メカニック日記

メカニックです。仕事ネタから感じた事思った事など気まぐれに更新していきます…

トレーラーABS…続き

2015-12-22 23:29:24 | トレーラー
作業場所待ちだったABSチェックランプが点灯していたセミトレーラー…

本日、ようやく作業の続きを…

作業というよりまだ原因が分かってないのでトラブルシュートの続きなんですが…


前回の時に自己診断にてトラブルコード4(右側ホイールセンサー系)を表示しており断線やショートまでは点検しており共に正常だったので…

次は車両をジャッキアップして右ホイールセンサーの出力電圧を点検…

テスターを接続して

タイヤを回してみると…


だいたいですが、1回転/2秒位の早さで回した時に100mV以上あれば正常なので…

アレ⁉︎…普通に出てる…⁇

と、よくよく確認すると勘違いに気付きました…

というのも…トレーラーのABSはVCS-IIに限らず、2センサータイプと4センサータイプの2種類があってその2センサーと4センサーでは同じ故障コードでも故障箇所が違う事があるんです…


で、一般的にセミトレーラーには2センサーが…フルトレーラーに4センサータイプが主流なんですが…今回の車両はセミトレーラーなのに4センサータイプでした…
2センサータイプでの故障コード4は右ホイールセンサー系なのが、4センサータイプでは左側センサー…となります。

早速左側のセンサーを調べ直すと…
断線、ショートも無く抵抗値も基準値内…
センサー出力を見ると…
そこそこの早さで回しても…

コレは明らかにおかしいですね…

電圧が上がらない場合の原因は、センサーとパルスリングのギャップ不良がほとんどです…

バックプレートの裏からセンサーを押し出そうとするも…固着していて動きません

素直にバラす事に…

BPWのハブキャップは固くて大変…という話をよく聞きますが…
このように足を乗せて…


荷重というか体重…をかけながらこの辺りをハンマーなどで軽く衝撃を与えてやります…


すると簡単に緩んできます。

経験上コレで緩まなかった事はありません…

インパクトなどを使うとハブキャップが変形しちゃう事があるのであまりオススメはしません…


サークリップピンを外してアクスルナットを緩めていきます…





問題のホイールセンサー…


奥まで引っ込んでます…コレではギャップ過大ですね…

それに…



ブレーキダストが酷いですね…


実は今回の車両は某ディーラーで2週間前に車検を受けています…
で、お客様は車検に出した後、ABSのランプが点く…という事でディーラーに持って行ったらしいのですが…ディーラーが『ウチではトレーラーのABSは修理出来ません…』と言われ、当工場に依頼が来たんです。

…車検の時にドラム内のブレーキダストを掃除してないみたいです…
見れば分かります…

ちゃんと掃除すると…

こうなります…

更に問題発覚…

トレーラーに限らずトラックでもそうなんですが、基本的には車検時にドラムを外した時にホイールセンサーのギャップを調整すると思うんですが…
どうやら…センサーの固着を直そうと思ったのかセンサーの頭を叩いた形跡が…



頭が潰れちゃってます…

当然…固着も直さず潰れたまま組んでいるのでギャップ過大になり、チェックランプが点灯。

原因は車検作業をしたメカニックのミス…ですね

チェックランプが点いたまま車検を通したディーラーさんもどうかと思いますが…


それは別として、実はこのセンサーの固着はよくある事なんです…
正常な場合であれば手で戻せるぐらいの固さです…
固いから…といってセンサーの頭を叩くのは得策ではありません…
固着が酷い場合はセンサーのブラケットごと外してプレスにて押し出します。

押し出し後…

後は固着防止の為耐熱グリスを薄く塗っておけば安心です…

今回はセンサーが若干潰れているものの、壊れてる訳ではないので軽く修正して再使用します。


後はハブを組んでいきます…
BPW専用のグリスを薄く塗り…


ドラムを組んで…

アクスルナットを150Nmで締め付けます…

1回規定トルクで締めた後、タイヤを回して馴染ませてもう一度規定トルクで締めます。

そうするとアクスルナットとピン穴の位置関係がこちら…


注意しなきゃいけないのは、この時ピンの穴が一致していても必ず緩めて初めに一致した穴で合わせる事…
最大で15度戻せば必ずどこかの穴が合うように設計されてます…


サークリップピンも必ず4箇所の山にちゃんとかかるように付けて、少しでも抜けにくくする為リングの折り曲げてある方にピンをもってきます…


後はハブキャップを800Nmで締め付け…


ちゃんと電圧が正常に出るか確認します…


良さそうですね。

最後にトラクターヘッドを連結して試運転してチェックランプが消灯する事を確認して完了。


今回は特に部品は交換せずに済みましたが…
車検作業をした某ディーラーのメカニックはセンサーを叩いて潰した事は自分でも分かってるはずです。
ミスは誰でもある事なのでセンサーを叩いて潰してしまった事に対してとやかく言うつもりはありませんが、そのまま放置した事は良くないですね…

ちゃんと整備しておけば今回のようなトラブルは防げますから…














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