★本田美奈子.『ETERNAL HARMONY』 (2008年11月6日発売)
COZQ325~6
収録曲 01.プロローグ 02.アメイジング・グレイス 03.白鳥 04.美しい夕暮れ 05.ニューシネマパラダイス 愛のテーマ 06.風のくちづけ 07.この素晴らしき世界 08.新世界 09.タイスの瞑想曲 10.エピローグ 11.アメイジング・グレイス (SPECIAL TRIBUTE TRACK Produced by Brian May)
DVD 01.美しい夕暮れ (ビデオクリップ) 02.ニューシネマパラダイス 愛のテーマ (録音風景)
---------------------------------------------------------------------
7月31日は歌姫・本田美奈子.の誕生日。1967年生まれなので、在命であれば今年で42歳になる。
振り返れば、2005年11月の逝去から3年8ヶ月。その突然の旅立ちが与えた衝撃は、個人的にも大きなものだったが、一般の人々に対しても、社会現象と言えるほどのインパクトがあった。
TV映像で連日のように流れる「アメイジング・グレイス」を聴いた時、多くの人たちは失った宝物の大きさを今更ながら気づき、惜別の思いを抱いたものである。もちろんTVの歌番組やCMなどによく登場していたアイドル時代は、同世代の誰もが覚えていたし、その後もミュージカル女優として活躍していたことも、比較的広く知られていた。しかし、クラシックのソプラノ歌手としてこれほどのレベルに到達していたとは…。よほど熱心に追いかけていたファン以外の人にとっては、驚き以外の何物でもなかったことだろう。
かく言う自分も、常に彼女ばかりを追いかけていたわけではなかった。なにしろ海外在住なので、コンサートにもなかなか行けない。情報も限られている。それ以前の問題として、音楽どころではない期間も長かったのである。
でも今は確信がある。逝去後ちょうど3年後に発売されたアルバム『ETERNAL HARMONY』をあらためて聴いて、やはり生涯で出会った最高の歌手は、本田美奈子.をおいてほかにない、という思いを新たにした。
このアルバムは、2003年と2004年に発売された2つのクラシック・アルバムに収録されたトラックから8曲のヴォーカル部分のみを抽出し、ルネッサンス、バロック期の古楽を専門とする5人の男声コーラス(アンサンブル・エテルナ)と、ギターデュオ(松原正樹&今剛)による伴奏バックで新たに録音したリ・アレンジ版である。
プロデューサー・井上鑑作曲による男声合唱の「プロローグ」に続いて、切れ目なく始まる「アメイジング・グレイス」。その冒頭から、可憐で透き通るような歌声に引き込まれる。純粋に声の美しさのみを際立たせた絶妙のアレンジ。目をつぶって聴いていると、どこか欧州の大聖堂のただ中に連れて行かれたような感覚になる。続いてギターデュオの伴奏による「白鳥」。息遣いと声の伸びが絶品で、すぐ目の前で歌っているようだ。
その後、男声コーラスを背景にした曲(「美しい夕暮れ」、「風のくちづけ」、「新世界」)、ギターデュオの伴奏による曲(「ニューシネマパラダイス 愛のテーマ」、「この素晴らしき世界」、「タイスの瞑想曲」)が交互に続き、最後は「プロローグ」と同じく、プロデューサー・井上鑑作曲の男声コーラスによる「エピローグ」でいったん幕を閉じる。
そして、最後のボーナストラックに収録された、もうひとつの「アメイジング・グレイス」。こちらは生前の本田美奈子.と親交のあったクイーンのブライアン・メイによる特別アレンジである。お得意のロックギターによるギンギンの伴奏かと思いきや、そうではなく、あくまで主役の美しいヴォーカルを前面に浮き立たせる、東洋的でシンプルなアレンジだ。最後のワン・フレーズでは、ブライアン自らのヴォーカルがサポートする。ここにおいて、本田美奈子.とブライアン・メイという2大アーティストによる豪華デュエットが成立したのである。
彼女自身が言っているように、ソプラノ歌手としての本田美奈子.は「まだ一年生」。まさに出発したばかりだった。声学の専門家ではないのではっきりとは言えないが、あるいは技術的にまだ未熟なところがあるかもしれない。しかし、それだからこそ、成熟したソプラノ歌手にはない初々しさがあり、それが彼女の魅力の一つになっていることも確かだ。ちょうど、デビュー間もなく世を去った映画スター、ジェームズ・ディーンのように。
生きた本田美奈子.のライブは、もう聴くことはできない。しかし、残された録音と映像の中で、いつまでも生き続ける。そして、これからも新しいファンを生んでいくだろう。
銀幕のヒーロー、ヒロインに、「引退」の文字はないのである。
ブログ・ランキングに参加しています。
ONE CLICKで順位が上がります。
7月31日(火曜日)、埼玉県朝霞市の東武東上線朝霞駅前の広場で行われた、本田美奈子さんの記念碑除幕式に参加した。
今回は7月20日から8月2日までが日本帰国の夏休みだったので、幸運にも、美奈子さんの生誕40年記念日に行なわれた、この歴史的行事に居合わせることができたのである。
式典に先立って、地元の女性コーラス隊による合唱。披露された5曲のうち、最後を飾ったのが、本田美奈子さん自身の作詞による、ドヴォルザークの「新世界」第2楽章だった。
午後2時開始の式典では、朝霞市商工会長、朝霞市長、朝霞市議会長の挨拶に続き、本日のメインゲスト、工藤美枝子さん(本田美奈子さんの母)、友人・早見優さん、所属事務所のボスこと高杉敬二氏が、美奈子さんとの思い出を語った。
そして、ブラスバンドの演奏するファンファーレと伴に、記念碑の幕が引き下ろされる。
白い鳩が中空に舞い、広場の後方に現れたのは、御影石で作られた記念碑。美奈子さんの微笑む顔、病床で書かれた「笑顔」の詩、そして「ありがとう」のメッセージ、記念碑の手前に植えられた色とりどりの花が目に飛び込んでくる。
この記念碑は、ボタンを押すと、美奈子さんの肉声による「新世界」の歌声が流れるようになっている。それが、かなりのボリュームだったので、朝霞駅前を往来する人たちが足を止め、しばし、その歌声に耳を傾ける光景が見られた。今後ここを通りかかる人は、地元・朝霞市を愛した天使の歌声を、いつでも思い出すことになるだろう。
最後は、地元の朝霞第4中学校のブラスバンド部によって、「ミス・サイゴン」の劇音楽と、「アメージング・グレイス」が演奏され、歴史的セレモニーの幕を閉じた。
式典の最中、何枚か貴重な写真を撮ることができたので、後日アップすることにしたい。

★本田美奈子.クラシカル・ベスト ~天に響く歌~ (2007年4月20日発売)
COZQ255~6
収録曲 01.私のお父さん~オペラ「ジャンニ・スキッキ」より 02.アヴェ・マリア
03.タイム・トゥー・セイ・グッバイ 04.ニュー・シネマ・パラダイス 愛のテーマ 05.アメイジング・グレイス 06.タイスの瞑想曲 07.ジュピター~組曲「惑星」より 08.新世界~「交響曲第9番『新世界より』第2楽章」より 09.白鳥 10.誰も寝てはならぬ~「トゥーランドット」より 11.ゴッドファーザー愛のテーマ 12.この素晴らしき世界 13.時-forever for ever- 14.ララバイ~ミュージカル「十二夜」より
特典映像 01.AVE MARIA(プロモーション・ビデオ) 02.新世界 03.つばさ
---------------------------------------------------------------------
現在、自分の家には、およそ数百枚のCDがあると思う。その中で最高の一枚は、と訊かれたら、今までならば、『AVE MARIA』か、『時』か、『アメイジング・グレイス』かで迷ったことだろう。最高の録音がこの3枚に分散しているので、甲乙をつけるのが難しかったのである。
だが、これからは迷う必要がない。『本田美奈子.クラシカル・ベスト~天に響く歌~』。
いつかこの世に別れを告げる日が来たら、人生最後の一枚として、このアルバムを聴いて眠りにつきたいものだ。
もちろん、ここに収録されなかった曲にも、思い入れはある。「ベラ・ノッテ」と「天国への階段」が入っていればさらに完璧なのだが、個人的な好みを言い出せばきりがない。本田美奈子.のクラシック期の代表曲として、一般的にお勧めできるベスト盤としては、まずは妥当な選曲だろう。
収録された14曲のうち、7曲がアルバム『AVE MARIA』からの選曲。2002年12月に最初に録音された「私のお父さん」から、2004年5月リリースのシングル「新世界」の時に歌を取り直した「ジュピター」までが、前半のプログラムである。
後半は、その「新世界」に始まる、アルバム『時』からの6曲。この中では「ゴッドファーザー愛のテーマ」のみ、アルバム盤とは違い、今回初めて許可が下りた本田美奈子.の歌詞付きヴァージョンが収録されている。そしてラストを飾るのが、2005年12月27日、生前最後の録音となった「ララバイ~ミュージカル『十二夜』より」。これは、ミニアルバム『アメイジング・グレイス』に収録されていたものだが、まさに彼岸の世界を思わせる絶美の歌声で、結果的に、この世に残した白鳥の歌となってしまった。
担当プロデューサー・岡野博行さんのライナーノーツに記された、それぞれの楽曲にまつわるレコーディングのエピソード。改めて、それを読みながら聴いていくと、美奈子さんがひとつひとつの曲を、愛情を込めて仕上げていった様子が、手に取るようにわかる。何度も何度も、納得のいくまでテイクを重ねていく姿が、生き生きと思い浮んでくるのだ。
ただ、やはり聴いていくうちに、激しく胸を揺すぶられるような感情に襲われる瞬間がある。特に、「アヴェ・マリア」や、「ニュー・シネマ・パラダイス 愛のテーマ」は涙なしには聴けない。「アメイジング・グレイス」もそうだ。どうしても入院後のことを思い出してしまう。音楽そのものに集中したいのに、なかなかそれができない。本当の意味で、失ったものの悲しみから抜け出すには、まだ時間がかかるかもしれない。
付録のDVDには、「アヴェ・マリア」のプロモーション映像のほか、「新世界」と「つばさ」のライヴ映像が収録されている。
この「新世界」は2004年8月にN響と共演した時のものだが、これは、ほんとうに見とれてしまう。発売されているライヴ映像としては「アメイジング・グレイス」と並ぶものだ。やはり、この時期の本田美奈子.は違う。デビュー20周年を目前にして、往年の美空ひばりにも匹敵するような、大歌手のオーラをかもし出すようになったのである。このまま成長していけば、あと2~3年後には、どれほどの黄金時代を迎えていたか…。それを思うと、また辛い気持ちになってきてしまう。
もう一曲、「つばさ」のライヴ映像は、1996年7月28日、阿蘇のファームランドでの野外ライヴ(共演は服部克久指揮する音楽畑オーケストラ)を収録したもので、昨年のフィルム・コンサートでも紹介された映像である。このフィルム・コンサートの記事で、「本田美奈子.の実力を世に知らしめる為にも、ぜひともDVD化してほしい」と書いたが、その希望がかなえられることになった。当時まだ29歳。後年の凄みにまでは達していないものの、美しいファルセットを駆使し、すでにクラシックと呼んでもいいような格調の高い名演を成し遂げている。
ここでは、技術的なことに触れる必要はないだろう。ひたすらに純粋無垢で、一途な歌声に浸っているだけで、十分幸せなのだ。
文字通り、至福に満ちた天に響く歌が、ここにある。
★本田美奈子.メモリアル・ベスト 『ANGEL VOICE』 (2007年4月18日発売)
TOCT-26255/56
DISC1 01.Temptation(誘惑) 02.1986年のマリリン 03.Oneway Generation 04.GOLDEN DAYS 05.殺意のバカンス 06.M' 07.好きと言いなさい 08.ハーフムーンはあわてないで 09.HELP 10.あなたと、熱帯 11.孤独なハリケーン 12.僕の部屋で暮らそう 13.命をあげよう~「ミス・サイゴン」より 14.この歌をfor you
DISC2 01.悲劇がいっぱい 02.どうしたら 03.IT'S JUST 04.SHANGRI-LA 05.あの娘があなたを狙っている 06.I~私のままで 07.GAMBLE 08.Primary~思い出はかわらない 09.友達のふり 10.SEED
DVD 01.1986年のマリリン 02.Oneway Generation 03.好きと言いなさい 04.CRAZY NIGHTS 05.Temptation(誘惑) 06.あなたと、熱帯 07.GOLDEN DAYS 08.Primary~思い出はかわらない 09.1986年のマリリン(LIVE)
---------------------------------------------------------------------
本田美奈子.デビュー22周年の時期に合わせて、アイドル時代の所属レーベルEMIから発売された、CD2枚+DVD1枚の豪華メモリアル・ベスト。秘蔵写真入りのブックレットも付いており、ファンとしては嬉しいプレゼントである。
注目は、DISC2に収められた10曲。これは本来、1990年の秋頃にリリースが予定されていながら、諸般の事情でお蔵入りになっていた『幻のアルバム』の音源と思われるもので、先行シングルとして発売された「SHANGRI-LA」「I~私のままで」の2曲以外は、今回が初登場となる。
先行シングルから17年越しのアルバム・リリース。これはちょっとした記録ではあるまいか。クラシック音楽の世界では、シューベルトの「未完成交響曲」のように、作曲後43年間、作曲者の机の中で眠り続けていた作品もあるが、歌謡曲の世界では、極めて異例の出来事かもしれない。
もちろん、幻のアルバムとは言っても、ミュージカルに進出する以前の作品でもあり、過度な期待はしないで聴き始めたのだが、これがなかなか素晴らしい。何よりも、今さらながら、彼女の歌のうまさに舌を巻いたのである。
楽曲も予想以上の出来栄えだ。冒頭の「悲劇がいっぱい」から、アップテンポでノリノリの曲目が続き、すでにシングル化された名曲「SHANGRI-LA」で、前半のクライマックスを形作る。後半も好調を持続し、本アルバムでの最高傑作「GAMBLE」と「Primary~思い出はかわらない」を経て、スケールの大きなバラード「SEED」でしめくくる。まさに、聴きごたえ十分。アイドル初期から一段階成長した、未来の大歌手・本田美奈子のエンジェル・ヴォイスをたっぷり味わうことができる。
このアルバムは、いわゆる「美奈子史」の中で、どのような位置付けになるだろうか。アイドル時代のレーベルからリリースされ、ミュージカルに進出する以前の時期でもあるので、そういう意味では第1期の「アイドル時代」に属するかもしれないが、WILD CATSの解散後、あらためてソロのシンガーとして出発した最初のアルバムという観点で聴くと、すでに第2期の「ポップス時代」に足を踏み込んでいるようでもある。そうなると、このアルバムは、4年後の1994年にリリースされた傑作アルバム『JUNCTION』の先駆的作品として見ることもできる。
事実、このアルバム中のいくつかの曲は、『JUNCTION』に収録された「BBちゃん雲にのる」に通じる、キュートで少しセクシーな、大人の雰囲気を表現しようとしている作品が少なくない。「悲劇がいっぱい」「SHANGRI-LA」「GAMBLE」には、いずれも、そのような路線を意識した節回しが見られる。特に「GAMBLE」は、本田美奈子自身が作詞を手がけた快心の一作であり、個人的には、今回のアルバムで最もお気に入りの曲となった。コーラスの部分を聴いていると、もともとはWILD CATS用の曲として準備していたものかもしれないが、可能であれば、今からでもシングルA面曲としてリリースさせてみたい気がする。
DVDでは、「1986年のマリリン」や「Oneway Generation」などのお馴染みの映像のほか、今回初公開の「GOLDEN DAYS」のメーキング映像などが収められている。
個人的には、DVDでは初の収録となる「あなたと、熱帯」に惹かれた。この映像は、昨年のフィルムコンサートでも一部が紹介されていたが、このWILD CATS時代というのは、後年のクラシック時代とは正反対に、前衛芸術に驀進した本田美奈子を体験できる時期なのである。今見ると、決して奇抜すぎることはないし、ヴィジュアル的にも可愛らしく、不思議な妖麗な魅力さえある。以前も書いたことがあるが、1989年の「豹的ツアー」の映像が残されているなら、ぜひ見てみたいものだ。
DISC1では、これまでEMIで発売されてきたベスト盤と違い、「僕の部屋で暮らそう」「この歌をfor you」といった、別レーベルの曲目を加えている点が注目される。将来的には、アイドル時代からクラシック時代までをすべて総括した、「ファン投票で選ぶ本田美奈子.スーパー・ベスト曲集」などの企画が生まれるかもしれない。

日本より2日遅れ(?)で、NYCの日系紙"DAILY SUN NEW YORK"にも本田美奈子さんの記事が掲載された。内容は、今月20日に発売予定(すでに発売中?)の伝記本『天に響く歌: 歌姫本田美奈子.の人生』(ワニブックス)の紹介にあてられている。
歌を愛し、病の中でもいつも笑顔を忘れず、最後まで闘い抜いた38年間の人生を、母・美枝子さん、親友・岸谷五朗をはじめとするステージ仲間ら、計15人による証言で浮かび上がらせているという。
本来、この本は、退院後の「元気本」として考えられていた企画とのこと。「読めば元気が出るし、生きることの大切さを教えてくれる。美奈子からの応援メッセージです」と、所属事務所の高杉敬二エグゼクティブ・プロデューサーは語る。
ただ、やはり病気の場面になると、読むのが辛くなるかもしれない。
今回初めて主治医の明かす、「極めて治る可能性が低かった」という証言。
そんな中でも、周囲を元気付けようと努めていた美奈子さんだが、ほんとうは、人知れず泣いていたことを思うと、どうしても胸が痛くなってくる。
あと、紙面の左下のほうに、故郷・朝霞駅南口に建立予定の記念碑の記事と、亡くなる一年前に、新潟へ家族旅行に行った時の写真が出ている。2004年の夏頃だろうか。親子というよりは、3人姉妹のようにも見える。お母様が、あまりにも若々しい。
この伝記本、まずは一日も早く、手に取ってみたいものである。
今日は、新譜『ANGEL VOICE』の発売日である。しかも、某ファンサイトの情報によると、『ANGEL VOICE』だけではなく、4月20日発売予定の『Classical Best~天に響く歌』も、すでに店頭に出ているらしい。
ということは…。
さっそく、自分がいつも利用している販売サイトで、注文状況を確認してみると、予約しておいた2点の新譜+伝記本『天に響く歌: 歌姫本田美奈子.の人生』は、すでに入荷済みで、「出荷準備中」のステータスになっている。
あとは発送されるのを待つばかり、ということだ。しかし、ここからが長い。
海外行きの商品は、まず、成田空港の国際交換局に運ばれる。ここで空輸便となり、14時間の空の旅。NYCのJFK空港に到着した後、いったんマンハッタンの郵便局に輸送され、ここから宅配便として配達されるのである。この間、普通は2~3日を要するので、こちらへ到着するのは、4月20日(金)くらいであろうか。やはり、地球の反対側は遠い。
もうしばらく、寝ても覚めても、美奈子さんを待ち焦がれる日が続きそうだ…。
---------------------------------------------------------------------
『天に響く歌~歌姫本田美奈子.の人生』(仮題)
定価 1470円
発売日 2007年4月20日?(販売サイトによってまちまちの情報)
ISBN 4847017234
JAN 9784847017230
---------------------------------------------------------------------
本田美奈子.の38年間の軌跡を綴ったドキュメンタリー本とのことである。
詳しい内容は不明。昨年の同時期に発売された2冊の『天国からのアンコール』のように、メッセージ付き写真集のようなものか、それとも本格的な伝記に近いものか、現時点では想像するしかない。が、ともかく、今年も貴重なコレクションが加わるのは、嬉しいかぎりだ。
4月はイースターの季節であるが、ファンにとっては「美奈子復活祭」の季節でもある。新譜CD『エンジェル・ヴォイス』(TOCT-26255-56)、『クラシカル・ベスト~天に響く歌』(COZQ-255)と合わせて、3点セットで予約しておこう。

2月27日の朝刊のニュース(毎日新聞、読売新聞埼玉版、埼玉新聞等)によると、埼玉県朝霞市の富岡勝則市長が、歌手・本田美奈子さんの記念碑を、現在開発中の東武東上線朝霞駅の南口駅前広場に建立する考えを明らかにしたという。
美奈子さんは、2歳から亡くなるまで、ずっと朝霞の地で過ごし、地元の「朝霞市民会館」では、コンサートも何度か行なっていた。同市民会館では、昨年4月に追悼展、11月には一周忌追悼イヴェントも開催されている。
記念碑のイメージについて、市長は「モニュメントに本田さんの歌の歌詞などを織り込めたらいい」と話しているとのことである。もしかしたら、ジュークボックスのように、好きな曲目を選んだら、その曲のメロディーが流れる・・・ようなものになるのだろうか。
完成予定は7月下旬。ということは、7月31日の生誕40周年記念日に合わせて除幕式、ということになるかもしれない。その日は、美奈子さんゆかりの人たちと、全国の美奈子ファンが朝霞駅の南口広場に集結することになるのだろうか。願わくば、歴史的一日の場に居合わせたいものだが・・・。
ともかく、美奈子さんにふさわしい、素敵な記念碑が完成することを期待したいと思う。
★本田美奈子.フィルムコンサート“舞輝(BUKI)” TOUR 2006-2007
曲目 1. 誰も寝てはならぬ 2. アメイジング・グレイス 3. Oneway Generation 4. 孤独なハリケーン 5. CRAZY NIGHTS 6. 勝手にさせて 7. 愛が聞こえる 8. あなたと、熱帯 9. 命をあげよう(「ミス・サイゴン」より) 10. オン・マイ・オウン(「レ・ミゼラブル」より) 11. ララバイ(「十二夜」より) 12. FRIENDS(「クラウディア」より) 13.
AVE MARIA 14. ニューシネマ・パラダイス 15. Time To Say Goodbye 16. つばさ 17. ジュピター 18. 1986年のマリリン 19. 新世界(End Credit)
---------------------------------------------------------------------
2006年度に観た最高のコンサート。それは、8月12日~13日に、ラ・フォーレ原宿で行なわれた「本田美奈子.フィルムコンサート“舞輝(BUKI)” TOUR 2006-2007」であった。これを観たいがために、急遽太平洋を越えて帰国した旅は、まだ昨日のことのように憶えているし、おそらく今後も、一生忘れることがないであろう。
コンサートを見終わったその日、自分は記憶が鮮明なうちに、渋谷のネットカフェに飛び込んで、当時から運営していたもう一つのブログに、感想を書き込んだ。その時の、かなり興奮した文章は、今でも、そのブログで読みかえすことができる。
さすがに、今では冷静になっているが、やはり、あのような素晴らしいコンサートは、一生のうちに何度も体験できるものではない。そこで、2007年度の出発に当たって、当時の原稿に手を加えながら、今一度、あの感動をふりかえってみたいと思う。
自分が観たのは、8月12日の第1回目、午後1時開演の上映だった。どれだけの混み具合になるか見当がつかなかったので、とりあえず、1時間半前の午前11時30分頃、会場に到着した。すると、すでに20人以上の列ができている。全館300席ということなので、これは余裕だ・・・と思いきや、後から来た人たちが、次々と、自分の前方に並んでゆくではないか。どうやら「ぴあ」で前売り券を購入した人たちが、優先的に入場できるという仕組みだったようだ。
それでも、12時15分の開場時には、無事に中ほどの良い席を確保することができた。周囲を見渡すと、さまざまな年齢層の人たちの姿が見える。普段はあまり音楽を聴きそうもない年配の方々から、子供連れの夫婦、若いカップルまで、実にバラエティに富んでいる。自分のような美奈子ファンもいれば、通りすがりに興味を持って立ち寄ってみた人たちも、少なくないようだ。
午後1時になり、上映が始まる。まずは、本田美奈子出演のテレビCMの特集。カルビー・ポテトチップスの3種類のCM、佐藤製薬のストナエース、東芝扇風機「風のイマージュ」、ろうきんのCMが2種類、シャワランのシャンプー&リンスに、同社の牛乳粉石けん・・・と続く。こういうテレビ時代があったんだなと、今さらながら懐かしい思いがすると同時に、これを初めて見た若い人たちの目には、どのように映っているだろうか、という興味がわいてくる。
続いて、いよいよ本編。まずは2004年のクラシック・ライブから2曲、①「誰も寝てはならぬ」と②「アメイジング・グレイス」。②「アメイジング・グレイス」のほうは、すでにDVDで出ている六本木スイートベイジルのライブ映像。①「誰も寝てはならぬ」のほうは、まだリリースされていないが、同じ衣装であるところを見ると、同日のライブ映像のようだ。このコンサートは、2004年10月14日に行なわれているので、アルバム「アヴェ・マリア」の収録から1年半以上経っている。その間、歌唱力はさらに飛躍し、この時期には、もはやオペラ歌手と呼んでもいいほどの声量と迫力を持つようになった。この「誰も寝てはならぬ」は、今振り返っても、文句なしに、すごい。まるで、時速100マイルの剛速球でいきなりストライクを取られたかのように、呆然としたものである。
この2曲が終わると、画面はアイドル時代にタイムスリップ。1987年の3つのヒット曲③「
Oneway Generation」、④「孤独なハリケーン」、⑤「CRAZY NIGHTS」 のメドレー。TV番組「ミュージック・ステーション」等での映像と思われ、いずれも、リズムの切れがよく、溌剌とした若き日のパフォーマンスを堪能できる。
続いて、灼熱のロックバンド、MINAKO with WILD CATS時代の貴重な映像。⑥「勝手にさせて」、⑦「愛が聞こえる」、⑧「あなたと、熱帯」。
この3曲の映像は、当時、15分ビデオという形で発売されたことがあった。セールス的には壁に当たった時期でもあるので、素通りされることも多いのだが、個人的には、この時期にしかできないような、破天荒な熱唱が期待できるので、とても興味がある。もしも、運よく映像が残っているならば、1989年夏に行なわれた「豹的 TAEGET TOUR 1989」を、ぜひ観てみたいと思う。
この後、ふたたびCM映像の特集となり、グリコ・ポッキー、AUREXのCDコンボ、「つばさ」を歌ったオッペン化粧品、が登場する。1990年代になると、ほとんど日本のTVは観ていないので、この日、初めて目にするようなCMも多い。
ここからは1992年以降のミュージカル時代となる。この時期の出世作となった⑨「命をあげよう」(「ミス・サイゴン」より)を皮切りに、⑩「オン・マイ・オウン」(「レ・ミゼラブル」より)、⑪「ララバイ」(「十二夜」より)、⑫「FRIENDS」(「クラウディア」より)が歌われていく。
この中で、圧巻だったのは⑩「オン・マイ・オウン」だ。コンサート等では何度も歌っていながら、なぜかCD録音が出ていなかった、ミュージカル時代の代表作。ようやく、遺作アルバム「心を込めて…」に、デモテープからのテイクが収録され、それはそれで素晴らしいのだが、今回、劇中で歌われる同曲は、完全にエボニーヌの役柄になりきっているためか、まさに鬼気迫るものがある。これぞ、完成版の「オン・マイ・オウン」といえよう。ミュージカルの場合は、ドラマ全体をDVD化するのは権利上の面で難しいかもしれないが、せめて彼女が歌う、この曲の部分だけ、なんとかリリースできるようにはならないだろうか、と願わずにはいられない。
この後は、再び、クラシック時代のナンバーとなる。⑬「AVE MARIA」、⑭「ニューシネマ・パラダイス」、⑮「Time To Say Goodbye」。いずれも、2004年頃のコンサートの映像だろうか。どの曲も、情感たっぷりに歌われ、至福の世界へ誘われる。そして、「ありがとう」の詩の朗読をはさんで、いよいよ本日のクライマックス、⑯「つばさ」、⑰「ジュピター」、⑱「1986年のマリリン」のライブ映像となる。
ここで歌われる⑯「つばさ」は、1996年7月28日、阿蘇ファームランドで行なわれた野外ライブとのことである。バックで演奏するのは、服部克久と音楽畑オーケストラ。これは、素晴らしい演奏だ。ゆっくり目のテンポが雄大なスケールを生み、文字通り、大空へ飛翔していくような感動に包まれる。やはり、圧倒的な名曲。この曲は1994年にCD録音されているが、2年後のこの時点では、細部のニュアンスに至るまで、完全に本田美奈子の音楽として完成されている。この映像は、何度でも繰り返し観たい。歌手・本田美奈子の実力を世に知らしめる為にも、ぜひともDVD化してほしいと思う。
⑰「ジュピター」、⑱「1986年のマリリン」の2曲は、2004年12月1日に日本武道館で行なわれたイヴェント「Act Against AIDS」(通称AAA)での映像。すでに体調の悪化が懸念されていたと思われる時期であるが、このパフォーマンスは神がかり的にすごい。クラシック音楽の名曲「ジュピター」の荘厳なドラマを歌いながら、手拍子とともに踊る。次の瞬間、金色の衣装のままで、いっさいの流れを断ち切ることなく、「マリリン」の華麗なダンスが始まるのだ!
まさしく、魔法のような離れ業だ。これこそ歌の女神(ディーバ)と呼ぶにふさわしい。ふだんテレビで見かけるような歌手とは、格段にレベルの違う存在。2004年後半から、翌年1月の入院時に至るまでの、ほんの短期間だったとはいえ、彼女は歌手として、間違いなく日本最高、いや、世界最高レベルに達していたのではないだろうか。
本物の芸術とは、こういうものだと思う。「うまい」とか「美しい」とかいう次元ではなく、「圧倒的に、ものすごいもの」。芸術とは、まさに爆発であり、落雷のような衝撃の伴うものなのだ。2006年8月12日、自分は、かけがえのない奇蹟を体験したと言ってもいい。自分が、歌の力だけで泣いたのは、40年以上の人生の中で、この時だけである。
その日、午後1時開演の上映のあと、少し時間を置いて、第4回目の5時30分開演の上映を、もう一度観た。今後再び、フィルム・コンサートが開かれるとしても、タイミングよく帰国できる可能性は少ないだろう。この千歳一遇の機会に、この感動を永遠に忘れることがないように、胸に刻み付けておきたかったのだ。
2007年度は、歌姫・本田美奈子の生誕40周年にあたる。いろいろとイヴェントが計画されていると思うが、個人的な希望としては、やはり、この日観たような、圧倒的なライブ映像がほしい。そして、1人でも多くの人たちと、彼女の貴重な芸術的遺産を分かち合える日が来ることを、心から願うものである。