宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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ダークマター・37・アインシュタインが目指した宇宙

2019-08-22 00:46:48 | 日記
最初はアインシュタインが1917年の論文で発表したアインシュタイン宇宙から始めましょう。

それはアインシュタイン方程式のページの「宇宙項」に記述があります。(http://archive.fo/lC94a)

『アインシュタインがこの項を導入した理由については諸説あるが、一般に有名なのは、彼自身が信じる静止宇宙モデルを実現するためという説である。
1917年論文の宇宙モデルは重力と宇宙項による反重力とが釣り合う静止宇宙だった。』

しかしながら、まずはアインシュタインの問題認識から始めます。
これもまあ諸説ありますが、「有限の宇宙空間に物質が一様に分布していたら、その空間はいずれは収縮するだろう」という認識がベースにある、という考え方を採用します。

それはたとえばこういう状況ですね。
初期条件
H0=ー1、Ωm=2.1、ΩΛ=0、a(0)=1
Ωk=(1-Ωm-ΩΛ)=(1-2.1-0)=ー1.1
それで解くべき式は
x’=-(2.1/x-(1.1000))^0.5
入力文は
『ルンゲ・クッタ法でx’=-(2.1/x-(1.1000))^0.5,x(0)=1を-10.8から20.5まで解く, h = .005』
結果は
http://archive.fo/8rssb
実行アドレス

t=ー2.3あたりでH=0、つまりこの時点ではこの宇宙は膨張も収縮もせずに静止しています。
しかしながら臨界密度の2倍以上の物質があるので重力により収縮が始まる。
そういうありさまを示しています。

「いや、そうはいうものの、本当にt=-2.3でH=0なの?」と聞かれそうです。
それでH0=+1でこの宇宙の前半がどうなっていたか、確かめてみる事になります。

初期条件
H0=+1、Ωm=2.1、ΩΛ=0、a(0)=1
Ωk=(1-Ωm-ΩΛ)=(1-2.1-0)=ー1.1
それで解くべき式は
x’=(2.1/x-(1.1000))^0.5
入力文は
『ルンゲ・クッタ法でx’=(2.1/x-(1.1000))^0.5,x(0)=1を-10.8から20.5まで解く, h = .005』
結果は
http://archive.fo/JNf7k
実行アドレス

ビッグバンから始まったこの宇宙はスケール因子が1.9あたりまで膨らんで、そこがこの宇宙の大きさのピークになっています。(注1
そうでありますから、あとは収縮するしかない訳で、膨張から収縮に変化するその瞬間にH=0が実現していることがわかります。

ちなみにウルフラムの4次ルンゲ・クッタ数値解析法ではの値がプラス無限大、あるいはマイナス無限大になると、それはつまりビッグバンのスタートポイント、あるいはビッグクランチのエンドポイントに相当する点ですが、そこでは計算値が発散し、計算終了となる模様です。
そうしてまた同様にがゼロとなる点でも計算終了となる、そうなると初期条件H0=+1というのはビッグバンからがゼロに至る膨張過程の計算をすることになります。
同様に初期条件H0=ー1というのはがゼロからビッグクランチ(もちろんそう呼ばれるポイントがあれば、ですが)までに至る収縮過程の計算を指示していることになります。


さあそうなりますとアインシュタインとしては、そのH=0の瞬間を引き延ばせばよい、という事になります。
それで「重力に釣り合うように宇宙定数Λを導入する」ということになりました。

初期条件
H0=+1、Ωm=2.1、ΩΛ=0.0512599025、a(0)=1
Ωk=(1-Ωm-ΩΛ)=ー1.1512599025
それで解くべき式は
x’=1(2.1/x-(1.1512599025)+0.0512599025x^2)^0.5
入力文は
『ルンゲ・クッタ法でx’=1(2.1/x-(1.1512599025)+0.0512599025x^2)^0.5,x(0)=1を-1.8から50.5まで解く, h = .005』
結果は
http://archive.fo/DCeUB
実行アドレス

さてこの宇宙、Ωm=2.1に対してΩΛ=0.0512599025と10ケタの精度まで調整してみました。
宇宙の大きさは宇宙定数Λの効果によって宇宙のピーク位置が1.9から2.73まで大きくなっています。(注2)
そうしてほぼ静止している様にみえる時間が一瞬からt=10からt=40までと随分と拡大しました。
しかしながらt=40を超えたあたりから再膨張が始まっています。
そしてほぼ静止している様にみえる場所は厳密には=0にはなっておらず、ほぼゼロなのですが、わずかに>0となっています。

さて次にΩΛが0.0000000003ほど小さな値、ΩΛ=0.0512599022の場合はどうなるのでしょうか?

初期条件
H0=+1、Ωm=2.1、ΩΛ=0.0512599022、a(0)=1
Ωk=(1-Ωm-ΩΛ)=ー1.1512599022
それで解くべき式は
x’=1(2.1/x-(1.1512599022)+0.0512599022x^2)^0.5
入力文は
『ルンゲ・クッタ法でx’=1(2.1/x-(1.1512599022)+0.0512599022x^2)^0.5,x(0)=1を-1.8から50.5まで解く, h = .005』
結果は
http://archive.fo/vv8Xd
実行アドレス

t=27.5あたりで=0、つまりピークに到達しています。(注3)
それをすぎれば後は収縮するのみ、来た道を逆にもどってビッククランチとなります。
確認されたい方はH0=-1と変更の上、妥当な計算範囲を指定して計算してみてください。

さてそういう訳で、アインシュタインの宇宙はロバストではありませんでした。
「とがった鉛筆を芯を下にして机の上に立てる」と、そういう事と同じであります。
こうしてアインシュタインの宇宙は最終的には再膨張するか、収縮してビッククランチにいたると、そういう運命である事がわかります。

このような話はΩΛを0.0512599022~0.0512599025の間で好みの精度まで上げて計算することは可能ですが、所詮は「宇宙の運動を止める事はできない」という事を再確認することになります。
つまりは「アインシュタインが目指した『永遠の静止宇宙』というのは宇宙項の導入では実現できない」とそういう事であります。

そうしてハッブルによる「宇宙は実際は膨張している」という宣言によってアインシュタインは最終的に宇宙項Λを取り下げる事になるのでありました。

PS
宇宙項Λはこうしてアインシュタインによって提案され取り下げられましたが、その後宇宙の年齢と一番古い恒星の年齢との間にある矛盾を解消するために再登場します。
そうしてそうこうしている内に「宇宙は加速膨張している」という発見によって、今度は「加速膨張の原因としての宇宙項=ダークエネルギー」として再度評価される事になったと、これはなかなか数奇な運命をたどってきたのであります。

注1
H=0の時のスケール因子aの値は簡単に計算できます。
x’=(2.1/x-(1.1000))^0.5=0ですから
2.1/x-(1.1000)=0
従って
x=2.1/1.1=1.90909090・・・・(->循環少数)

注2
注1と同様に
x’=1(2.1/x-(1.1512599025)+0.0512599025x^2)^0.5=0を考えます。
2.1/x-(1.1512599025)+0.0512599025x^2=0ですから、この式の根を求めればよいのです。
ウルフラム入力文は
『2.1/x-(1.1512599025)+0.0512599025x^2の根』で
結果は
http://archive.fo/gQXTE
実行アドレス
根は3つあり但し実根はマイナスエリアにあってプラスエリアには2つの虚根がある、という事です。
そして2つの虚根の実部は2.73613であり、この値はグラフからの読み値に合っています。

注3
同様にして
x’=1(2.1/x-(1.1512599022)+0.0512599022x^2)^0.5=0とします。
2.1/x-(1.1512599022)+0.0512599022x^2=0より
ウルフラム入力文は
『2.1/x-(1.1512599022)+0.0512599022x^2の根』で
結果は
http://archive.fo/EWTt8
実行アドレス
根は3つあり全て実根です。
そしてプラスエリアの2つの根の内、値の小さな方に最初にぶつかり、そこでこの宇宙はH=0となります。
それでその時のスケール因子の値が2.73608という訳です。

注4
アインシュタインは開いた宇宙≒無限に体積があり物質が存在する宇宙を嫌った、という論点からまとめられた記事もあるようです。
・アインシュタインはなぜ宇宙項を導入したか?

『アインシュタインの問題意識は、空虚な無限空間を拒否するという点において、コペルニクス以来の天文学者のそれと共通する。
・・・・・
無限に拡がった空間に無限大の物質があると仮定すると、あらゆる地点に無限遠を含む周辺からの影響が及ぶため、重力場を一意的に決められなくなる31)。
「物質は空間に瀰漫しているが、その総量は有限である」という状況を現実的なモデルで表現しなければならない。
こうして彼が到達するのが、空間が一様な正の曲率を持ち、閉じた球面を構成しているというモデルである。
この場合、空間はどの部分もほぼ一定の密度で物質を含んでおり、全ての物質から遠く離れた宇宙の辺境はどこにも存在しない。
・・・・・』
個人的な感想としては「開いた宇宙=無限に体積があり無限に物質が存在する宇宙」というのは当方の想像力をこえており、そうであればアインシュタインの立場「プラスの曲率をもった宇宙」というアイデアに賛同するものであります。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/vSdQQ
http://archive.fo/uXTgG

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