375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

気になる新譜(5) 伝説の女性デュオ・あみん、24年ぶり復活。

2007年04月23日 | 気になる新譜情報
1982年にデビューシングル「待つわ」が100万枚を越える大ヒット。一躍スターダムに駆け上がり、1年半の間、美しいハーモニーを聴かせていた、伝説の女性デュオ・あみんが復活する。6月20日に24年ぶりのシングル「待つわ'07」を発売。7月には新アルバム、8月には全国ツアーをスタートさせるという。

待つわ」は、リアルタイムで聴いていたので、もちろん懐かしい曲の一つではあるが、個人的には、シンガーソングライターとしての岡村孝子に、かなり熱を上げていた時期があった。特に、1990年12月12日の発売日当日に購入したAfter Tone Ⅱ(ファンハウス FHCF-1086)は、当時としては、最もよく聴いていたCDの一つだったと思う。これは岡村孝子のカラー写真集と全曲楽譜付きの「初回限定盤」だったので、今となっては、大変貴重である。

ただ、その後は、自分自身が長期間、日本を離れたこともあって、いつしか彼女の音楽から遠ざかってしまった。彼女が某野球選手と結婚したというニュースも、気持ちが離れてしまう一因になったかもしれない。

そんな中で、突然ネット上に飛び込んできた、「あみん」復活のニュース。

実は昨年12月、岡村孝子のクリスマスコンサートで、かつての相棒・加藤晴子が飛び入り参加し、「あみん」復活を宣言したという話は聞いていたのだが、いよいよそれが実現するということになると、なんとなく、あの頃の思い出がよみがえってくる。いつのまにかAfter Tone Ⅴ(BVCR 18085)までリリースしている岡村孝子のベスト盤シリーズも、改めて聴いてみようかな…という気持ちになってきた。

参考サイト

「あみん」復活のニュースを伝えるサンスポの記事
岡村孝子の公式ホームページ

【NEWS】本田美奈子さんの記事、NYCの日系紙にも登場!

2007年04月19日 | 本田美奈子


日本より2日遅れ(?)で、NYCの日系紙"DAILY SUN NEW YORK"にも本田美奈子さんの記事が掲載された。内容は、今月20日に発売予定(すでに発売中?)の伝記本『天に響く歌: 歌姫本田美奈子.の人生』(ワニブックス)の紹介にあてられている。

歌を愛し、病の中でもいつも笑顔を忘れず、最後まで闘い抜いた38年間の人生を、母・美枝子さん、親友・岸谷五朗をはじめとするステージ仲間ら、計15人による証言で浮かび上がらせているという。

本来、この本は、退院後の「元気本」として考えられていた企画とのこと。「読めば元気が出るし、生きることの大切さを教えてくれる。美奈子からの応援メッセージです」と、所属事務所の高杉敬二エグゼクティブ・プロデューサーは語る。

ただ、やはり病気の場面になると、読むのが辛くなるかもしれない。
今回初めて主治医の明かす、「極めて治る可能性が低かった」という証言。
そんな中でも、周囲を元気付けようと努めていた美奈子さんだが、ほんとうは、人知れず泣いていたことを思うと、どうしても胸が痛くなってくる。

あと、紙面の左下のほうに、故郷・朝霞駅南口に建立予定の記念碑の記事と、亡くなる一年前に、新潟へ家族旅行に行った時の写真が出ている。2004年の夏頃だろうか。親子というよりは、3人姉妹のようにも見える。お母様が、あまりにも若々しい。

この伝記本、まずは一日も早く、手に取ってみたいものである。

【NEWS】本田美奈子さんの新譜2点+伝記本、店頭に並ぶ!

2007年04月18日 | 本田美奈子
現在、NYCは4月17日(火)の夜11時30分をまわったところであるが、日本は、すでに4月18日(水)のランチタイムになっていることだろう。

今日は、新譜『ANGEL VOICE』の発売日である。しかも、某ファンサイトの情報によると、『ANGEL VOICE』だけではなく、4月20日発売予定の『Classical Best~天に響く歌』も、すでに店頭に出ているらしい。

ということは…。

さっそく、自分がいつも利用している販売サイトで、注文状況を確認してみると、予約しておいた2点の新譜+伝記本『天に響く歌: 歌姫本田美奈子.の人生』は、すでに入荷済みで、「出荷準備中」のステータスになっている。

あとは発送されるのを待つばかり、ということだ。しかし、ここからが長い。

海外行きの商品は、まず、成田空港の国際交換局に運ばれる。ここで空輸便となり、14時間の空の旅。NYCのJFK空港に到着した後、いったんマンハッタンの郵便局に輸送され、ここから宅配便として配達されるのである。この間、通は2~3日を要するので、こちらへ到着するのは、4月20日(金)くらいであろうか。やはり、地球の反対側は遠い。

もうしばらく、寝ても覚めても、美奈子さんを待ち焦がれる日が続きそうだ…。

名曲夜話(24) ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲

2007年04月15日 | 名曲夜話① ロシア・旧ソ連編

ハチャトゥリアン チェロ協奏曲+ヴァイオリン協奏曲
チェロ協奏曲ホ短調
1.Allegro moderato  2.Andante sostenuto  3.Allegro a battuta
ヴァイオリン協奏曲ニ長調
1.Allegro con fermezza 2.Andante sostenuto  3.Allegro vivace
ダニエル・ミューラー=ショット(チェロ)
アラベラ・シュタインバッハー(ヴァイオリン)
サカリ・オラモ指揮 バーミンガム市交響楽団
録音: 2003年 (ORFEO C623 041A)
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クラシック音楽を聴いていく道しるべの一つとして、「好きな演奏家を追いかける」という方法がある。特に、協奏曲というジャンルは、ソロの名技が最大の聴きどころなので、当然、ソリスト中心にCDを選ぶことになるし、指揮者に関しては、ちゃんとサポートしてさえくれれば、特に誰であってもかまわないということになってくる。

自分の場合、最初に好きになったヴァイオリニストは、チョン・キョンファだった。特に、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。これはもう、衝撃的と言ってもいいほどである。それ以外にも、チャイコフスキー、メンデルスゾーン、ベートーヴェン、プロコフィエフ(1番、2番)、…と、代表的なヴァイオリン協奏曲は、ほとんど彼女の演奏がファーストチョイスになっている。

そのチョン・キョンファも、最近は、すっかり新譜から遠ざかってしまった。考えてみれば、1948年生まれなので、今年59歳。CD業界としても、若年購買層にアピールするために、若い演奏家を発掘しなければならないので、録音に関しては一段落というところだろうか。こちらとしても、そろそろ「新しいアイドル(?)」を探さなければならないかな、…と思っている矢先に登場したのが、2004年、ドイツのオルフェオ・レーベルから、ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲でCDデビューした、アラベラ・シュタインバッハーだった。

彼女との出会いのきっかけは、チャーミングな横顔のジャケットだった。いわゆる「ジャケ買い」である。しかし、聴いてみると、艶のある音色が美しく、さわやかな味わいに惹かれた。そして、あとから知ったのだが、彼女はドイツ人の父と日本人の母の間に生まれ、「美歩」という日本名も持つ、期待の若手ヴァイオリニストだったのだ。

ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲は、20世紀の同じ分野における作品としては、シベリウス、プロコフィエフと肩を並べる傑作であり、初演者のオイストラフに始まって、多くの名ヴァイオリニストが録音を残している。

第1楽章の、民族舞曲のリズムにのって進行する第1主題。抒情的な、しみじみと心に訴えかける第2主題。どちらも名旋律と呼ぶにふさわしい。第2楽章は、独奏ヴァイオリンによる、中央アジア風のワルツの主題が魅力。第3楽章は、活気あふれる、祝祭的なロンドとなる。

この協奏曲は、チョン・キョンファの録音がないので、ちょうど、この「美歩さん」のCDが空白を埋める形で、愛聴盤になっている。彼女のハチャトゥリアン以後のリリースを見ると、2005年にミヨーのヴァイオリン協奏曲(1番,2番)、2006年にショスタコーヴィッチのヴァイオリン協奏曲(1番、2番)、と渋いところで勝負しているのも個性的で、今後の録音がますます期待されるのである。

また、日本公演のほうも、2006年に続き、2007年10月で決定しているようだ。当分、NYCには来る予定がないので、日本に住んでいる人たちがうらやましい気がするが、いつの日か、実演を観にいきたいアーティストの1人である。

尚、このCDの前半には、彼女と同じくミュンヘン出身の若手チェリスト、ダニエル・ミューラー=ショット独奏によるチェロ協奏曲も収録されている。こちらも、聴けば聴くほど渋味にあふれ、チェロ特有の「モノローグの美学」を堪能できる傑作である。

参考サイト

アラベラ・シュタインバッハーの公式ホームページ(ドイツ語・英語)

名曲夜話(23) ハチャトゥリアン 交響曲第2番 『鐘』

2007年04月13日 | 名曲夜話① ロシア・旧ソ連編


ハチャトゥリアン 交響曲第2番『鐘』+『スターリングラードの戦い』組曲
交響曲第2番イ短調 『鐘』
1.Andante maestoso 2.Allegro risoluto 3.Andante sostenuto 
4.Andante mosso - allegro sostenuto. Maestoso
『スターリングラードの戦い』 -映画音楽からの組曲-
1.ヴォルガのほとりの町 2.侵略 3.炎上するスターリングラード 4.祖国防衛線 5.勝利へ
ロリス・チェクナヴォリアン指揮 アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団
録音: 1993年 (ASV CD DCA 859)
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ハチャトゥリアンは『ガイーヌ』などのバレエ音楽以外に、交響曲の分野でも傑作を残している。完成された交響曲は、全部で3曲。そのうち、1934年に作曲された交響曲第1番は、モスクワ音楽院の卒業作品として書かれた。アルメニア地方の民族的旋律が散りばめられた初期の佳作で、のちの『ガイーヌ』を予見するような箇所もある。今のところ、録音は少なく、チェクナヴォリアン指揮アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団の演奏くらいしか、目ぼしいものが見当たらない。

それに対して、第2次世界大戦中の1943年に完成された交響曲第2番は、作曲当初から比較的ポピュラーで、CDの種類も多い。ここでは、前回同様、チェクナヴォリアン盤を紹介しておこう。カップリング曲の『スターリングラードの戦い』と合わせて、戦争を題材とした2大傑作が1枚で聴けるという組み合わせが素晴らしい。

この交響曲の『』という標題は、ハチャトゥリアン自身が付けたものではなく、作品の中で、印象的な響きをもたらす鐘の効果音に由来するニックネームである。

第1楽章は、その「鐘の響き」を含んだ、巨大な轟音の中で開始される。いきなり戦場に放り出されたような戦慄に、全身が凍りつくようだ。序奏部に続く、チェロのモノローグは、戦いに向かおうとする兵士の心象風景を表わしたものだろうか。速いテンポの主部に入ると、差し迫った緊張感が一層高まっていく。

第2楽章は、砲弾の飛びかう中、銃をかかえて敵陣に突撃していくようなスケルツォ楽曲。ソロ・ピアノの突然の乱入など、予断を許さない展開が続く。

第3楽章は、荒れ果てた焼け野原の道を、無数の戦死体が運ばれていくような、不気味な葬送行進曲。呆然自失のまま、あてどもなく彷徨っているようでもある。そして突然、阿鼻叫喚の地獄絵図を眼前にするかのような、壮絶なクライマックスに突入する。

第4楽章。冒頭に鳴り響くのは勝利のファンファーレだろうか? 勇壮なテーマではあるのだが、決して勝ち誇るような調子ではない。むしろ、消しがたい深い傷を負っているような悲壮感がつきまとう。コーダでは、第1楽章冒頭の鐘の音が、戦争の犠牲者を弔うように鳴り響き、すさまじいクレッシェンドの果てに終幕を迎える。

それにしても、なんというシリアスな作品であろうか。ハチャトゥリアンは『ガイーヌ』などのバレエ音楽だけを聴いていると、ソ連体制に順応するエンターテイナーと思われがちだが、それはあくまで「仮面」であり、実際は、ショスタコーヴィッチがそうしてきたように、彼も、彼なりに闘っていたのではないだろうか。この交響曲第2番には、作曲者の本音である反戦へのメッセージが、垣間見えるように思えてならない。

一方、カップリング曲『スターリングラードの戦い』は、同じく戦争をテーマにした音楽ではあっても、映画音楽として作曲されただけに、もっと平明なわかりやすさがある。

祖国の兵士を激励するような、力強い行進曲「ヴォルガのほとりの町」。
ナチスドイツの軍隊が進軍するようなスケルツォ曲「侵略」。
砲火を浴びて激しく燃え上がる町を、悲劇的に描写する「炎上するスターリングラード」。
祖国を守るため、起死回生の反撃を開始する「祖国防衛線」。
そして、血沸き肉踊るような凱旋行進曲「勝利へ」。最後は、冒頭で奏されたヴォルガ河のテーマが高らかに再現され、圧倒的な盛り上がりのうちに幕を閉じる。


名曲夜話(22) ハチャトゥリアン 『ガイーヌ』、『スパルタカス』

2007年04月09日 | 名曲夜話① ロシア・旧ソ連編

ハチャトゥリアン 『ガイーヌ』第1組曲+『仮面舞踏会』+『スパルタカス』
『ガイーヌ』第1組曲
1.剣の舞 2.バラの乙女たちの踊り 3.山岳人の踊り 4.子守歌 5.レズギンカ
『仮面舞踏会』組曲
1.ワルツ 2.夜想曲 3.マズルカ 4.ロマンス 5.ギャロップ
『スパルタカス』組曲
1.エリナのバリエーションとバッカス祭り 2.情景とクロタルを持った踊り 3.スパルタカスとフリーギアのアダージョ 4.ガディスの娘の踊りとスパルタカスの勝利
イッポリトフ・イヴァノフ 『コーカサスの風景』
1.峡谷にて 2.村にて 3.たそがれ 4.酋長の行列
ロリス・チェクナヴォリアン指揮 アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団
録音: 1991年 (ASV CD DCA 773)
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アラム・イリイチ・ハチャトゥリアン(1903.5.24-1978.5.1)は、グルジア出身、アルメニアの作曲家。旧ソ連圏の作曲家としては、カバレフスキー(1904年生まれ)、ショスタコーヴィッチ(1906年生まれ)と同世代になるが、作風はむしろ、28歳年長のグリエールの国民学派的傾向を相続し、社会主義リアリズムの路線に従いながらも、出身地のカフカス地方(グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン)の民俗音楽を取り入れた、独自の個性を確立している。

ハチャトゥリアンの音楽を聴くと、「血沸き肉踊る」という感じで、限りなくhighになる。クラシックというよりは、サイケデリック・ロックに近い感覚だろうか。実際、「剣の舞」あたりは、ジャズ・ミュージシャンやロック・アーティストもカバーしており、今や音楽のジャンルを越えた傑作として、知られるようになっている。

自分にとって、ハチャトゥリアン体験の最初の1枚が、1991年に発売された、アルメニアの熱血指揮者ロリス・チェクナヴォリアン指揮する、『ガイーヌ』、『仮面舞踏会』、『スパルタカス』の組曲集である。このCDで初めて聴いたアルメニア・フィルハーモニー管弦楽団の演奏は、破天荒で強烈。まったく洗練されていない原色のサウンドで、一気呵成に突き進む迫力は、このオケ独特のものだ。

ハチャトゥリアンの音楽は、個性が強いだけに、好みは分かれるかもしれない。しかし、一度ハマってしまうと、なかなか抜け出せなくなるのが、この音楽史上稀に見る、究極のイケイケ音楽の魔力なのである。

ガイーヌ第1組曲
ハチャトゥリアンは、1939年にバレエ第1作『幸福』を作曲したが、1942年に改訂。これが、代表作として誉れ高い『ガイーヌ』となった。コルホーズ(死語?)で働く綿つみの若い女性ガイーヌを主人公に、革命後のアルメニア地方の農民生活を描いたバレエであるが、現在ではバレエそのものはほとんど上演されず、通常は初演直後にまとめられた組曲版が演奏される。

このCDに収められた第1組曲は、怒涛のごとく突き進む、有名な「剣の舞」に始まり、民族色豊かなアンダンテ楽曲「バラの乙女たちの踊り」、野性的なリズムで駆け抜けるスケルツォ楽曲「山岳人の踊り」、郷愁あふれるアダージョ楽曲「子守唄」と続き、最後はアルメニア民族大爆発の終曲「レズギンカ」で幕を閉じる。

仮面舞踏会組曲
レールモントフの戯曲のために作曲した劇音楽を、1943年に5曲を選んで組曲の形にまとめたもの。帝政ロシアの貴族社会を、その社交生活を通して批判的に描いたものであるが、音楽もその内容を反映して、どちらかといえば19世紀西欧風のスタイルを取り入れようとしている。その分、一般的には親しみやすいかもしれない。

ただ、西欧風とは言っても、決して洗練されないところがハチャトゥリアンの個性で、「ワルツ」なども、チャイコフスキーのそれより、土俗的な重量感がある。

スパルタカス組曲
古代ローマの奴隷反乱の主役となった剣闘士スパルタカスを、社会主義革命の英雄に見立て、1954年に作曲されたバレエ巨編。異様なほどにエネルギッシュな音楽が全編に燃え上がるこの作品は、バレエそのものもよく上演され、組曲版の人気も高い。これこそ、ハチャトゥリアンの集大成的な傑作と言えるだろう。

この組曲に収められた4曲はどれも素晴らしいが、中でも白眉と言えるのが、やはり「スパルタカスとフリーギアのアダージョ」。その切々と心に訴えかける感動的なメロディは、数あるロシアン・アダージョの中でも5本の指に入るのではなかろうか。

このCDには、オマケ(?)として、ロシア国民学派の流れをくむ作曲家イッポリトフ=イヴァノフ(1859.11.19-1935.1.28)の代表作『コーカサスの風景』がカップリングされている。正直言うと、このCDは、ハチャトゥリアンの3つの組曲だけで満腹になってしまい、最後に収められたこの作品までは、たどり着かないことが多い。だが、よく聴いてみると、詩情あふれる、なかなかの名作。特に、「酋長の行列」のメロディは、誰もがどこかで聴いたことがあるだろう。

名曲夜話(21) グリエール バレエ組曲『青銅の騎士』

2007年04月03日 | 名曲夜話① ロシア・旧ソ連編

グリエール バレエ組曲『青銅の騎士』+ホルン協奏曲
バレエ組曲『青銅の騎士』(作品89)
1.序奏 2.元老院広場にて 3.広場での踊り 4.エフゲニー 5.パラーシャ 6.抒情的な情景 7.ダンスの情景 8.占い師 9.輪踊りとダンス 10.第2の抒情的な情景 11.ワルツ 12.嵐の始まり 13.偉大なる都市への讃歌
ホルン協奏曲変ロ長調(作品91)
リチャード・ワトキンス(ホルン)
サー・エドワード・ダウンズ指揮 BBCフィルハーモニー管弦楽団
録音: 1994年 (Chandos CHAN 9379)
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帝政ロシアの末期を飾る大交響曲『イリヤ・ムロメッツ』、革命以後のソ連を代表するバレエ音楽『赤いけしの花』で、大作曲家としての地位を揺るぎないものとしたグリエールは、70歳を越えた晩年になっても、衰えることなく、傑作を生み続けた。

プーシキンの詩に霊感を受けたバレエ音楽、『青銅の騎士』(1949年)。
ソリストの超絶的なテクニックを必要とする、『ホルン協奏曲』(1950年)。

この20世紀中期の2大傑作をカップリングにしたCDが、サー・エドワード・ダウンズ指揮BBCフィルハーモニー管弦楽団による演奏である。このCDが1995年に発売されて間もなく、『青銅の騎士』の音楽に感動した人たちが、これを吹奏楽用に編曲。またたく間に、日本全国の中学・高校・大学の吹奏学部の定番曲となった。

青銅の騎士』は、現時点で入手可能な唯一の音源ということもあり、グリエール・ファンには貴重なディスクである。(以前Russian Discというレーベルで、もう一種類出ていたはずだが、見かけなくなってしまった)。学校で吹奏楽を経験している人たちにとって、グリエールはすでに人気作曲家の地位にあるが、一般的なクラシック・ファンの間では、まだまだマイナーな存在かもしれない。これほど素晴らしい作曲家の音楽がなかなか演奏されないのは、不思議としか言いようがないが、少なくとも『赤いけしの花』と『青銅の騎士』の2大バレエ組曲だけは、通俗名曲として親しまれる要素は十分にあるだろう。

青銅の騎士』とは、ロシアのサンクト・ペテルブルク市の元老院広場に立つピョートル大帝の銅像のこと。物語の主人公エフゲニーは、洪水で恋人パラーシャを失い、ついには幻想の中で、青銅の騎士に追いかけられるようになる。狂気の人となったエフゲニーは、人工都市の創造者として君臨する青銅の騎士像との対決に向かっていく…というストーリーだが、その音楽は、全編聴きどころの連続だ。

重々しいオープニングから、タンホイザーのような勇壮な旋律の立ち上がる「序奏」。テンポの速い、活気のある踊りを繰り広げる「元老院広場にて」。軽やかで、チャーミングなリズムが印象的な「広場の踊り」と続き、このバレエの主人公エフゲニーパラーシャの登場となる。それに続く、「抒情的な情景」のゆったりとしたアダージョは、いかにもロシア情緒にあふれる名旋律で、前半部分のクライマックスを形作る。

中間部分の「ダンスの情景」は、交響曲で言えばスケルツォに相当するダイナミックな舞曲。メルヘン的な色彩美に富む「占い師」を経て、切れ目なく「輪踊りとダンス」が始まる。この部分と「第2の抒情的な情景」は、大きく盛り上がる中盤のクライマックス。切々と心にしみる名旋律が、いつ果てるともなく続く。

ワルツ」は、チャイコフスキー以来の伝統を受け継ぐ優美なロシアン・ワルツで、後半部分のオアシスとも言える部分。「嵐の始まり」は、風雲急を告げるかのような、悲愴感にあふれる音楽。そして最後は、ロシア音楽史に燦然と輝く感動の終曲「偉大なる都市への讃歌」で、全編を締めくくる。(その素晴らしいメロディは、サンクト・ペテルブルクの市歌にも採用された)。

CDの後半に収録された『ホルン協奏曲』は、数あるホルン協奏曲の中でも、モーツァルトやR・シュトラウスと肩を並べる傑作。名手ヘルマン・バウマンのCDも出ているが、このCDでのトキンスのソロも素晴らしく、何度聴いても飽きが来ない。

この曲は、第1楽章アレグロのメインテーマがカッコよく、父親から受け継いだドイツの血を思い出させる。そして、哀愁あふれるホルンの名旋律。第2楽章アンダンテでは、しみじみと心に訴えかける歌が美しく、第3楽章モデラート~アレグロ・ヴィヴァースでは、変幻自在で味の濃いホルンの名人芸をたっぷりと堪能できる。