宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

その6-1・ホーキング放射のメカニズム

2023-03-12 08:16:23 | 日記

1、ガンマ線のホーキング放射ではBHは消滅できない件

さてまたこの記述に戻ります。

『6-2・ブラックホールは熱放射をしているので、遥かに長い時間で見れば、最終的に蒸発してしまう。

7・この蒸発の最終のプロセスがガンマ線バーストとして観測される。

8・この時の温度は、T=10の32乗K(ケルビン)にも達する。』

 

前のページではプランク質量に到達したBHとそのBHがホーキング放射を出す状況を確認しました。

それは上の6番から8番に至る状況でもあります。

 

さあそれでBHはガンマ線を出す事で蒸発=消滅する事が出来るのでしょうか?

6番と7番では「蒸発できる」と言っていますが、これは本当ですか?

それで我々は『「BHの消滅不可能定理」の検証』のページに戻らなくてはなりません。

 

以下そのページからポイントになる部分を引用します。

『そうして素粒子の大きさを1プランク長程度と想定していますので、BHの大きさが1プランク長に到達したところが、もう一回ホーキング放射ができるぎりぎりのBHサイズとなります。

なんとなれば、1プランク長を切ってしまったらそのBHに飛び込める仮想粒子は存在しないからであります。

 

さてここでその時のBHの運動量の大きさをPBHとしましょう。

そうであればここでそのBHに打ち込む仮想粒子の持つべき運動量もPBHでなくてはいけません。

そうして打ち込む方向はBHの進行方向と真逆の方向です。

さてこれでBHの運動量はゼロにできます。

のこる問題は相対論的なエネルギーです。

この時のBHの相対論的なエネルギーEBHは次のように書けます。

EBH=sqrt(PBH^2*C^2+(0.25mp)^2*C^4)・・・①式

従ってこのBHに飛びこむ仮想粒子の相対論的なエネルギーE(仮想粒子)も

エネルギーE(仮想粒子)=sqrt(PBH^2*C^2+(0.25mp)^2*C^4)・・・②式

でなくてはなりません。

このとき仮想粒子の運動量はPBHでBHの相対論的なエネルギー①式と同じになっています。(但し仮想粒子の運動の方向はBHとは真逆です。)

それでここで問題になるのは飛び込む仮想粒子の静止質量の大きさです。

上記エネルギー②式にある様に、このとき仮想粒子の静止質量は(0.25mp)つまり

0.00545ミリグラム、でなくてはなりません。

そうしてこんな巨大な質量をもつ素粒子は存在ないのです。

そうであれば最後の最後にきてこのように精密にコントロールしたホーキング放射をつかってもBHを消滅させる事はできない、と言う事になります。』

 

さて上記記述ではBHに飛び込む仮想粒子は静止質量をもつ、という前提で話を進めてきました。

そうしてその仮想粒子の静止質量は(0.25mp)でなくてはならず、そんな大きな静止質量をもつ素粒子は存在しない、従ってBHは消滅できない、という結論になったのでした。

 

さてそうであればもともとが静止質量がゼロのガンマ線ではBHを、どうあがいても消滅させる事はできないのです。

それがホーキング放射というプロセスにエネルギー保存則と運動量保存則の制約を加えた結果として得られる結論です。

しかしながら通説はその事に考えが至っておらず「ガンマ線バーストを起こしてBHは消滅する」としているのです。

さてこれもまた「ホーキング放射についての業界の常識が間違っている」と指摘できる一つの事柄であります。

 

2、ホーキング放射を説明できる妥当な物理モデルについて

今の所、全ての物理屋さんが「なるほど」と納得できる物理モデルは存在していない模様です。

これはBHそのものに対する理解の不足、そうしてまた仮想粒子の対生成とその消滅という事についての理解の不足、それから仮想粒子がBHのホライズンを超えてBH内に入った時に起こる事の理解の不足から生じています。

おまけにプランクスケールに至った時にいったいBHと真空と仮想粒子との関係がどうなって行くのか、その事についても業界内では一致した見解が成立していません。

まあそのような状況ではありますが「ホーキング放射という現象そのものは存在するであろう」という認識は合意を得られていると思ってよいかと存じます。

 

つまりは「ホーキング放射のプロセス詳細は不明な点はあるものの、BHがホーキング放射でエネルギーを減らす≒質量をへらす、という事は確かであろう」と。

しかしながらその状況がプランクスケールに至った後のBHの運命については不明な点が多い。

従ってその後のBHの状況は推測の域を出ない。

とはいうのもの大方の方々は「プランクスケールに至った後のBHは爆発して消滅する」と認識している。

そうして少数のものたちは「BHは消滅せずにプランクスケールで安定する」と考えている。

さらには「そのように安定化したプランクスケールのBH、あるいはBHから変化した別のものがダークマターの正体である」と考えている「さらに少数の物理屋さん達もいる」と言うのが現状の様です。(注1)

 

注1:「BHから変化した別のものがダークマターの正体である」について最初に指摘したのはどうやら J.マクギボン J. MacGibbon の様です。

「蒸発するブラック ホールのプランク質量の遺物は、宇宙を閉じることができますか?: https://www-semanticscholar-org.translate.goog/paper/Can-Planck-mass-relics-of-evaporating-black-holes-MacGibbon/140e7dc002042d472d906b94abdaab919cb49f47?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :1987 年 9 月 1 日発行

『蒸発するブラック ホールがプランク質量に達したときの運命は、推測の問題です。

ここで、宇宙論的な暗黒物質は、蒸発する始原ブラック ホールのプランク質量の残骸で構成されていることを提案します。

現在のエポックで蒸発するブラックホールが宇宙線の制約と一致する最大密度を持っている場合、そのような残骸は臨界密度に近いと予想されます。

残骸は、銀河のハローに欠けている質量の候補でもあります。

必要な密度の原始ブラック ホールは、インフレーション エポックの終わりに自然に形成される可能性があります。プランク質量の遺物は「冷たい暗黒物質」のように動的に振る舞うため、他の「冷たい」候補の魅力を共有します。・・・』

ここで「プランク質量の遺物」と表現されているものは「プランクスケールにまでホーキング放射で質量が減少したBHが安定化した状態に至ったもの」を指しています。

ただしこれが小さくなったBHそのものであるのか、それともBHではなくて別の何かに変化したものであるのかは1987年の時点で不明であったので「プランク質量の遺物」という表現が使われています。

あるいは「ホーキングの主張=BHはホーキング放射で消滅する」が業界で認められていた為に「原始BHはプランクスケールでホーキング放射をやめて安定化するので、その様になった原始BHがダークマターの正体である」という主張はやりにくい、あるいは「やれなかったもの」と推察します。

それで「ホーキング放射をやめたプランクスケールの原始ブラックホール」と言う代わりに「プランク質量の遺物」という表現を使った訳です。

そうしてマクギボンさんは「なぜホーキング放射によってプランクスケールに到達した原始ブラックホールがそこでホーキング放射をやめるのか?」について、そのメカニズムには言及しませんが、その様に仮定すると『ホーキング放射をやめたプランクスケールの原始ブラックホールは「プランク質量の遺物」として残り、それはダークマターとしてふるまう事が可能になるであろう』と1987年に提案しているのです。

 

さてそれで今日の「超対称性粒子前提のダークマター探索の状況」を顧みますれば、地上での直接探索もセルンによる探索も現状では成果なしの状況です。

従ってまた「プランク質量の遺物がダークマターなのでは?」という推測に今まで以上の注目が集まってきている、と言えます。

そうして「プランク質量の遺物がダークマターなのでは?」と初めて言いだしたのがどうやら上記のマクギボンさんの様です。(1987 年 )

 

・上記マクギボン論文の引用状況 : https://archive.md/dCr7C :

近ごろのダークマター探索実験の成果が出てこない状況に応ずるかのように、この論文を引用している論文数が急上昇しているのがわかります。

 

追伸:ホーキングが1975年の論文「BHによる粒子生成」でホーキング放射を定式化し、そこで「BHは最終的には蒸発してきえてしまう」と提案したのでした。

しかしそのホーキング自身は1971年に「プランクスケールの原始BHが生じうる」と提案しています。

しかしそのような小さなBHがダークマターになりうる、とは1971年には主張していない様です。

そうしてその様な「小さなBHがダークマターになりうる」という考え方は1975年のホーキングの論文で否定された状況になっています。

しかしながら1975年のホーキングの主張にもかかわらず、「プランクスケールに到達した後のBHの挙動については現時点でも不明である=推測の域をでない」とう状況のままです。

そうして又アインシュタインの宇宙定数のように、その理論を作り上げた者自身が「あれはミスだった」と認めた事が「実はミスではなくてあたっていた」という事があります。

つまりはホーキング自身は「プランクスケールの原始BHがダークマターになりうるという主張を否定した形になっています」が、実は「プランクスケールの原始BHがダークマターだった」という事になっても良いのです。

といいますのも「それを決めるのは宇宙であって、ホーキングではないから」であります。

 

Wiki 原始BH: https://archive.md/NZXyU :

『原始ブラックホール[1][2] (げんしブラックホール、英: primordial black holes、PBH) とは、ビッグバン直後に形成された可能性のある仮説上のブラックホールの分類である。

初期宇宙においては、高密度で非一様な環境のため重力崩壊を引き起こすのに十分な高密度領域が形成される可能性があり、その場合ブラックホールが形成される。・・・これらの天体の起源の背後にある理論については、1971年にスティーヴン・ホーキングによって初めて詳細に調べられた[4]。

原始ブラックホールは恒星の重力崩壊からは形成されないため、これらの質量は恒星質量 (例えば 2×10^30 kg) よりもずっと小さいものになり得る。

ホーキングは、原始ブラックホールの質量は 10^−8 kg 程度の小さい値にまでなり得ることを計算により示した。』

 Hawking, S. (1971). “Gravitationally Collapsed Objects of Very Low Mass”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

ちなみにチャットGPTによれば『ホーキングは1971年の論文で、極めて低い質量のブラックホールについて研究し、その形成と性質を論じましたが、ダークマターと関連付ける提案は行っていませんでした。』とのこと。

それから『「relics of the Planck mass」(=プランク質量の遺物)という用語を最初に使ったのは、カリフォルニア大学バークレー校の理論物理学者であるジョン・プレスキル(John Preskill)です。彼は、1982年の論文「Relics of Cosmic Strings」でこの用語を使用し、プランク質量に関する粒子の存在を示唆しました。この用語は後に、宇宙論や素粒子物理学の研究において重要な役割を果たすようになりました。』とチャットGPTは言ってますが、以上の情報については確認が終わっていません。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/RjBMX

 

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