375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

名曲夜話(29) グリエール 『青銅の騎士』(Russian Disc盤)

2008年01月09日 | 名曲夜話① ロシア・旧ソ連編


グリエール バレエ組曲『青銅の騎士』+ザポロージェのコサック
バレエ組曲『青銅の騎士』(作品89)
1.序奏 2.元老院広場にて 3.広場での踊り 4.エフゲニー 5.パラーシャ 6.抒情的な情景 7.ダンスの情景 8.占い師 9.輪踊りとダンス 10.第2の抒情的な情景 11.ワルツ 12.嵐の始まり 13.偉大なる都市への讃歌
ザポロージェのコサック(作品91)
ドミトリー・リス指揮 ウラル・フィルハーモニー管弦楽団
録音: 1994年 (Russian Disc RD CD 10 037)
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もし自分が指揮者であれば、どんな曲を演奏するだろう。クラシック・ファンであれば、一度はこんな想像をするのではないだろうか。人生でたった1回、コンサートを任されるとしたら、どのようなプログラムを組むか…。それは、なかなか楽しい想像である。

自分の場合、この名曲夜話がそうであるように、すでに有名オーケストラの定番となっている人気曲よりも、知られざる名曲に光を当てたい、という視点から曲目を決めていくだろう。もちろん、単に珍しいというだけではなく、もっと多くの人に聴いてもらいたい曲、聴いて感動することのできる曲、というのが最低条件であることは言うまでもない。

そんな中で絞っていくと、交響曲ならば、カリンニコフ第1番はぜひ演奏してみたいと思うし、管弦楽曲であれば、グリエールバレエ組曲『青銅の騎士』が筆頭候補に上がってくる。両曲とも、有名オーケストラのプログラムに載ることはほとんどないが、現時点では、すでにアマチュアのオーケストラやブラスバンドで度々演奏されるようになっており、近い将来、さらに知名度を高めていく可能性は十分にあるだろう。

さて今回は、その青銅の騎士のCDを再度採り上げてみたい。前回(名曲夜話21)、同曲のChandos盤を紹介した時、次のように書いたのを憶えておられるだろうか。

 “現時点で入手可能な唯一の音源ということもあり、グリエール・ファンには貴重なディスクである。(以前Russian Discというレーベルで、もう一種類出ていたはずだが、見かけなくなってしまった)。”

その「すでに見かけなくなってしまった」Russian Disc盤を、なんとその後、ある通販サイトを通じて、入手することができたのである。このディスクは、ロシア期待の若手指揮者ドミトリー・リスが、1994年にエカテリンブルク(旧スヴェルドロフスク)のウラル・フィルハーモニー管弦楽団を振った、正真正銘の「本場モノ」の録音だ。

前回紹介したダウンズ指揮のChandos盤は、どちらかと言えば、スマートで洗練された演奏で、美しくはあるが、やや食い足りないところがあった。それに対して、このRussian Disc盤は、低音部が生き、濃厚なロマンに満ちあふれた、いかにもロシアの楽団らしいスケールの大きな演奏。個人的な満足度では、こちらのほうが遥かに上を行き、当分手元から離すことのできない愛聴盤となった。

すでに紹介したように、この音楽は、全編聴きどころの連続だ。

ワーグナー風の勇壮な旋律の立ち上がる序奏から、一気にスピード感あふれる元老院広場にてに突入する迫力。間髪入れず、軽やかでチャーミングな広場での踊りが展開する。まさに、一部の隙もない導入部だ。

そしていよいよ、このバレエの主人公エフゲニーパラーシャが登場。それぞれの性格を現わすような、いかにもロシアン・バレエの情緒たっぷりな名旋律を聴かせる。この2人がデュエットを歌う抒情的な情景のゆったりとしたアダージョは、全オーケストラが躍動する前半部分のクライマックスとなって、聴く人の魂に訴えかける。

ダンスの情景のテンポの速いダイナミックな舞曲が、この組曲の中間部。占い師では、一転してメルヘン的な色彩美を聴かせる。ここから切れ目なく続く輪踊りとダンスはゆったりとしたワルツの旋律。ロマンチックな泣かせ節を存分に聴かせた後、さらに感動的な名旋律、第2の抒情的な情景が始まる。このあたりが、大きく盛り上がる中盤のクライマックス。切々と心にしみるロシアン・アダージョが、いつ果てるともなく続く。

ワルツは、優美な旋律が印象的なロシアン・ワルツ。クライマックス直前の、つかの間の休息といった感じだ。やがて雲行きが怪しくなり、嵐の始まりの悲愴感にあふれる音楽が始まる。そして、激しい嵐が終わると、雲間から眩しい陽の光がさすかのように、荘厳で感動的な終曲、偉大なる都市への讃歌が歌い上げられる。まさにロシア音楽史上に燦然と輝く、不朽の名作! サンクト・ペテルブルクの市歌にも採用された素晴らしい旋律が、新時代の夜明けを告げるかのように全曲を締めくくる。

このCDの後半には、1921年(作曲者46歳)に作曲されたザポロージェのコサックが収録されている。こちらも、本来はバレエ音楽として構想されたもので、ウクライナの踊りや民謡の旋律が随所に散りばめられた、ローカル色豊かな音楽だ。



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9 コメント

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Unknown (飛脚)
2008-01-12 00:28:52
こちらには、初めてお邪魔します♪

自分が指揮者だったら。。。この想像はかなり楽しめますね~^^/
昔、ピアノを習っていたので、私はラフマニノフとベートーベンのピアノ協奏曲に曲目が集中しそうです。

それにしても、ミナコビッチさん凄いですね!
身近に、こんなにクラシックに詳しい方がいたとは。。。嬉しいです~

「青銅の騎士」聴いてみたくなりました♪♪
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Unknown (ミナコヴィッチ)
2008-01-12 11:24:22
なんと、ピアニストでしたか!

自分は学生時代にコーラスをやっていた程度で、
楽器は習う機会がありませんでした。

クラシック音楽は奥が深く、聴き始めると中毒症状に
なりますね~。マラソンと通じるものがあるかも。

この「青銅の騎士」は、店頭で入手するのは難しいので、Amazon.comのサイトで注文するのが近道です♪
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Unknown (りんごりら)
2008-02-02 15:22:51
初です!!
吹部でHron♪をやっております。
今、「青銅の騎士」をやっている最中です!!
なので、曲について、いろいろ分かったので助かりましたぁ↑↑
ありがとうございました!!
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Unknown (ミナコヴィッチ)
2008-02-05 12:26:44
りんごりらさん、初めまして。
「青銅の騎士」は、日本の吹奏楽部では人気曲のようですね。
メロディが素晴らしいので、今後もっと多くの人に親しまれる時が来るでしょう。

演奏会の成功を心よりお祈りしております^^


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オケで組曲全曲演奏します (yevgeny)
2008-02-17 01:57:20
はじめまして。
友人からこのRussianDisk盤を借りて聴きました。ウラル・フィルという、ロシアのローカルオケの音色が曲にマッチしている盤ですよね。

ところで、自分の所属しているアマオケでこの組曲全曲を来る4月の演奏会でとりあげます。
レンタル譜のパート譜の中には、国内代理店が今回浄書したものも含まれていた(出来上がるのを待たされた)ので、もしかしたら組曲全曲は初演なのかもしれません・・・(過去のいくつかの大学オケの演奏では抜粋で演奏されていました)

もしご都合つきましたらお運びいただければ幸いです。
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青銅の騎士 (ミナコヴィッチ)
2008-02-20 12:29:00
yevgenyさん、はじめまして。
貴重なお知らせ、ありがとうございます。

この曲が知られるようになったのが、ごく最近ですから、もしかすると全曲版の演奏は日本初演かもしれませんね。

この記念すべきコンサート、ぜひ観に行きたいのですが、なにぶん海外在住で、時期的には厳しいかな…という感じがします。

ぜひとも、この曲が広く知れ渡るような名演を期待しております。
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いいですね!! (とろりん)
2010-11-30 21:54:37
コンクールでsaxを吹きます
息を吸うところがあまりないので・・・
つらいですが、がんばります

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青銅の騎士 (マカロン)
2010-12-07 20:40:20
中学吹奏楽部で、ボーンをやってます☆

今年の吹奏楽コンクールで、
青銅の騎士やりました
全国で銀でした。

やっぱり難しかった…。
ダンシングシーンが…。
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Unknown (ミナコヴィッチ)
2010-12-13 15:48:07
>とろりんさん

コンクール、がんばって下さい。
あるいは、もう終わったかな?

>マカロンさん

全国で銀はすごいですねー。
やはり一筋縄ではいかない曲なんですね。
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