わたしは、その次の日、銀行を無断欠勤することにした。馬鹿らしくて出勤する気にならないのだ。石本社長のところには、もっと行く気がしない。一体、わたし、どうなっちゃうんだろう。
「ねえさん、大丈夫なの。今日は、銀行、休むの?」
わたしが起きないものだから、妹の由香が心配そうに、寝ているわたしの顔を覗き込んだ。
「いいのっ。ねえさんは、これから少しの間、休暇を取ることにしたの。」
「ふーん。いいなぁ。わたしなんか、明日からテストだよ。」
「・・・。」
人の気も知らないで・・・。学生は気楽でいいわよねぇ。わたしは、ふとんを頭から被った。
ピンポーン。
誰か来たようだ。おおかた、クリーニング屋の御用聞きか回覧板だろう。そんなことは、由香に任せておけばいい。わたしは、今日はふて寝するんだ。由香、頼むから、ねえさんを起こさないでよ。
ドタドタドタッ。
うるさいっ。由香、もうちょっと静かにしてよ。小学生みたいに、部屋の中を走り回らないで。
「ねえさんっ、大変よ。石本グループの社長秘書っていう、凄い綺麗な人が来てる。」
「なんですってっ。」
わたしはベッドからガバッと飛び起きた。
「その社長秘書が何しに来たのよっ。」
「迎えに来たって言ってた。ねえさん、なんか約束したの?」
「そんなことする訳ないじゃないっ。馬鹿じゃないの。」
「馬鹿とは何よ。心配して言ってるのに。」
「とにかく着替えるから、待って貰って。」
「うん。」
わたしは、あわてて洋服に首を突っ込み、髪を直した。なんであの社長の秘書に会うのに、こんなに焦らないといけないのよ。全く腹がたつことこのうえないわ。それでもきっかり5分後には、わたしは社長秘書の前に立っていた。
「お待たせしました。わたしが秋島美奈です。今日は何のご用かしら。」
「社長から、秋島さんを迎えに行くように命じられましたの。」
わたしは、彼女の全身を値踏みするように観察した。随分、失礼な所作だったと思う。彼女はそれでもにこやかな笑顔でわたしに言った。
「下に車を待たせてありますの。ご一緒に来ていただけます?」
少し首を傾げながら、ころころと鈴の鳴る様な声で私に言った。
由香の言っていたとおり、凄い美人だ。女のわたしでも触れてみたくなるようなサラサラのロングヘアがまぶしい。しなやかな髪の毛が風にそよぐ度に、芳しい香りが鼻をくすぐる。キラキラと輝く黒目がちの瞳は見ているとすいこまれそうだし、ピンク色の口唇はさくらんぼのような瑞々しい輝きをたたえていた。そして、悔しいけれど、プロポーションも抜群だった。胸元の大きく開いたフェミニンなワンピースから、その薄手の生地を通して匂い立つような女の色香が発散していた。くっきりとした胸の谷間は、彼女のように白磁のような肌があってこそ際立つのだ。木目の細かい白い肌は、適度に脂肪ののった優美なボディラインと見事にマッチしていた。
「判りました。」
わたしは彼女に見惚れてしまったのが恥ずかしく、顔が赤くなるのを感じた。彼女が、石本社長の愛人なのだろうか。こんなに美しい女性が社長秘書をしているのなら、わたしを愛人にする必要など全くない。美幸が言ったことをそのまま鵜呑みにして真に受けてしまったけれど、考えてみれば、あんな大会社の社長がわたしなんかを愛人にしようとするはずかない。わたしはパンプスを履きながら、そんなことを考えていた。
「会社に行く前に、美奈さんが今後、住まわれることになるお部屋にご案内します。」
「えっ・・・。」
「ご一緒に仕事をしていただける条件のひとつに、住居の提供があったと伺っております。」
「それは・・・。」
「先日完成したばかりのマンションの最上階の部屋をご用意しました。気に入っていただけるとうれしいですわ。」
階下で待っていたのは、運転手付きの黒塗りの高級車だった。そう言えば、支店長がこんな車に乗っていたなぁ。車は滑るように走り出した。
案内されたのは、都心の高級マンションだった。わたしが苦労して購入した・・・ローンもたっぷり残っている・・・マンションとは比べ物にならないくらい豪華な造りだ。大理石のホールを通って、吹き抜けのエレベーターで最上階の24階まで上り詰めると、そこは、ワンフロアー占有のペントハウスだった。
「これは・・・。」
眼下に街全体が一望できる。周囲にこの高層マンションを遮るものはなく、彼方には美しい瀬戸内海の島々まで眺望できた。これをわたしに・・・? 俄かには信じられない厚遇だ。
「ふう・・・。やはり素敵ね。」
案内してくれた彼女まで溜息をついた。
「そう言えば、まだ名前を伺っていなかったわ。」
わたしは彼女に言った。
「吉野玲子です。よろしく、課長。」
「課長?」
「あら。まだ、社長から聞いていないの? 美奈さんのポジションは、わたしの上司、つまり、秘書課長。課長の部下は男性も含め、全部で14人。課長職は、前任者が辞めて、空席になっていたの。結構、大変なポストよ。」
「前任者?」
「先月、エリート社員と結婚して辞めたわ。美奈さんはその後任。新しいプロジェクトも始まるし、前任者よりも大変かも・・・。」
わたしには判らないことばかりだ。
「これがこの部屋の鍵。」
「鍵?」
「そうよ。たった今から、課長の社宅というわけ。わたしとは待遇が全然違うのだから、厭になっちゃうわ。」
家具も家電製品も全部揃っていた。確かに、今からでもここで生活できる。
「じゃあ、会社に戻りましょうか。」
玲子は、わたしに促した。
「ちょっと待って。わたし、まだ、心の準備が・・・。」
「だ・め・よ。」
玲子はおどけた口調ながらも、きっぱりと私の希望を拒絶した。
30分後、わたしは石本社長の前にやや不貞腐れながら立っていた。
「よく来てくれたね。今日から、1か月は、玲子君から引継ぎを受けてくれ。まあ、彼女も前任者から引き継いだことを君にそのまま伝えるだけだから、判らないことも多いだろう。そのへんは適当でよいから、君の好きなようにしたまえ。新規プロジェクトについては、引継ぎの後でじっくり話そう。いいね。」
石本社長は上機嫌だった。わたしは返事をしなかった。
こうして、わたしの新しい生活は始まった。
最初にした仕事は、必要最低限のものをわたしの部屋から社宅のマンションへ運ぶことだった。石本社長に提供して貰った部屋の方がはるかに広くて豪華だった。荷物持ちにきた由香は、最初は何の相談もせず銀行を辞めたことについて非難していたが、この部屋に入るなり羨望の声に変わった。
「凄い。一体、どうしちゃったの。ねえさんなんかに、こんな部屋を提供してくれるなんて、その社長さん、よほど変わり者なのね。」
「ふん。ほっといてよ。由香、あなたこそ明日から、わたしの部屋でひとり暮らしする訳だけれど、男なんか連れ込まないでよ。わたしだって、そんなこと、していないんだからね。」
「えへへへ。おかあさんには、言いつけないでね。」
語るに落ちたとはこのことだ。わたしがいなくなることがはっきりしたとたん、ボーイフレンドに連絡したのに違いなかった。ああ、浩一郎君。あなたが生きていてくれたら・・・。
翌日から、新しい職場での仕事が始まった。驚いたことに、朝は、玲子があの運転手付きの黒塗りの車で迎えに来ると言う。そのまま社長宅に迎えに行くのだ。玲子が助手席、わたしが社長の隣だ。
「これだと、社長が来る前に仕事の準備ができないわ。」
わたしは、玲子に疑問をぶつけた。
「いいの。そんなことは、第2秘書以下の仕事なのよ。わたしたちは、純粋に社長のお世話やもっと重要な仕事をするの。」
「・・・。もっと重要な仕事?」
ふふふ、と玲子は笑って、はっきりとは答えてくれなかった。
玲子からの引継ぎ事項は、さすがに多種多様だった。社内のことや取引先のこと、VIPについては、顔と名前のほかに趣味や家族関係まで覚えなければならなかった。さらに、現在進行している新しいメディアチャンネルのプロジェクトの詳細までレクチャーを受けた。プロジェクトチームのメンバーとの顔合わせも時間の合間を縫って行われた。夜は夜で社長のご接待に玲子とともに付き合わされた。会う人物は、いずれも政財界のVIPばかりだったから、気が抜けなかった。こんな調子だったから、1か月くらいは、あっという間だった。不思議だったのは、玲子のことだ。こうしたご接待があった夜は、社長専用車で、まず、わたしを送ってくれる。その後、社長を送ってから、ようやく帰宅できるのだから、相当、遅い時間になる。そのうえに、朝は、わたしや社長を迎えに行くために、一番早く起きなければならない。いくら若いと言っても辛いはずだ。それを玲子に言うと、わたしが下っ端なのだから、課長は気にしないでくださいと言う。それに・・・、と玲子は言った。
「1か月の引継ぎが終わったら、わたし、1週間の休暇を貰えることになっているんです。」
「そうなの。」
わたしはそれをきいて、だから頑張っているんだ、と勝手に思い込んでしまった。
正直に言うと、わたしは現在の仕事に充実感を覚え始めていた。石本社長には、少し反抗的な態度をとったけれど、今では後悔していた。責任のある、しかも陽の当たる仕事。その報酬は十分すぎるほどのものだった。お給料は、それまでの2倍強。待遇も社長と行動を共にしているから、重役扱いだし、これ以上のものは望めない。今も、心地よい疲労感とともに風呂上りに冷えたトマトジュースを飲んでいるところだ。全自動のマッサージチェアに身を投げ出し、心地よい振動を全身に受けながら、目の前には、大型液晶プラズマテレビから今日のニュースが流れている。10人以上も配下に部下がいると、それなりの苦労や責任はあるけれど、仕事という意味では、それなりにおもしろく充実している。今までの銀行勤めとは、比べ物にならない。
そう言えば、玲子の引継ぎは明日までだった。明後日から一週間は、彼女なしで切り盛りしなければならない。彼女も若いのに凄いなぁ。そんなことを思いながら、いつの間にか眠っていた。
翌日。いつものように玲子が迎えに来た。明日からは、直接、わたしのところに車が来るのだろうか。確認しておかなければ・・・。
気のせいか、玲子が疲れているように見える。化粧もいつもより濃いようだ。どうしたのだろう。
「昨日、ほとんど眠っていないの。それで、少し疲れているように見えるのかな。」
玲子はそう言った。
1か月過ぎた現在では、さすがに新しい引継項目は少なくなっていた。今日も一日は流れるように速く過ぎて行った。夕方、玲子が紙袋を提げて、やって来た。
「課長に、わたしが休暇に入る前に、最後の重要な引継ぎをします。」
玲子はいつになく真剣な眼差しだった。玲子は社長室に入っていき、一番奥のプライベートルームに入った。そこは、仕事で夜遅くなった時、社長が泊まるための部屋だった。通常は使用していない。
玲子はわたしがその部屋に入ると、後ろ手で鍵を閉めた。
「どうしたの?」
わたしは訝しんで玲子に尋ねた。
「わたしが、この引継ぎを別の女性にすることになるとは思っていなかったわ。でも、相手が美奈さんじゃ仕方ないわね。」
「なんのこと?」
「美奈さんの前任者からわたしがこの引継ぎを受けたのが2年前。それ以来、わたしと彼女とはライバルだった。そして、やっと彼女がいなくなったと思ったら・・・。でも、いいわ。いまさら、この生活を手放す気にはなれないもの。これからが勝負よ。」
「一体、なんのことよ。」
「びっくりしないでね。」
玲子はワンピースのファスナーを引き下ろしたと思ったら、足元に脱ぎ捨てた。彼女は下着を着けていなかった。正確には、パンストだけを着けていた。彼女はそのパンストも脱いで、全裸になった。
彼女の裸身は、美しかった。見事なほど均整がとれた身体は、古代ローマの彫刻のようだった。彼女は紙袋を持って、わたしのところに歩み寄った。
「さあ、これをわたしに着けて。」
玲子は紙袋の中から取り出したものは、わたしが今まで見たこともないようなものだった。
「これは貞操帯よ。」
「貞操帯?」
初めて訊く言葉だった。
「気付いていると思ったわ。わたしが社長の愛人であることを・・・。最近は、いつもわたしの部屋に社長は泊まっていたの。彼は、わたしの部屋から出社していたのよ。毎朝、わたしが彼を起こして、朝食を一緒に食べて、あなたを迎えに行っていたの。いずれ、今の奥さんを追い出して、わたしが後釜に座ろうと思っていた訳。美奈さんが来るまでは、うまくいっていたのよ。もうちょっとだった。彼、今の奥さんとは冷え切っているし、子供もいないし・・・。」
わたしはごくっと唾を飲み込んだ。玲子が愛人だったなんて。それに貞操帯って、何だろう。
「彼は女のところに行く時には、もう一人の女、つまりわたしに、貞操帯を着けさせるの。そして、鍵をあなたに持たせる。そうすることで、あなたはその鍵を持っている間、わたしが社長とセックスできないという保障を得る。そういう仕組みよ。」
「な、なんなのっ、それっ。」
わたしは叫んだ。わたしが社長の女であるとでも言いたいの。
玲子はわたしの叫びを無視して、
「さあ、これをわたしに着けてっ。」
そう宣言して、貞操帯をわたしに突きつけた。
「あなたが社長と寝るかどうかは、わたしの知ったことではないわ。わたしはきちんとあなたに引継ぎをしたという事実が大切なの。ちゃんとこの貞操帯の鍵を社長に見せて欲しいのよ。これは、彼の言いつけをわたしが忠実に守ったという証となるわ。社長の申し出を断るのは、あなたの勝手よ。でも、わたしから見ると、あなたは馬鹿だわ。わたしは、この生活を今更、手放すことはできないもの。この件から美奈さんが降りてくれれば、わたしにとっては都合のよいことだけれど・・・。」
「判ったわ。鍵は社長に届けるわ。でも・・・、貞操帯はどうしたらいいのか、判らない。」
「いいわ。自分で着けるから。鍵だけは美奈さんが掛けてね。」
玲子は、白い棒状のものにローションを塗りつけた。よく見ると、それは男性器を模したものだった。太さは5センチほどもあり、長さも20センチはあった。それが金属製のT字帯に植え付けられている。この時になって、わたしにも、貞操帯がどのように使われるのかがようやく理解できてきた。玲子は中腰になり、両脚を大きく開き、その男性器を模したものを膣腔の中に挿入しようとしている。わたしは、この美しい玲子がこんな浅ましい姿をわたしに晒すのを見て、思わず目を背けた。あんな大きなものが入るのかしら。わたしは不安になった。
「うう・・・。」
玲子は少し苦しそうに呻き声を発っした。
「別に、悔しくなんかないわ。もし、あなたが社長に抱かれるのなら、その後は、交代でこうして貞操帯を着け合わなければならなくなるのよ。逃げ出すのなら、今のうちよ。」
そう言って、玲子は一気に根元まで挿入した。その結果、金属のT字帯の縦の部分が股間に蓋をするようになって、横の部分がベルトとなった。お尻の割れ目には細いピアノ線のようなワイヤーが這っている。
「これは1ミリでも狂うと擦れて肌を傷つけるから、そうならないように、細心の注意を持って、わたしの身体に合わせて精巧に作られているの。金属の部分が当たって痛くないように裏にコーティングもしてあるのよ。随分と高価なものらしいわ。あなたのが必要になったら、わたしが採寸してあげるからね。さあ、この臍の下にあるバックルをパチンと嵌めて、鍵を掛けて。」
わたしは夢中で鍵を掛けた。
「その鍵を社長に見せに行かなければならないの。」
「えっ? わたしが?」
「そうよ。最初だから、わたしも一緒に行ってあげる。」
わたしは鍵をぎゅっと握り締めた。もう逃げ出したかった。玲子は手際よく、パンストとワンピースを身に着け、ハイヒールを履いた。
「なぜ、こんなことをするの。」
「さあね、社長の趣味かしら。随分、悪趣味だと思うわ。でも、この貞操帯のせいで、わたしは、どうあがいても浮気できない。しかも、せっかくの休暇だというのに、金属探知機が怖くて、飛行機にも乗れない。自分の部屋でおとなしくしているほかないし、悔しいけれど、これって、社長の思う壷よね。さあ、社長に報告に行きましょう。」
わたしは玲子に引き摺られるように、社長の許に連れて行かれた。悪寒で全身に鳥肌がたった。
「社長、明日から休暇をいただきます。」
玲子とわたしは、社長の前に並んで立っている。社長は執務机に向かい、書類に目を通していたが、玲子の声に顔を上げた。
「おお、そうだった。明日から1週間、休暇だったね。」
「はい。それで、美奈さんに最後の引継ぎをしてきたところです。」
わたしは、「最後の引継ぎ」と平然と言ってのける玲子の顔を、思わず見てしまった。
「そうか。それじゃあ、スカートを捲り上げて見せてみたまえ。」
なんですってっ!!! わたしは社長の言葉に我が耳を疑った。
しかし、玲子は動揺する様子もなく、平然とワンピースの裾を腰の上まで捲り上げ、臍から下を社長の目に晒した。貞操帯のシルバーの金属光が薄いパンストを通して、わたしの目を射抜いた。丸見えとなった玲子のすんなりした両脚や貞操帯からはみ出した陰毛が、非現実的な光景のように思えた。ここは、社長室なのだ。ドアを開けて一歩踏み出せば、たくさんの社員が忙しく働いている。わたしは咽喉がからからになり、身動きすることすらできなくなっていた。
「それで、鍵は?」
「・・・。」
わたしは、ぎくしゃくとした動きで、鍵を持った手を突き出し、社長に見せた。
「ふむ。判った。それでは、あしたの晩から、秋島君の部屋に泊まることにする。いいね?」
「・・・。」
わたしは返事ができなかった。
「どうした。引継ぎはできたのではなかったのかね。」
社長は苛立ったように言った。
玲子は、冷たい微笑をたたえ、わたしの横顔を見ている。玲子に気後れして、そして、その場の異常な雰囲気に飲まれて、わたしは小さな声で返事をした。
「はい・・・。」
「ううん?」
「・・・はい。承知しました。」
わたしは思わず屈服の答えをしてしまった。玲子が「ふーん」と言う顔をしてわたしを見た。わたしは、このままだと玲子に負けたような気がして、そう答えてしまったのだ。そして、そう答えたことを、たちまち、後悔していた。社長は上機嫌で、
「それでは、二人とも今日はもう終わっていいよ。玲子君、ごくろうさま。明日から、1週間、ゆっくり休んでくれたまえ。」
と言って、もうわたしたちには興味を失ったかのように、書類に向かった。
「失礼します。」
社長に声を掛け、玲子とわたしは社長室から退出した。ドアを閉めたとたん、わたしはおこりにかかったように全身が小刻みに震えだした。
「ふふふ。美奈さんもやるわね。そうなの。そうだったの。あなたも所詮、わたしと同じだったと言うことね。それなら、もう遠慮はしないわ。これからは、ライバルよ。」
玲子はわたしにそう言い残して、立ち去った。
(続く)
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「ねえさん、大丈夫なの。今日は、銀行、休むの?」
わたしが起きないものだから、妹の由香が心配そうに、寝ているわたしの顔を覗き込んだ。
「いいのっ。ねえさんは、これから少しの間、休暇を取ることにしたの。」
「ふーん。いいなぁ。わたしなんか、明日からテストだよ。」
「・・・。」
人の気も知らないで・・・。学生は気楽でいいわよねぇ。わたしは、ふとんを頭から被った。
ピンポーン。
誰か来たようだ。おおかた、クリーニング屋の御用聞きか回覧板だろう。そんなことは、由香に任せておけばいい。わたしは、今日はふて寝するんだ。由香、頼むから、ねえさんを起こさないでよ。
ドタドタドタッ。
うるさいっ。由香、もうちょっと静かにしてよ。小学生みたいに、部屋の中を走り回らないで。
「ねえさんっ、大変よ。石本グループの社長秘書っていう、凄い綺麗な人が来てる。」
「なんですってっ。」
わたしはベッドからガバッと飛び起きた。
「その社長秘書が何しに来たのよっ。」
「迎えに来たって言ってた。ねえさん、なんか約束したの?」
「そんなことする訳ないじゃないっ。馬鹿じゃないの。」
「馬鹿とは何よ。心配して言ってるのに。」
「とにかく着替えるから、待って貰って。」
「うん。」
わたしは、あわてて洋服に首を突っ込み、髪を直した。なんであの社長の秘書に会うのに、こんなに焦らないといけないのよ。全く腹がたつことこのうえないわ。それでもきっかり5分後には、わたしは社長秘書の前に立っていた。
「お待たせしました。わたしが秋島美奈です。今日は何のご用かしら。」
「社長から、秋島さんを迎えに行くように命じられましたの。」
わたしは、彼女の全身を値踏みするように観察した。随分、失礼な所作だったと思う。彼女はそれでもにこやかな笑顔でわたしに言った。
「下に車を待たせてありますの。ご一緒に来ていただけます?」
少し首を傾げながら、ころころと鈴の鳴る様な声で私に言った。
由香の言っていたとおり、凄い美人だ。女のわたしでも触れてみたくなるようなサラサラのロングヘアがまぶしい。しなやかな髪の毛が風にそよぐ度に、芳しい香りが鼻をくすぐる。キラキラと輝く黒目がちの瞳は見ているとすいこまれそうだし、ピンク色の口唇はさくらんぼのような瑞々しい輝きをたたえていた。そして、悔しいけれど、プロポーションも抜群だった。胸元の大きく開いたフェミニンなワンピースから、その薄手の生地を通して匂い立つような女の色香が発散していた。くっきりとした胸の谷間は、彼女のように白磁のような肌があってこそ際立つのだ。木目の細かい白い肌は、適度に脂肪ののった優美なボディラインと見事にマッチしていた。
「判りました。」
わたしは彼女に見惚れてしまったのが恥ずかしく、顔が赤くなるのを感じた。彼女が、石本社長の愛人なのだろうか。こんなに美しい女性が社長秘書をしているのなら、わたしを愛人にする必要など全くない。美幸が言ったことをそのまま鵜呑みにして真に受けてしまったけれど、考えてみれば、あんな大会社の社長がわたしなんかを愛人にしようとするはずかない。わたしはパンプスを履きながら、そんなことを考えていた。
「会社に行く前に、美奈さんが今後、住まわれることになるお部屋にご案内します。」
「えっ・・・。」
「ご一緒に仕事をしていただける条件のひとつに、住居の提供があったと伺っております。」
「それは・・・。」
「先日完成したばかりのマンションの最上階の部屋をご用意しました。気に入っていただけるとうれしいですわ。」
階下で待っていたのは、運転手付きの黒塗りの高級車だった。そう言えば、支店長がこんな車に乗っていたなぁ。車は滑るように走り出した。
案内されたのは、都心の高級マンションだった。わたしが苦労して購入した・・・ローンもたっぷり残っている・・・マンションとは比べ物にならないくらい豪華な造りだ。大理石のホールを通って、吹き抜けのエレベーターで最上階の24階まで上り詰めると、そこは、ワンフロアー占有のペントハウスだった。
「これは・・・。」
眼下に街全体が一望できる。周囲にこの高層マンションを遮るものはなく、彼方には美しい瀬戸内海の島々まで眺望できた。これをわたしに・・・? 俄かには信じられない厚遇だ。
「ふう・・・。やはり素敵ね。」
案内してくれた彼女まで溜息をついた。
「そう言えば、まだ名前を伺っていなかったわ。」
わたしは彼女に言った。
「吉野玲子です。よろしく、課長。」
「課長?」
「あら。まだ、社長から聞いていないの? 美奈さんのポジションは、わたしの上司、つまり、秘書課長。課長の部下は男性も含め、全部で14人。課長職は、前任者が辞めて、空席になっていたの。結構、大変なポストよ。」
「前任者?」
「先月、エリート社員と結婚して辞めたわ。美奈さんはその後任。新しいプロジェクトも始まるし、前任者よりも大変かも・・・。」
わたしには判らないことばかりだ。
「これがこの部屋の鍵。」
「鍵?」
「そうよ。たった今から、課長の社宅というわけ。わたしとは待遇が全然違うのだから、厭になっちゃうわ。」
家具も家電製品も全部揃っていた。確かに、今からでもここで生活できる。
「じゃあ、会社に戻りましょうか。」
玲子は、わたしに促した。
「ちょっと待って。わたし、まだ、心の準備が・・・。」
「だ・め・よ。」
玲子はおどけた口調ながらも、きっぱりと私の希望を拒絶した。
30分後、わたしは石本社長の前にやや不貞腐れながら立っていた。
「よく来てくれたね。今日から、1か月は、玲子君から引継ぎを受けてくれ。まあ、彼女も前任者から引き継いだことを君にそのまま伝えるだけだから、判らないことも多いだろう。そのへんは適当でよいから、君の好きなようにしたまえ。新規プロジェクトについては、引継ぎの後でじっくり話そう。いいね。」
石本社長は上機嫌だった。わたしは返事をしなかった。
こうして、わたしの新しい生活は始まった。
最初にした仕事は、必要最低限のものをわたしの部屋から社宅のマンションへ運ぶことだった。石本社長に提供して貰った部屋の方がはるかに広くて豪華だった。荷物持ちにきた由香は、最初は何の相談もせず銀行を辞めたことについて非難していたが、この部屋に入るなり羨望の声に変わった。
「凄い。一体、どうしちゃったの。ねえさんなんかに、こんな部屋を提供してくれるなんて、その社長さん、よほど変わり者なのね。」
「ふん。ほっといてよ。由香、あなたこそ明日から、わたしの部屋でひとり暮らしする訳だけれど、男なんか連れ込まないでよ。わたしだって、そんなこと、していないんだからね。」
「えへへへ。おかあさんには、言いつけないでね。」
語るに落ちたとはこのことだ。わたしがいなくなることがはっきりしたとたん、ボーイフレンドに連絡したのに違いなかった。ああ、浩一郎君。あなたが生きていてくれたら・・・。
翌日から、新しい職場での仕事が始まった。驚いたことに、朝は、玲子があの運転手付きの黒塗りの車で迎えに来ると言う。そのまま社長宅に迎えに行くのだ。玲子が助手席、わたしが社長の隣だ。
「これだと、社長が来る前に仕事の準備ができないわ。」
わたしは、玲子に疑問をぶつけた。
「いいの。そんなことは、第2秘書以下の仕事なのよ。わたしたちは、純粋に社長のお世話やもっと重要な仕事をするの。」
「・・・。もっと重要な仕事?」
ふふふ、と玲子は笑って、はっきりとは答えてくれなかった。
玲子からの引継ぎ事項は、さすがに多種多様だった。社内のことや取引先のこと、VIPについては、顔と名前のほかに趣味や家族関係まで覚えなければならなかった。さらに、現在進行している新しいメディアチャンネルのプロジェクトの詳細までレクチャーを受けた。プロジェクトチームのメンバーとの顔合わせも時間の合間を縫って行われた。夜は夜で社長のご接待に玲子とともに付き合わされた。会う人物は、いずれも政財界のVIPばかりだったから、気が抜けなかった。こんな調子だったから、1か月くらいは、あっという間だった。不思議だったのは、玲子のことだ。こうしたご接待があった夜は、社長専用車で、まず、わたしを送ってくれる。その後、社長を送ってから、ようやく帰宅できるのだから、相当、遅い時間になる。そのうえに、朝は、わたしや社長を迎えに行くために、一番早く起きなければならない。いくら若いと言っても辛いはずだ。それを玲子に言うと、わたしが下っ端なのだから、課長は気にしないでくださいと言う。それに・・・、と玲子は言った。
「1か月の引継ぎが終わったら、わたし、1週間の休暇を貰えることになっているんです。」
「そうなの。」
わたしはそれをきいて、だから頑張っているんだ、と勝手に思い込んでしまった。
正直に言うと、わたしは現在の仕事に充実感を覚え始めていた。石本社長には、少し反抗的な態度をとったけれど、今では後悔していた。責任のある、しかも陽の当たる仕事。その報酬は十分すぎるほどのものだった。お給料は、それまでの2倍強。待遇も社長と行動を共にしているから、重役扱いだし、これ以上のものは望めない。今も、心地よい疲労感とともに風呂上りに冷えたトマトジュースを飲んでいるところだ。全自動のマッサージチェアに身を投げ出し、心地よい振動を全身に受けながら、目の前には、大型液晶プラズマテレビから今日のニュースが流れている。10人以上も配下に部下がいると、それなりの苦労や責任はあるけれど、仕事という意味では、それなりにおもしろく充実している。今までの銀行勤めとは、比べ物にならない。
そう言えば、玲子の引継ぎは明日までだった。明後日から一週間は、彼女なしで切り盛りしなければならない。彼女も若いのに凄いなぁ。そんなことを思いながら、いつの間にか眠っていた。
翌日。いつものように玲子が迎えに来た。明日からは、直接、わたしのところに車が来るのだろうか。確認しておかなければ・・・。
気のせいか、玲子が疲れているように見える。化粧もいつもより濃いようだ。どうしたのだろう。
「昨日、ほとんど眠っていないの。それで、少し疲れているように見えるのかな。」
玲子はそう言った。
1か月過ぎた現在では、さすがに新しい引継項目は少なくなっていた。今日も一日は流れるように速く過ぎて行った。夕方、玲子が紙袋を提げて、やって来た。
「課長に、わたしが休暇に入る前に、最後の重要な引継ぎをします。」
玲子はいつになく真剣な眼差しだった。玲子は社長室に入っていき、一番奥のプライベートルームに入った。そこは、仕事で夜遅くなった時、社長が泊まるための部屋だった。通常は使用していない。
玲子はわたしがその部屋に入ると、後ろ手で鍵を閉めた。
「どうしたの?」
わたしは訝しんで玲子に尋ねた。
「わたしが、この引継ぎを別の女性にすることになるとは思っていなかったわ。でも、相手が美奈さんじゃ仕方ないわね。」
「なんのこと?」
「美奈さんの前任者からわたしがこの引継ぎを受けたのが2年前。それ以来、わたしと彼女とはライバルだった。そして、やっと彼女がいなくなったと思ったら・・・。でも、いいわ。いまさら、この生活を手放す気にはなれないもの。これからが勝負よ。」
「一体、なんのことよ。」
「びっくりしないでね。」
玲子はワンピースのファスナーを引き下ろしたと思ったら、足元に脱ぎ捨てた。彼女は下着を着けていなかった。正確には、パンストだけを着けていた。彼女はそのパンストも脱いで、全裸になった。
彼女の裸身は、美しかった。見事なほど均整がとれた身体は、古代ローマの彫刻のようだった。彼女は紙袋を持って、わたしのところに歩み寄った。
「さあ、これをわたしに着けて。」
玲子は紙袋の中から取り出したものは、わたしが今まで見たこともないようなものだった。
「これは貞操帯よ。」
「貞操帯?」
初めて訊く言葉だった。
「気付いていると思ったわ。わたしが社長の愛人であることを・・・。最近は、いつもわたしの部屋に社長は泊まっていたの。彼は、わたしの部屋から出社していたのよ。毎朝、わたしが彼を起こして、朝食を一緒に食べて、あなたを迎えに行っていたの。いずれ、今の奥さんを追い出して、わたしが後釜に座ろうと思っていた訳。美奈さんが来るまでは、うまくいっていたのよ。もうちょっとだった。彼、今の奥さんとは冷え切っているし、子供もいないし・・・。」
わたしはごくっと唾を飲み込んだ。玲子が愛人だったなんて。それに貞操帯って、何だろう。
「彼は女のところに行く時には、もう一人の女、つまりわたしに、貞操帯を着けさせるの。そして、鍵をあなたに持たせる。そうすることで、あなたはその鍵を持っている間、わたしが社長とセックスできないという保障を得る。そういう仕組みよ。」
「な、なんなのっ、それっ。」
わたしは叫んだ。わたしが社長の女であるとでも言いたいの。
玲子はわたしの叫びを無視して、
「さあ、これをわたしに着けてっ。」
そう宣言して、貞操帯をわたしに突きつけた。
「あなたが社長と寝るかどうかは、わたしの知ったことではないわ。わたしはきちんとあなたに引継ぎをしたという事実が大切なの。ちゃんとこの貞操帯の鍵を社長に見せて欲しいのよ。これは、彼の言いつけをわたしが忠実に守ったという証となるわ。社長の申し出を断るのは、あなたの勝手よ。でも、わたしから見ると、あなたは馬鹿だわ。わたしは、この生活を今更、手放すことはできないもの。この件から美奈さんが降りてくれれば、わたしにとっては都合のよいことだけれど・・・。」
「判ったわ。鍵は社長に届けるわ。でも・・・、貞操帯はどうしたらいいのか、判らない。」
「いいわ。自分で着けるから。鍵だけは美奈さんが掛けてね。」
玲子は、白い棒状のものにローションを塗りつけた。よく見ると、それは男性器を模したものだった。太さは5センチほどもあり、長さも20センチはあった。それが金属製のT字帯に植え付けられている。この時になって、わたしにも、貞操帯がどのように使われるのかがようやく理解できてきた。玲子は中腰になり、両脚を大きく開き、その男性器を模したものを膣腔の中に挿入しようとしている。わたしは、この美しい玲子がこんな浅ましい姿をわたしに晒すのを見て、思わず目を背けた。あんな大きなものが入るのかしら。わたしは不安になった。
「うう・・・。」
玲子は少し苦しそうに呻き声を発っした。
「別に、悔しくなんかないわ。もし、あなたが社長に抱かれるのなら、その後は、交代でこうして貞操帯を着け合わなければならなくなるのよ。逃げ出すのなら、今のうちよ。」
そう言って、玲子は一気に根元まで挿入した。その結果、金属のT字帯の縦の部分が股間に蓋をするようになって、横の部分がベルトとなった。お尻の割れ目には細いピアノ線のようなワイヤーが這っている。
「これは1ミリでも狂うと擦れて肌を傷つけるから、そうならないように、細心の注意を持って、わたしの身体に合わせて精巧に作られているの。金属の部分が当たって痛くないように裏にコーティングもしてあるのよ。随分と高価なものらしいわ。あなたのが必要になったら、わたしが採寸してあげるからね。さあ、この臍の下にあるバックルをパチンと嵌めて、鍵を掛けて。」
わたしは夢中で鍵を掛けた。
「その鍵を社長に見せに行かなければならないの。」
「えっ? わたしが?」
「そうよ。最初だから、わたしも一緒に行ってあげる。」
わたしは鍵をぎゅっと握り締めた。もう逃げ出したかった。玲子は手際よく、パンストとワンピースを身に着け、ハイヒールを履いた。
「なぜ、こんなことをするの。」
「さあね、社長の趣味かしら。随分、悪趣味だと思うわ。でも、この貞操帯のせいで、わたしは、どうあがいても浮気できない。しかも、せっかくの休暇だというのに、金属探知機が怖くて、飛行機にも乗れない。自分の部屋でおとなしくしているほかないし、悔しいけれど、これって、社長の思う壷よね。さあ、社長に報告に行きましょう。」
わたしは玲子に引き摺られるように、社長の許に連れて行かれた。悪寒で全身に鳥肌がたった。
「社長、明日から休暇をいただきます。」
玲子とわたしは、社長の前に並んで立っている。社長は執務机に向かい、書類に目を通していたが、玲子の声に顔を上げた。
「おお、そうだった。明日から1週間、休暇だったね。」
「はい。それで、美奈さんに最後の引継ぎをしてきたところです。」
わたしは、「最後の引継ぎ」と平然と言ってのける玲子の顔を、思わず見てしまった。
「そうか。それじゃあ、スカートを捲り上げて見せてみたまえ。」
なんですってっ!!! わたしは社長の言葉に我が耳を疑った。
しかし、玲子は動揺する様子もなく、平然とワンピースの裾を腰の上まで捲り上げ、臍から下を社長の目に晒した。貞操帯のシルバーの金属光が薄いパンストを通して、わたしの目を射抜いた。丸見えとなった玲子のすんなりした両脚や貞操帯からはみ出した陰毛が、非現実的な光景のように思えた。ここは、社長室なのだ。ドアを開けて一歩踏み出せば、たくさんの社員が忙しく働いている。わたしは咽喉がからからになり、身動きすることすらできなくなっていた。
「それで、鍵は?」
「・・・。」
わたしは、ぎくしゃくとした動きで、鍵を持った手を突き出し、社長に見せた。
「ふむ。判った。それでは、あしたの晩から、秋島君の部屋に泊まることにする。いいね?」
「・・・。」
わたしは返事ができなかった。
「どうした。引継ぎはできたのではなかったのかね。」
社長は苛立ったように言った。
玲子は、冷たい微笑をたたえ、わたしの横顔を見ている。玲子に気後れして、そして、その場の異常な雰囲気に飲まれて、わたしは小さな声で返事をした。
「はい・・・。」
「ううん?」
「・・・はい。承知しました。」
わたしは思わず屈服の答えをしてしまった。玲子が「ふーん」と言う顔をしてわたしを見た。わたしは、このままだと玲子に負けたような気がして、そう答えてしまったのだ。そして、そう答えたことを、たちまち、後悔していた。社長は上機嫌で、
「それでは、二人とも今日はもう終わっていいよ。玲子君、ごくろうさま。明日から、1週間、ゆっくり休んでくれたまえ。」
と言って、もうわたしたちには興味を失ったかのように、書類に向かった。
「失礼します。」
社長に声を掛け、玲子とわたしは社長室から退出した。ドアを閉めたとたん、わたしはおこりにかかったように全身が小刻みに震えだした。
「ふふふ。美奈さんもやるわね。そうなの。そうだったの。あなたも所詮、わたしと同じだったと言うことね。それなら、もう遠慮はしないわ。これからは、ライバルよ。」
玲子はわたしにそう言い残して、立ち去った。
(続く)
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でも貞操帯の使い方よくご存知ですね。
正直、20センチのアレもあるのは知りませんでした。
しかも女性のあそこに入れるなんて、それで一週間過ごすのは苦しそうですね…(汗)
お風呂もそのままなのかな…
でもこれで美奈の身に起こることは多少想像がつきそうですね。
問題はどこまで、ですね。
面白いです!!