日本陸上競技選手権大会(第94回)を今年も楽しんだ。
陸上競技レースは“どうしても”記録に注目が行くが、
勝負の駆け引きや戦う前の選手の表情、
それぞれの競技にあった肢体美(環境適応する身体づくり)。
競技結果以外に学ぶべきもの観るべきものは沢山ある。
表情と気迫はやり投げでの村上幸史選手の最終投擲(とうてき)。
前の選手の投擲が終わり優勝が決まったことでリラックスしたのか、
最終投擲は見るからに全力を振り絞っての気迫満点の一投。
結果は日本選手権では史上初めての80m超。
今大会のベストパフォーマンスだと感じた。
~選手権史上初は誤りで80m60は歴代2位の記録でした(申し訳ありません)。
1位は1989年に溝口和洋さんの81m70で日本記録も溝口氏の87m60。
注目の“福島 vs 高橋”のライバル対決。
100mでは福島千里選手の勝利。
200mでは高橋萌木子選手の勝利。
特に200mでの0.01秒差での逆転勝利は感動に鳥肌。
200mでのTimeは決して褒められる記録(23秒56)ではないけれど、
トラックの状態や気象条件(雨、風、湿度、温度)。
選手の体調やモチベーション(年度の目標)など、
数字が出ない大会は“どの競技も平凡な記録”に終わることが多い。
~オリンピック年の選考レースは全体の記録が高くなる傾向にある。
特に、
大会3日目(最終日)の今日は予想通りの風に悩まされる選手が続出。
風が旋回している状態が競技毎に目に付いた(特に女子100mH決勝レース)。
福島選手の緊張は大きな大会での自分への過度な期待と注目。
特に200mのレース前の表情は冴えず怯えているようにも見えた。
~100mのレース前の表情との比較(風の強さに記録への諦め?)
逆に高橋選手の目の輝きは100m決勝と同様で、
今大会に賭ける気持ちの充実が見て取れてた。
~カメラもそれを感じてか高橋選手の表情を追う時間が多かった。
3年ぶり?の福島選手への勝利は高橋選手の自信につながるだろうし、
福島選手も高橋選手に敗れたことで自分を見つめ直す機会になるだろう。
~調べてみると1年8ヶ月ぶりで直接対決は福島選手の10連勝だった。
注目されることで“つぶれていく選手(アスリート)”も過去に多くいた。
代表的な例として競泳の金メダリスト、
岩崎恭子選手への周囲の大騒ぎと期待は気の毒なほどだった。
~過度なマスコミの反応でつぶされる競技大会やアスリートも過去に多く存在。
選手の実力を見極め過大評価せずに冷静な判断での情報伝達が望まれる。
また、
若くて美人な選手には競技とは違った“好奇な目”が集中することもあり、
大衆に注目されることで心無いファンも増加する。
ただし、
一流のアスリートは“注目されることをバネする精神力”も要求され、
特に男女フィギュア・スケート選手への好奇と期待の重圧は凄まじい。
期待されることを楽しむ。
福島選手の次の課題は精神の安定。
その安定剤としての高橋選手の存在。
高橋選手の今日の勝利は見事だったし、
活躍することで高橋選手への期待も膨らむ。
一人で悩まなくて良い事がライバルの効能。
そんな風にプレッシャーを跳ね返して欲しい。
男子ハンマー投げの室伏広治選手は16連覇を達成。
父の鉄人:室伏重信さんの通産12回を越える大記録は、
後を追う選手との差も感じ20連覇も夢ではない。
前人未到・空前絶後の大記録への挑戦は真の超人。
今年は昨年よりも距離が伸びており2年後に向けて調整中の感じがする。
室伏選手を見ていると努力だけでは越えられない血統を感じさせる。
血統と努力の真髄。
それは、
幼児教育(天才教育)なのか自覚の強さなのか、
血統が持つ自負なのか純粋な血筋なのか?
理由の探索は興味深いが何よりも継続する強い精神力。
トップを走る人間の強さを知る上で欠かせないアスリートである。
20連覇したら国民栄誉賞も当然。
それだけの偉業への挑戦は今後も継続される。
~調べてみると妹の由佳選手もハンマー&円盤で日本選手権通算16度の優勝。
恐るべき兄妹の活躍に血統(遺伝子)の不思議を感じさせます。
走り幅跳びの、
桝見咲智子選手は足の怪我が不運ではあるが、
井村(旧姓・池田)久美子選手は悪戯な風の中での、
6m31は復調の兆しが感じられ涙の優勝を勝ち取った。
驚いたのは丹野麻美選手が結婚されて、
千葉麻美に名前が変わったこと。
“おめでとうございます。”
でも、
今回の千葉選手の<目の力>に従来の緊張感が感じられず、
記録も順位も不満が残る結果に終わった。
井村選手同様に結婚生活とアスリート競技人生の両立の難しさ。
国内実績のある有力な女子選手が競技生活を継続する上で、
モチベーションを保てる環境づくり(生活の保障&練習時間の確保)は、
今後のすべてのスポーツ競技界の課題だ。
男子100m決勝:江里口匡史選手の圧勝の2連覇。
男子200m優勝の藤光謙司選手同様に、
各競技で“若い力の台頭”も目に付いた。
ただし、
塚原直貴選手や高平慎士選手のベテラン勢は、
オリンピックへの調整期間としての活動とも見え、
このままでは終わらない予感がする。
~何と言っても朝原宣治さんの例もあるから…。
年に一度のお楽しみが今年も終わった。
今年はワールドカップの年。
4年に1度の“サッカーファン”になるのかならないのか?
でも始まって周囲が騒ぎ出すと燃えるんだよね!
人間の性やね(笑)。
<関連記事>
*第94回『日本陸上選手権(2010年)』:NHK総合&BS放送予定。
→ http://blog.goo.ne.jp/mimifuku_act08/e/ef717ba6dd857f80c36840bd7964535e
第94回:日本陸上競技選手権大会
兼・第16回アジア競技大会(広州)代表選手選考会
香川県立丸亀競技場
【大会結果:優勝者と記録】
*男子トラック
・男子 100m:江里口 匡史(10秒26/2連覇)
・男子 200m:藤光 謙司 (20秒38/初優勝)
・男子 400m:金丸 祐三(45秒56/6連覇)
・男子 800m:横田 真人(1分47秒25/2連覇4度目)
・男子1500m:村上 康則(3分45秒76/初優勝)
・男子5000m:松岡 佑起(13分40秒11/初優勝)
・男子10000m:竹澤 健介(28分43秒08/初優勝)
・男子110mH:田野中 輔(13秒58/2連覇3度目)
・男子400mH:成迫 健児 (49秒01/2連覇3度目)
・男子3千m障害:武田 毅 (8分47秒61/初優勝)
*女子トラック
・女子 100m:福島 千里(11秒30/2年ぶり2度目)
・女子 200m:橋 萌木子(23秒56/初優勝)
・女子 400m:田中 千智(54秒46/初優勝)
・女子 800m:岸川 朱里(2分05秒22/初優勝)
・女子1500m:吉川 美香(4分18秒68/5連覇)
・女子5000m:福士 加代子(15分29秒80/3年ぶり6度目)
・女子10000m:福士 加代子(31分47秒56/3年ぶり7度目)
・女子100mH:寺田 明日香(13秒32/3連覇)
・女子400mH:久保倉 里美(55秒83/4連覇)
・女子3千m障害:早狩 実紀(9分56秒25/5連覇)
*男子フィールド
・男子走り高跳び:高張 広海(2m21/初優勝)
・男子棒高跳び :鈴木 崇文(5m50/初優勝)
・男子走り幅跳び:菅井 洋平(8m10/2年ぶり2度目)
・男子三段跳び :鈴木 義啓(16m17/初優勝)
・男子砲丸投げ :畑瀬 聡(17m96/3年ぶり5度目)
・男子円盤投げ :畑山 茂雄(58m90/3年ぶり10度目)
・男子ハンマー投げ :室伏 広治(77m35/11連覇)
・男子やり投げ :村上 幸史(80m60/16連覇)
*女子フィールド
・女子走り高跳び:藤沢 潔香(1m77/初優勝)
・女子棒高跳び :我孫子 智美(4m25/2年ぶり2度目)
・女子走り幅跳び:井村 久美子(6m31/3年ぶり5度目)
・女子三段跳び :吉田 文代(13m24/6連覇・7度目)
・女子砲丸投げ :豊永 陽子(15m79/2年ぶり8度目)
・女子円盤投げ :室伏 由佳(53m64/9連覇・11度目)
・女子ハンマー投げ :室伏 由佳(63m50/3連覇・5度目)
・女子やり投げ :海老原 有希(59m01/3連覇・4度目)
<参考資料>
【日本記録一覧:2010年5月現在】
*男子トラック
・男子 100m:伊藤 浩二(10秒00/1998年)
・男子 200m:末次 慎吾 (20秒03/2003年)
・男子 400m:高野 進(44秒78/1991年)
・男子 800m:横田 真人(1分46秒16/2009年)
・男子1500m:小林 史和(3分37秒42/2004年)
・男子5000m:松宮 隆行(13分13秒20/2007年)
・男子10000m:高岡 寿成(27分35秒09/2001年)
・男子110mH:谷川 聡(13秒39/2004年)
・男子400mH:為末 大 (47秒89/2001年)
・男子3千m障害:岩水 嘉孝(8分18秒93/2003年)
*女子トラック
・女子 100m:福島 千里(11秒21/2010年)
・女子 200m:福島 千里(22秒89/2010年)
・女子 400m:丹野 麻美(51秒75/2008年)
・女子 800m:杉森 美保(2分00秒45/2005年)
・女子1500m:小林 祐梨子(4分07秒86/2006年)
・女子5000m:福士 加代子(14分53秒22/2005年)
・女子10000m:渋井 陽子(30分48秒89/2002年)
・女子100mH:金沢 イボンヌ(13秒00/2000年)
・女子400mH:久保倉 里美(55秒46/2008年)
・女子3千m障害:早狩 実紀(9分33秒93/2008年)
*男子フィールド
・男子走り高跳び:醍醐 直幸(2m33/2006年)
・男子棒高跳び :澤野 大地(5m83/2005年)
・男子走り幅跳び:森長 正樹 (8m25/1992年)
・男子三段跳び :山下 訓史 (17m15/1986年)
・男子砲丸投げ :山田 壮太郎(18m64/2009年)
・男子円盤投げ :川崎 清貴(60m22/1979年)
・男子ハンマー投げ :室伏 広治(84m86/2003年)
・男子やり投げ :溝口 和洋(87m60/1989年)
*女子フィールド
・女子走り高跳び:今井 美希(1m96/2001年)
・女子棒高跳び :錦織 育子(4m36/2006年)
・女子走り幅跳び:池田 久美子(6m86/2006年)
・女子三段跳び :花岡 麻帆(14m04/1999年)
・女子砲丸投げ :森 千夏 (18m22/2004年)
・女子円盤投げ :室伏 由佳(58m62/2007年)
・女子ハンマー投げ :室伏 由佳(67m77/2004年)
・女子やり投げ :三宅 貴子(61m15/2001年)
【世界記録一覧:2010年5月現在】
*男子トラック
・男子 100m:ウサイン・ボルト( 9秒58/2009年)
・男子 200m:ウサイン・ボルト(19秒19/2009年)
・男子 400m:マイケル・ジョンソン(43秒18/1999年)
・男子 800m:ウィルソン・キプケテル(1分41秒11/1997年)
・男子1500m:ヒシャム・エルゲルージ(3分26秒00/1998年)
・男子5000m:ケネニサ・ベケレ(12分37秒35/2004年)
・男子10000m:ケネニサ・ベケレ(26分17秒53/2005年)
・男子110mH:デイロン・ロブレス(12秒87/2008年)
・男子400mH:ケビン・ヤング(46秒78/1992年)
・男子3千m障害:サイフ・サイード・シャヒーン(7分53秒63/2004年)
*女子トラック
・女子 100m:フローレンス・ジョイナー(10秒49/1988年)
・女子 200m:フローレンス・ジョイナー(21秒34/1988年)
・女子 400m:マリタ・コッホ(47秒60/1985年)
・女子 800m:ヤルミラ・クラトフビロバ(1分53秒28/1983年)
・女子1500m:曲雲霞(3分50秒46/1993年)
・女子5000m:ティルネシュ・ディババ(14分11秒15/2008年)
・女子10000m:王軍霞(29分31秒78/1993年)
・女子100mH:ヨルダンカ・ドンコワ(12秒21/1988年)
・女子400mH:ユリア・ペチョンキナ(52秒34/2003年)
・女子3千m障害:グルナラ・サミトワガルキナ(8分58秒81/2008年)
*男子フィールド
・男子走り高跳び:ハビエル・ソトマヨル(2m45/1993年)
・男子棒高跳び :セルゲイ・ブブカ(6m14/1994年)
・男子走り幅跳び:マイク・パウエル(8m95/1991年)
・男子三段跳び :ジョナサン・エドワーズ(17m15/1995年)
・男子砲丸投げ :ランディー・バーンズ (23m12/1990年)
・男子円盤投げ :ユルゲン・シュルト(74m08/1986年)
・男子ハンマー投げ :ユーリ・セディフ(86m74/1986年)
・男子やり投げ :ヤン・ゼレズニー(98m48/1996年)
*女子フィールド
・女子走り高跳び:ステフカ・コスタディノヴァ(2m09/1987年)
・女子棒高跳び :エレーナ・イシンバエワ(5m06/2009年)
・女子走り幅跳び:ガリナ・チスチャコワ(7m52/1988年)
・女子三段跳び :イネッサ・クラベッツ(15m50/1995年)
・女子砲丸投げ :ナタリア・リソフスカヤ(22m63/1987年)
・女子円盤投げ :ガブリエレ・ラインシュ(76m80/1988年)
・女子ハンマー投げ :アニタ・ヴォダルチク(77m96/2009年)
・女子やり投げ :バルボラ・シュポタコバ(72m28/2008年)