言語空間+備忘録

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「日本=財政危機」説は嘘!?

2012-12-14 | 日記
 次に引用する見解は、私の意見に極めて近いです。

 ただ一点、私は疑問なしとしない部分があるので、それについて、引用部のあとに書き記します。



REUTERS」の「総選挙こうみる:財政危機説は嘘、アベノミクスで株価急騰=カブドットコム山田氏」( 2012年 12月 10日 16:25 JST )

[東京 7日 ロイター] カブドットコム証券・マーケットアナリストの山田勉氏は、今月16日投開票の衆院選に関し、世間一般で言われている財政危機説は嘘だと指摘。自民党の安倍晋三総裁が掲げるアベノミクス政策は2年でデフレ脱却を果たした高橋蔵相の政策と類似しており、株価急騰のきっかけになるとの見方を示した。7日午後、ロイターの取材に応じた。

主なやりとりは以下のとおり。

――アベノミクス政策に対する期待が高まっている。どのように評価しているのか。

「インフレ目標2%を打ち出したことが最も評価できる。あらゆる政策を打ち出して目標を達成するという覚悟の表れであり、この覚悟がない限り、市場でのインフレ期待は高まらない。実際、安倍氏は無制限緩和を実施すると言い続けている。日本も欧米と同様に無制限緩和をしない限り、いつまでも円高が続き、国内輸出企業の競争力が落ちてしまう」

──金融政策だけでは需要が増えず、物価上昇も難しいのではないか。

「もちろん金融政策だけでは難しく、需要を喚起することが必要だ。そのためには積極財政を行い、公共投資を増やすしかない。日本は1996年の橋本内閣以降、財政改革を目指した緊縮財政を推進しており、足元では公共投資は97年から約半分に落ち込んでいる。今こそ赤字国債や建設国債の発行により財源を確保し、積極財政への政策転換が求められている」

「60─70年代の高度成長期に建てられたインフラ設備のほとんどが補修工事が必要な段階であり、国債発行で得た財源はこれらに向けられるべき。このほか、最先端技術や防衛関連事業などに投資すれば内需拡大につながる」

──国債を大量発行すれば財政が悪化するとの懸念も多い。

「世間一般で言われている財政危機説は嘘だ。国債を発行しても財政は必ずしも悪化しない。例えば政府債務残1000兆円、GDP500兆円の場合、政府債務残高のGDP比率は200%だが、国債を10兆円発行(債務残高1010兆円)し、全て公共投資などに用いればGDPは510兆円に増加、債務残GDP比率は198%に低下する。GDPが増加することで税収も増えるため、債務残高GDP比率の低下はさらに加速する」

──今までも金融緩和や財政政策を実施したが、景気回復は一時的だった。

「一度踏んだアクセルは踏み続けなければならない。過去にも2度、デフレ脱却の機会があったが、日銀が政府側の意向を聞かずに、ゼロ金利政策の解除(00年8月)、量的緩和政策の解除(06年3月)をしたために、いずれも失敗に終わった。政府・日銀が両輪となって最低でも向こう5年間のタームで景気が回復するまで続けることが重要だ」

──安倍氏による日銀関与強化が批判されている。

「橋本内閣による改革の一環として98年に日銀法が改正され、日銀の独立性が過度に高まった。その後の15年間において、日銀はインフレ政策を採ると言いながら、結果的にはコアコアCPIがマイナス1%からプラスマイナス1%にとどまっており、デフレターゲットと揶揄(やゆ)されかねない状況となっている。日銀が用いる手段は独立性を残さなければならないが、デフレ脱却という目標は政府と一つにするべきだろう」

「その意味で来春の日銀総裁人事は注目度が高い。政府が主導する政策を推進する総裁が求められる」

──自民党が第1党となっても衆参のねじれは解消されない。

「自民党の単独過半数は最低限達成すべき水準。単独で300議席確保する勢いがあれば安倍氏が提言する超金融緩和策、積極財政に大きな追い風となり、政局の変化とともに景気回復への道筋が開ける。来年7月の参院選でも勝利すれば長期安定政権となる可能性もある」

──自民党が大勝しアベノミクス政策が推進された場合、株式市場への影響は。

「株価は急騰するだろう。アベノミクス政策は1932─36年に高橋蔵相が実施した金本位制離脱、円安による輸出復興、積極財政、日銀の国債引き受けなどと類似点が多い。当時はたった2年でデフレ脱却を果たした。今回も同様の道筋をたどるならば株式市場にも好影響を与えるだろう」


 冒頭に書いたように、私はこの見解にほぼ同意します。

 一点、私が疑問を感じるのは、「世間一般で言われている財政危機説は嘘だ」という主張です。

 カブドットコム証券・マーケットアナリストの山田勉氏は、続けて、

 「国債を発行しても財政は必ずしも悪化しない。例えば政府債務残1000兆円、GDP500兆円の場合、政府債務残高のGDP比率は200%だが、国債を10兆円発行(債務残高1010兆円)し、全て公共投資などに用いればGDPは510兆円に増加、債務残GDP比率は198%に低下する。GDPが増加することで税収も増えるため、債務残高GDP比率の低下はさらに加速する」

と述べています。この部分には、論理的な誤りはないと思います。私も以前、同様のことをブログに書いています。

 しかし問題は、「だから財政危機ではないと言えるのか」です。私が疑問を感じるのは「ここ」です。



 そもそも、借金を増やせば「財政は健全化する」という論理がおかしいですよね。

 たしかに計算上は、「財政が健全化した」ように見えます。

 しかし、このことはたんに「政府債務残高のGDP比率」が必ずしも「絶対的な指標」ではないということを示すにすぎず、「政府債務残高のGDP比率」の数値にばかり気を取られてはいけませんよ、ということを示していると考えるのが適切であるように思います。

 なぜなら常識的に考えて、「借金を増やせば財政は健全化する」というのは「おかしい」からです。



 もっとも私は、金利が低いことを根拠に「積極的に」財政政策を行うべきである (そうしなければデフレは終わらない) と思っているので、実際に行うべき政策は何か、という結論部分では、氏の意見に同意します。

4 コメント

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Unknown (とおりすがり)
2012-12-17 14:59:07
> 全て公共投資などに用いればGDPは510兆円に増加

この部分が論理的にも誤りかと。
投資金額すべてがGDPに反映されるという点が、机上の空論で、GDPに反映されない部分(エネルギーなど純輸入に頼る支出)は、GDPには反映されないので、必ず、投資金額からの脱漏があるかと。
あとは、本来は乗数効果があるので、多少の脱漏があっても乗数効果でカバーされるはずだが、現在は乗数効果が期待できないので、それも難しいかと。
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Unknown (memo26)
2012-12-18 07:43:44
 わかりました。あなたの意見は正しいと思います。いつもコメントありがとうございます。

 ただ、公共投資をすれば、つまり政府債務を増やせばGDPが増えることは確実で、したがって債務の対GDP比率が低下することも間違いありません。

 したがって、私の主張の核心部分は間違っていないと思います。
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Unknown (とおりすがり)
2012-12-18 11:06:03
いえ、政府債務の増分+100に対して、脱漏の結果、GDPの増分+80だとすると、債務の対GDP比率は悪化する可能性があります。
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Unknown (memo26)
2012-12-20 12:12:22
 わかりました。

 しかし私はともかく、プロであるはずのアナリストも、大したことないですね。
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