みかづき がね いなづま がね
三日月 金 と 稲妻 金
◆村松 誠 (C)Makoto Muramatsu
「おらが内へくる金は、三日月金とも稲妻金ともいふ。
何でもちらりとみたばかり、直ぐに出て行く。
そのくせ奢りが強いときてゐるから、がんぎだ。」
『浮世床』式亭三馬
-おれの家に入ってくる金は三日月金とも稲妻金ともいってね。
ちらりと姿を見せただけで、すぐに出ていってしまう。
そのうえ、やたらに気前がいいものだから、損ばかりしているよ。
※がんぎ=雁木やすりの略。
押しても引いても物が削れることを、損の重なることに掛けた洒落。
空に浮かんだかと思うと、すぐに姿を消してしまう三日月のような金だから、
「三日月金」なのである。
「稲妻金」のほうが、現れては消える素早さがはるかにまさっていそうだが、
「三日月金」のほうが感じは出ている。
「稲妻金」からは夜空を裂いて走る稲光がありありと浮かび、
ちょこまかと出入りする端金にしては、なんだか華々しすぎる。
まるで「花火」のようである。
《 参考・引用・参照 》
『使ってみねぇ本場の江戸語』野火 迅 文藝春秋 580円
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