3、BHが消え去る事ができる条件は本当に少ない件
前のページでは「ガンマ線のホーキング放射ではBHは消滅できない」という事を示しました。
そのおおもとをたどればプランクスケールまで小さくなったBHはホーキング放射を出す事でそれなりの速度で動き出す。
その為にBHのエネルギーは相対論的に扱わなくてはならなくなる。
その時のBHの相対論的なエネルギーEbhは次のように書けます。
Ebh=sqrt(Pbh^2*C^2+Mbh^2*C^4)・・・①式
ここでMbhはBHの静止質量、PbhはBHの運動量です。
それでこの状態にあるBHを消し去るためにはこのBHと同じ静止質量をもち同じ運動量をもつ、但し運動方向がBHと真逆になっている仮想粒子がBHに飛びこむ必要があります。
そうして、その様にできればこのBHは見事に消え去りそのかわりにBHと同じ運動量と静止質量をもつ素粒子になれます。
但し、この話の前提はBHが持つ角運動量と電荷はゼロになっています。
さてみなさん、これで通説が言うように「ホーキング放射で見事にBHは消え去り、その姿を素粒子に変えた」のです。(注1)
但しこの話が成立する為には消え去ったBHの質量が誕生する素粒子の静止質量とぴったりと同じ事が必要になります。
さてその素粒子はフェルミオンでしょう。
そうして電荷をもたないフェルミオンといえばニュートリノでしょうか。
ニュートリノにも多くの種類があります。
そうしてその静止質量は未だに不明ではありますが、BHはその値を知っていて、なおかつホーキング放射をコントロールしながら自分の静止質量を自分が生まれ変わる事になるニュートリノの静止質量になる様にコントロールする、という「神業をやる事が必要になる」のです。
さてそういう訳で、いずれにせよBHが消え去ってそのかわりにそこにニュートリノが誕生する確率はゼロではないでしょうが、ほぼゼロ、たぶんこの宇宙がなくなるまでの時間の中ではその様なイベントは一度も起らない、と個人的には思っているのであります。(注2)
注1:しかしながらこのようなプロセスは従来の通説がイメージしていたBHの消滅とは全く違うものです。
従来の通説では「BHはホーキング放射によって質量がゼロになる事で消え去る」となっています。
それに対してここで説明しているプロセスは「BHが持つ静止質量がそのままで現存するどれかの素粒子に生まれ変わる」と言うものになっています。
この時にBHの質量はゼロになる必要はありません。
そうではなくてBHの質量はそのまま平行移動してBHのかわりにそこに存在する事になる素粒子に引き継がれるのです。
注2:ニュートリノ: https://archive.md/f7Spg :はスピン1/2を持ちます。
でこのスピン、数学上の形式的な数値ではなくて角運動量に関係を持つようです。: https://archive.md/fSGvr :
という事は「BHが消えてニュートリノが残る為」には「BHがもつ角運動量はそのBHに飛び込むニュートリノによって相殺されなくてはならない」という事になります。
そうしてその相殺の時にはもちろんニュートリノがもつスピン1/2を考慮しなくてはならず、「こんなことができる」としたらそれはほとんど「神ゲー」であります。
追記:BHの質量が素粒子の静止質量ゾーンをはずれて小さくなってしまったら、そのBHは永遠に消え去る事ができなくなる、というものが上記のお話のもう一つの結論になります。
BHの質量が素粒子の静止質量ゾーンより上にある時はホーキング放射によってBHの静止質量は下げる事ができますが、ひとたびそのゾーンを下回ったBHは静止質量を増やす手段がありませんので、「素粒子に生まれ変わる」という事は永遠にできない事になります。
以上のように見てきますと「BHがホーキング放射を出してその質量を減らし、そうしてプランクスケールに至る。
そうするとBHがホーキング放射を出す反動でBH自身が動き回る効果を無視できなくなる。
その結果、BHはフェルミオンではない光をホーキング放射する事では消滅できなくなる。
そうしてフェルミオンにBHは姿を変えて消え去る事は、理論上は可能ではあるが、その確率はとても低いものになる」という事になっています。
そうしますと「BHが消え去る事ができないもう一つの理由は、BHがホーキング放射を出す事で動き回る事にある」と言うことになります。
ちなみにこの理由は当方が従来から主張しているBHが消え去る事が出来ない理由、それは「BHの大きさが1プランク長を切ったらそこには何ものも入れない」という「幾何学的な制約条件」でありますが、それとは独立して存在している事になります。