375's MUSIC BOX/魅惑のひとときを求めて

想い出の歌謡曲と国内・海外のPOPS、そしてJAZZ・クラシックに至るまで、未来へ伝えたい名盤を紹介していきます。

●天才歌姫!ジャッキー・エヴァンコ特集(1) 『O HOLLY NIGHT』

2014年01月12日 | ジャッキー・エヴァンコ


ジャッキー・エヴァンコ 『O HOLLY NIGHT
(2010年12月7日発売 in USA) SYCO MUSIC/COLUMBIA 88697-81151-2

収録曲 01.SILENT NIGHT (きよしこの夜) 02.PANIS ANGELICUS (天使の糧) 03.O HOLLY NIGHT (さやかに星はきらめき) 04.PIE JESU (ピエ・イエズ~アンドリュー・ロイド・ウェーバー:レクイエムより)

[DVD] 01.YouTube Audition: PANIS ANGELICUS (天使の糧) 02.From "America's Got Tarent": O MIO BABBINO CARO (私のお父さん~歌劇ジャンニ・スキッキより) 03.From "America's Got Talent": TIME TO SAY GOODBYE (タイム・トゥ・セイ・グッバイ) 04.From "America's Got Talent": PIE JESU (ピエ・イエズ~アンドリュー・ロイド・ウェーバー:レクイエムより) 05.From "America's Got Talent": AVE MARIA (バッハ~グノー) 06.AN INTERVIEW WITH JACKIE


クラシック音楽といえば、純然たるクラシックの専門教育を受けた音楽家たちが演奏する音楽・・・というイメージが長らく存在し、クラシックの専門教育を受けていない立場の人たちから見れば、少なからず敷居の高い面があった。大衆的なポピュラー音楽のファン層と、高踏的(?)なクラシック音楽のファン層では明らかな違いがあったのである。

しかし、現在はポピュラー音楽からクラシック音楽に移行する境界線が徐々に緩和されつつあるように思える。その傾向に大きな役割りを果たしているのが、1990年代から始まった「クラシカル・クロスオーバー」と呼ばれる新しいサウンドの音楽で、クラシック音楽のようなオーケストラ演奏をベースにしながらも、ポピュラー音楽的な親しみやすいメロディが歌われ、敷居の高さを感じることもない。歌手はクラシックの発声法を用いながらも、ポピュラー歌手のように自在な感情表現で歌う。特定のジャンルを超えた、いわば異種格闘技のような音楽が、現代のミュージックシーンにおけるひとつの流れになりつつある。

この分野の女性歌手で最大の大御所と見られているのが、サラ・ブライトマンであろう。特に1996年に発表された盲目のテノール歌手アンドレア・ボッチェリとのデュエット曲『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』は全世界で爆発的なヒットとなり、人気のスタンダード・ナンバーとして定着することになった。

その後、世界各国でクラシカル・クロスオーバーの分野に挑戦する歌手が続々と登場。日本ではアイドル歌手からミュージカル女優に転身した本田美奈子が、2003年に初のクラシカル・クロスオーバー・アルバム『アヴェ・マリア』をリリースした。「日本のサラ・ブライトマン」を目指していた彼女は『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』を初めとする名曲の数々を日本語訳で歌い、その天使の歌声と形容される澄み切ったソプラノ・ヴォイスは、日本の音楽界に新たな道標を与えるものとして大成を期待された。

しかし2005年11月、本田美奈子は志半ばで天国に召される。それからというものは、同時期にデビューしたキャサリン・ジェンキンズやヘイリー・ウェステンラに期待するほかないだろうな・・・と思っていたのだが、個人的にはやはり本田美奈子がいなくなった穴はあまりにも大きく、彼女と同等の魅力を持つ本当のスーパースター、将来の人生を賭けてもいいと思わせるような真の歌姫の出現を心から待ち望んでいたのである。

そして数年の歳月を経て・・・ついに現われた。
YouTubeで映像を最初に見た瞬間から「もしかしたら彼女が・・・」と思っていたが、もう確信していいだろう。

ジャッキー・エヴァンコ。2000年4月9日生まれ。この記事を書いている時点で13歳。

2010年8月(当時10歳)にTV放映された人気のオーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント(America's Got Talent)」で決勝まで勝ち進んだのがきっかけとなり、大人のオペラ歌手顔負けの歌唱力で一躍全米の人気者となった。それ以前に各種のローカル・オーディションには何度も登場しており、10歳の誕生日直前には地元の大リーグ球団ピッツバーグ・パイレーツの開幕戦で国家斉唱の大役を果たしている(YouTubeで映像を見ることができる)。

また、その前年(2009年)の時点で大物プロデューサー、デイヴィッド・フォスターが彼女の才能に目をつけており、同年11月には最初のアルバム『PRELUDE TO A DREAM』を自主制作盤でリリースしている(このアルバムには『アメイジング・グレイス』を含むクラシカル・クロスオーバー系の名曲が14曲収録されているが、翌年の「アメリカズ・ゴット・タレント」でジャッキーが全国的に有名になると、両親は「1年半で段違いに進歩した歌声はこんなものではない」として、このアルバムを引っ込めてしまった。そのため、現在では入手難のコレクターズ・アイテムになっている)。

9歳から10歳までの間に飛躍的に成長したジャッキーは2010年12月、満を持してメジャーレーベルでの初アルバムをリリース。それがここに紹介する『O HOLLY NIGHT』である。CD+DVDの2枚組で、収録曲はCD4曲、DVD5曲というミニ・アルバム。すでに発売時点で全米に名前が知られた人気者になっており、ビルボード初登場2位(クラシック部門では1位)、総売り上げは100万枚を突破。ミリオンセラーの史上最年少記録を打ち立ててしまった。まさに「天才歌姫現わる!」である。

CDに収録された4曲はいずれもクリスマス向けのナンバーなので、誰もが抵抗なく聴けるだろう。あまりにも有名な『SILENT NIGHT(きよしこの夜)』や『O HOLLY NIGHT(さやかに星はきらめき)』 は、ジャッキーの澄み切ったソプラノ・ヴォイスで聴くと、俗世間の荒波から救済されたような気持ちになるし、セザール・フランク作曲の『PANIS ANGELICUS(天使の糧)』は文字通り天使のような美声で身も心もとろけそうになる。アンドリュー・ロイド・ウェーバー作曲の『PIE JESU(ピエ・イエズ)』は前記3曲よりも現代寄りの宗教曲だが、これがまた、言葉が出てこないほど魅力的。まるで別世界から響いてくるようなピュアな歌声だ。

DVDには 『PANIS ANGELICUS(天使の糧)』のYouTube オーディションと、「アメリカズ・ゴット・タレント」で勝ち進んだ4曲のライヴ映像が収録されている。いずれも10歳の少女とは思えない堂々たる歌いっぷりだが、個人的には『タイム・トゥ・セイ・グッバイ』を歌っている時の映像が、どうしても生前の本田美奈子とダブって見えてしまう。歌い方や声も似ている気がするし、体全体から自然に湧き上がってくる感情表現も「本田美奈子が歌わせている」と想像すれば、なるほどと思ってしまう。インタビューで垣間見える愛嬌たっぷりなキャラも瓜二つだ。

やはり、ジャッキーこそ真の後継者であることは間違いないのではなかろうか・・・
 

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