20)
1.情景 2.ワルツ 3.白鳥たちの踊り 4.情景(第2幕のアダージョ) 5.ハンガリーの踊り 6.情景(終曲)
組曲「眠りの森の美女」(作品66)
1.序奏とリラの精 2.アダージョ:パ・ダクション 3.パ・ド・カラクテール:長靴をはいた猫と白い猫 4.パノラマ 5.ワルツ
組曲「くるみ割り人形」(作品71)
1.第1楽章「小序曲」 
2.第2楽章「特色ある舞曲」より ①行進曲 ②こんぺい糖の踊り ③ロシアの踊り:トレパック ④アラビアの踊り ⑤中国の踊り ⑥あし笛の踊り 
3.第3楽章「花のワルツ」
ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音: 1978年 (GRAMMOPHON 449 726-2)
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チャイコフスキーの3大バレエ組曲。たとえクラシック音楽に興味がなくても、子供から年輩の方まで、あらゆる年齢層の人々が、どこかでその音楽を耳にしているだろう。一般的な浸透度から見れば、最も有名なロシア音楽であることは、間違いない。

白鳥の湖(1875-76年作曲)。
悪魔によって白鳥にされたオデット姫と、ジークフリート王子との数奇な物語。バレエ音楽史上、画期的な傑作とされる。当時のバレエにおける音楽の役割は、単に踊るための音楽に過ぎなかったが、チャイコフスキーのこの作品は、バレエ音楽を芸術の高みにまで引き上げるものだった。1877年の初演の失敗は、あまりにも密度の濃い音楽への、とまどいが引き起こしたものと言えるだろう。

「白鳥の湖」の作曲は、交響曲第4番(1877-78年)の作曲を始める前年。初期のチャイコフスキーは、ロシア民謡を題材に用いる「国民学派」寄りの作風だったが、この時期から、西欧の「絶対音楽」を指向する立場に傾き、国民学派の「5人組」からは遠ざかるようになった。

眠りの森の美女(1888-89年作曲)。
シャルル・ベローの童話をベースにした、絢爛豪華な大作。呪いをかけられたオーロラ姫が、デジーレ王子の愛の接吻によって目覚め、王子と結婚式を挙げるまでの物語が、プロローグ付きの全3幕で演じられる。最後の「ワルツ」が最も有名。こちらは、1890年のマリンスキー劇場での初演時から、大成功を収めた。

「眠りの森の美女」は交響曲第5番(1888年)と同時期の作品。そのせいか、部分的に似たところがある。特に第2曲アダージョの旋律は、交響曲第5番の第2楽章アンダンテを思い起こさせずにはおかない。

くるみ割り人形(1891-92年作曲)。
E.T.A.ホフマンの童話に基づく、2幕3場のクリスマス・バレエ。ドロッセルマイヤーおじさんからプレゼントされたくるみ割り人形が、少女クララを夢の中の冒険へと誘う。1892年にマリンスキー劇場で初演されたが、それに先立ち、演奏会用組曲にまとめられたものが発表され、今日この形で親しまれるようになった。最初の「小序曲」から最後の「花のワルツ」まで、どこかで聴いたことのある曲が目白押しだ。

翌年、最後の作品となった交響曲第6番「悲愴」(1893年)を完成。「くるみ割り人形」は、死の前年の作曲ということになるが、そう思って聴くと、やはりそこには、死を間近に控えた作曲者特有の、澄み切った彼岸の境地が感じられる。

上に見るように、3大バレエの作曲時期は、彼の後期3大交響曲とそれぞれ対応している。作品の経歴から見ても、重要な位置にあったことは、確かだろう。

現在の愛聴盤は、チェロの巨匠ロストロポーヴィッチが、ベルリン・フィルを指揮した1978年の録音。LP時代は2枚に分かれていたが、CD化に伴い、3大組曲が一枚にまとまった。ベルリン・フィルは、さすがによく鳴るオーケストラで、交響的充実感が素晴らしい。ロストロおじさんの指揮の元、ロシア風の重厚な音色がよく出ており、アナログ時代の名録音の一つと言っていいだろう。


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