千葉県の戦争遺跡

千葉県内の旧陸海軍の軍事施設など戦争に関わる遺跡の紹介
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柏陸軍飛行場跡周辺の掩体壕

2009-10-23 | 柏市の戦争遺跡


柏陸軍飛行場周辺に掩体壕があるとの話は、前からあった。しかし、それは長い間確認されていなかった。戦後60年以上たち、柏に展開していた陸軍の各飛行戦隊など飛行場関連の軍人たちは、次々と鬼籍に入り、飛行場が戦後米軍に接収されて、返還後も飛行場跡地が開発されていくなかで、飛行場の関連施設遺構にかんする記憶も風化してしまった。

どういうわけか、旧柏ゴルフ倶楽部敷地内に掩体壕跡と伝えられる箇所があり、それはこんぶくろ池の公園予定地内である。現在、柏市が管理しており、立入りが禁止されている。

國學院大學の上山教授を代表とする「手賀の湖と台地の歴史を考える会」では、柏市の許可を得て、その場所を含めて巡見を行った。掩体壕といわれる、その位置を地図上に特定する、また周辺を調べてみる、終戦後1,2年の航空写真と見比べて、その場所が航空写真でどうなっているかを調べるなどの活動を後日行った。

その後、航空写真でもうつっている税関研修所の東側の道が、柏陸軍飛行場の東誘導路といわれる道であることが分かり、その道路沿いに3基、さらに国道16号線を越えた香取神社近くに3基の掩体壕があることが踏査・実見によって判明した。

それらは、別に新たに「発見」されたものではなく、従前は野馬土手と思われていたのである。それが、航空写真に写っている掩体壕と場所が一致すること、また形状が印旛陸軍飛行場の掩体壕や茨城県小美玉市の百里原海軍飛行場とも似通っていることから、野馬土手ではなく掩体壕であることが分かったのである。
但し、一番初めに同会が調査した旧柏ゴルフ倶楽部敷地内の掩体壕跡と伝えられるものが、結局何であったかは判明していない。


<柏陸軍飛行場の略図>


旧柏ゴルフ倶楽部敷地内の掩体壕跡といわれるものは、東側の土手は高さもあり、掩体壕の一部と考えておかしくないが、南西側は崩れた形で、高さも1.5mほどと低い。

東側の土手も、北のぼさ藪になっている部分で切れており、直下は平坦地、さらに一段低くなる。南西側の土盛の傍、土盛で囲まれた平坦地に、大木があり、太平洋戦争中にはすでに当地に生えていた模様。

これらの土手などを柏市に所蔵されている記録では、掩体壕跡としている。

ただ、箱形の掩体壕としても、三方の土手ではなく、二方のみであるのは、不自然で、掩体壕ではなく、別の構築物であったと思われる。仮に掩体壕であったとすれば、未完成であったか、一方が破壊されたと考えられる。


<旧柏ゴルフ倶楽部敷地内の伝・掩体壕跡の東側土手>


同会は、自然保護団体の案内で周辺を探索し、柏市正連寺の国道16号線の西側にあって、こんぶくろ池に近い資材置場横の藪化している場所で、馬蹄形の掩体壕跡が確認できた。

形は五角形の一辺がない形であり、土手はかなり高く、高い部分では3mほどありそうであった。東側は藪がすごく、見通しが利かず、土手の距離を図るのもレーザー距離計などでは歯がたたず、巻尺で測るしかないように思われた。西側の土手の上にのぼり、向こうをみると、土手が城の土塁のように切り立っていることが分かった。

後日、その場所を1947年(昭和22年)の米軍撮影の航空写真等で確認すると、確かに該当する掩体壕があり、その前の道が誘導路であることも分かった。さらに自然保護団体の話や会員の実見により、税関研修所脇の庭球場近くの山林に一つあることが分かった。

瓢箪から駒のような話で、伝聞から掩体壕跡といわれる土手を調べたあとで、こちらももしかしたら掩体壕かもしれないとしてまわった後のほうが、正真正銘の掩体壕であり、その場所を昔の航空写真と照合したところ、米軍が1947年に撮影した航空写真にうつっている掩体壕と一致し、芋づる式に誘導路沿いの別の掩体壕も見つかって行ったのである。

同会は前述のこんぶくろ池近くの資材置場横のものとあわせて、踏査したところ、両者の中間の位置に、半壊しているが、土手の高い掩体壕があることが分かり、税関研修所脇から国道16号線まで都合3つ掩体壕があることが判明した。そして、国道16号線の東側の香取神社周辺に3つの掩体壕があって、合計6基の掩体壕が柏にはあることになった。

<誘導路沿いの掩体壕の土手にのぼる>


実は、6基の掩体壕のうち、こんぶくろ池公園予定地のなかにはいるのは、税関研修所脇の池に近い2基のみで、あとは開発地域である。とくに、国道16号線の東側の香取神社周辺の3基については、周辺が既に整地に入っていて、風前の灯である。遺跡というものは、一度壊されれば元には戻らない。こんぶくろ池の公園予定地内の掩体壕2基を保存するのは勿論のこと、開発対象区域のものについても発掘調査などを行い、東誘導路の国道より西にある1基については保存してもらいたいものである。



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