場所前に発覚した野球賭博問題と暴力団の脅迫に屈した大関:琴光喜。
野球賭博問題は協会を揺るがす大事件として世間の関心を集めた。
愛知県出身の大関:琴光喜の解雇に名古屋場所を楽しみにしていた、
多くの地元愛知県の相撲ファンは大きな溜息をついた。
大相撲名古屋場所6日目(2010年7月16日)。
出張を兼ねて愛知県体育館に初めて足を運んだ。
・写真最上段:午後5時30分頃の客席で空席が目立つ。
~6日目は愛知県体育館の定員8100人の6割程度の入場だった。
*入場者数合計:94900人、満員御礼4回
初日:7200→4500→4500→4900→4900
6日目:5100→7600→7800→7200→5800
11日目:6000→6400→7200→7800→8000
・写真2段目左から優勝旗、番付表、当日券のチケット案内。
~名古屋場所は優勝旗と賞状のみを授与。
~番付表は名古屋城のお堀を通って直に設置。
~6日目の当日券は全席余り券があった。
*入場券の価格(一人)タマリ席:14300円
マス席:11200円、10200円、9200円、7200円
イス席: 4100円、 3200円、2800円
・写真3段目は左から懸賞金、横綱の土俵入り。
~懸賞金は6日目は11本(内マクドナルドが5本)。
懸賞金は前年の約4分の1となりマックの姿勢が際立った。
*懸賞金:15日間合計242本(1本6万円)
~大横綱に雲竜型が多い土俵入りの中で横綱白鵬は不知火型。
・写真下段は電光掲示板、力士の入場、力士を待つファン。
~6日目時点での電光掲示板での休場力士は総て謹慎力士(日本人のみ)。
*謹慎者6名:豪栄道、豊ノ島、雅山、豊響、若荒雄、隠岐の海
~東方力士が館内へ入場(土俵入り)する入口は多くのファンが待っていた。
力士と行司は違った所からの入場で間近に力士を見ることができる。
~稽古場から力士・親方が体育館に到着する入場口を見入るファン達。
お気に入りの力士をカメラでおさめる風景が見える。
写真左
番付と共にお堀近くに立っていた『蒙御免(ごめんこうむる)』の立て看板。
“御免蒙る”には本来「許しを得る」と「断る」の2種類の意味がある。
大相撲の『蒙御免』は<(江戸)幕府の許しを得ている>の意味とされる。
写真右
『暴力団関係者の入場はお断りします。』
の立て看板は説明不要で館内放送でも盛んに“この語”が連呼された。
異常事態と表現すべき異例続きの大相撲名古屋場所が終わった。
結果として横綱:白鵬関が3場所連続全勝優勝と47連勝の偉業を達成。
1場所15日制(昭和24年夏)が定着しての3場所連続全勝優勝は史上初。
47連勝は昭和の大横綱:大鵬を超える単独3位の快挙。
相撲界にとって何よりも大きなニュースになるべき殊勲を挙げた。
千秋楽結びの一番は大関:把瑠都関との一番。
手に汗握る力相撲も(ためのある)豪快な上手投げで快勝。
混迷の場所を制した白鵬関の殊勲は永遠に相撲史に刻まれるだろう。
表彰式で優勝旗の授与の際に流した涙は安堵の涙か悔し涙か?
~白鵬関は場所前から天皇賜杯の授与にこだわっていた。
「場所前は休場すら考えた」と述べる一人横綱の重責。
結びの一番の前に館内を包んだ“大白鵬コール”。
ファンは総てを理解した上で白鵬関に声援を贈る。
日本人の粋(いき)を感じる名場面だった。
降って湧いたような野球賭博問題で紛糾した名古屋場所。
一連の不祥事に堪忍袋の尾を切った多くの相撲ファン達。
近年頻繁に表面化した数ある不祥事の中でも、
今回の暴力団を介しての賭博の常習は重い。
その結果日本相撲協会は多くの代償を払わされた。
特に大きかったのはNHKが下した英断。
もしNHKが通常通りの放送枠を実施していれば、
相撲協会を揺るがした暴力団絡みの異常事態を、
日々の暮らしの中でファンの脳裏から消え去っただろう。
大相撲中継が放送されなかった事実は、
暴力団との関係を払拭すべき反省を相撲協会に促した。
そんな名古屋場所を自分の目で確認したいと思った。
そして名古屋場所に事実足を踏み入れ、
多くのファンの言葉を聞き(私の)考えが揺らんだ。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/d/20100717
写真:稽古場から力士が体育館に到着する入場口で出会った女性の言葉。
「琴光喜は暴力団にお金を脅し取られた被害者なのに何故辞めさすの?
博打なんて誰でもしてるし琴光喜だけが何故辞めさせなけりゃいけないの。」
写真:東方力士が土俵入りに向かう入り口で聞いた男性ファンの言葉。
「親方衆はみんな苦労してるよ。
頭は低いし若い力士はマメにメールをくれるし。
谷町(タニマチ)と言われるけど一人一人は喜んで力士を応援している。
好きな女性にプレゼントを贈るように贔屓の力士に贈り物をする。
名古屋に来れば稽古見学やチャンコを力士と一緒につまむ。
それが楽しみでファンになるんで一般入場者とは違う応援をしている。
そのことも分からずに“ごっあんです”がダメと言う連中は何も解っちゃいない。」
その話を地元(石川県)に帰って色んな知人に聞いてみた。
そうすると意外な思い(考え)を持っている人が多いことを知る。
「暴力団と言うけれど色々な種類があって興行は総て暴力団が仕切っていた。
相撲は神事と言うがお祭りの屋台を出す的屋(てきや)も暴力団のひとつ。
神社のお祭りは的屋(露天商等)なしには成立しないことを考えれば、
神事と暴力団の結びつきは日常的に行われている。」
この話が本当かどうかは判らないが、
地元で的屋家業をしている人達は広域指定暴力団に所属していたような?
この世界のことは詳しくないが暴力団の範疇をどこに設定するのか?
「谷町(タニマチ)と言われるけど一人一人は喜んで力士を応援している。
好きな女性にプレゼントを贈るように贔屓の力士に贈り物をする。
名古屋に来れば稽古見学やチャンコを力士と一緒につまむ。」
の純粋な相撲ファンの中に暴力団に所属している人がいても不自然はない。
「マスコミは暴力団と相撲協会の関係が総て悪いことのように言っているが、
ならば暴力団員が子供の親としてPTAの総会に出て会食したらダメなのか?
もしそうなら罪のない暴力団の子供が可哀想ではないか。」
実はこの話について知り合いの的屋家業の息子に聞いたことがあるが、
まず的屋(本人はヤクザ家業と言う)の親は学校に行かないとのことだ。
理由は教職員に迷惑をかけたくないからで、
的屋家業の人は自分の立場を知っている。
*一例の紹介であり、すべてに当て嵌まる訳ではない。
私は文書で暴力団を擁護しているわけではない。
違法薬物、法外な金利、賭博等の違法行為で収入を得る団体は、
法的手続きの下で罰せられるべきだろう。
しかし、
暴力団関係者と過去に“違法行為のない親交”を持ったとされる、
力士や親方衆を糾弾することが正しいかに疑問が生じる。
賭博行為は違法行為である。
ただし暴力団関係者と違法行為のない接点を持つことに問題はあるのか?
相撲に限らず芸能やプロ・スポーツに係わる人達(著名人)との交友。
過去に暴力団関係者との接点で紅白出場を辞退した演歌歌手や、
麻雀賭博で書類送検されたことがあるプロ野球選手。
さらに暴力団との交際を認めたプロゴルファー選手もおり、
過去の例を挙げれば枚挙に暇はない。
有名人と会いたい気持ちは庶民も暴力団関係者も同じなのだろう。
その中で相撲関係者が“偶発的”に暴力団関係者と交友を持つこと。
~暴力団関係者との間に利害関係を持つことは決して許されないが…。
過去・現在に渡るすべてを問題とし責任追及をすることの無益と野暮。
マスメディアも自制が必要なのではないかと感じる声も多い。
何が悪で何が正しいのか?
そこに違法行為が存在するのか違法行為は存在しないのか?
(いつの世も)重箱の隅を突く過剰報道が繰り返されないことを願う。
最後に横綱:白鵬関の殊勲。
重責を担い困難な場所を乗り切った大横綱への温かいファンのコール。
メディアに振り回されることなく自分達の意思で声援した相撲ファンの行為。
日本人もまだまだ捨てたものではない。
千秋楽ダイジェストをテレビ観戦しながらそんな事を感じた。
白鵬関の優勝インタビュー。
「この国の横綱として、力士の代表として、天皇賜杯だけは頂きたかった。
こんな(異例の)場所は二度とないと思うので前向きにプラスと考え、
こういう場所を経験したことで(皆が)心機一転して頑張りたいと思う。」
“横綱の品格”
頼もしい横綱に大相撲の未来は託されている。