宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・20・BH(ブラックホール)が質量を減らす方法

2019-04-25 08:41:27 | 日記
ホーキング放射を出す事でBHは出したエネルギーの質量換算分だけの重量を失う、というのはホーキングさんの結論でありました。
そうであればまたしても「何をいまさら」と言われそうであります。
まあそうなんではありますが、出したエネルギーが光かニュートリノか、その違いによって外から観測している人類にはその観測対象が変わってくる事になります。

質量を減らす状況を確認する前に、まずは質量の増やし方を見ていきましょう。
BHの質量を増やす、それはBHに質量を入れてやればそれでOKですね。
しかしながら、この場合、その質量をホライズンのふちまで降りて行って「そっとBHに入れてやる」のかそれとも「BHの重力にまかせて自由落下させるのか」では、その結果は当然異なったものになります。

そっと入れてやれば質量mの分だけBHの質量Mは増加するでありましょう。

さてそれで、「自由落下させた場合」はどうなりますか?
Wikiの「宇宙速度」によればそれは「第二宇宙速度」に相当するスピードでホライズンに突入する、と言う事になります。
そのスピードVはV=sqrt(2*G*M/Rs)=C、つまり「光速になる」というのがニュートンさんの言い分です。<--リンク
(どのような質量のBHであってもそのホライズン半径RsはRs=2*G*M/C^2で計算されます。)
そして、その時にBHが得る運動エネルギーは1/2*m*C^2、これをC^2で割ると換算質量になりますがその値は1/2*m、こうしてBHの質量は静止質量mに運動エネルギー換算質量分を加えた3/2m分だけ増加する事になります。(注1)

しかしながらアインシュタインさんによれば、「それは少し違う」と言う事になります。
BHの重力圏外では質量mのもつエネルギーEは
E=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)ーUp
この位置を基準にしますのでUp=0
ここで運動量PはP=m*V/sqrt(1-V^2/C^2)
V=0ですからP=0
従ってE=m*C^2です。

これが自由落下してホライズン表面Rsに到達します。
その時の速度をVとしますと、エネルギー保存則の成立条件より
E=m*C^2=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)ーUp
がここでも成立している事になります。

Up=G*M*m/Rs=1/2*m*C^2をいれて
3/2*m*C^2=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)
整理すると
sqrt(5/4)*C=V/sqrt(1-V^2/C^2)

Wolframを使いVを求めます。
結果はV=sqrt(5/9)*C=0.745*C
速度は光速の74.5%と言う事になります。

それではこの物質mがこの場所で持つ事になる全エネルギーEはといいますと
E=m*C^2/sqrt(1-V^2/C^2)であり、これを計算すると
E=3/2*m*C^2 となる事が分かります。
こうしてここでもBHの重量増加は3/2*mとなるのでした。

「それではニュートンさんが言った事と同じではないか」と言われそうであります。
しかしながら、BHに突入する速度、ホライズンが感じる速度が違います。
一方は「光速である」と主張し、もう一方は「光速の74.5%である」と主張するのでありました。

さて、この結果を皆様方はどのように判断されるでしょうか?
ちなみに当方の判断は、といえば「アインシュタイン持ち」であります。

(以上の現象をホライズンに立って見ている人はどう見たのでしょうか?
「落ちてくる物質mの全エネルギーは3/2*m*C^2」と見えるはずです。
しかしながら、BHの外から見ている人には「質量mの物質がポテンシャルエネルギーと引き換えに運動エネルギー1/2*m*C^2を得て落ちて行った」と見えるはずであります。
さて、この物質mと同期して落ちて行った観察者にはどう見えたでしょうか?
「BHが加速しながら近寄ってきた。物質mには何の変化も無し。」
その様に見えた事でありましょう。)


次にホーキング放射でホライズン近傍からニュートリノが出てくる事を考えます。
「ホライズン上からはどのような粒子も出てはこれない」という意見があるようですが、それは本当でしょうか?
ちなみにここでは「ホライズンとは単にBHの外側と内側を識別する位置であり、そこにはどのような物理的な存在もない」という立場で考えます。
そして、ホライズンを境界としてその外側、つまりBHの外側では通常の物理座標と物理法則が作用しているものとします。
これはつまり、「BHの内側からは何ものも外には出てはこれない」という意見には同意しますが、「ホライズンはBHの内部ではなく、単に境界を示すものである」と主張するものであります。

さてそれで、上記の計算結果からはニュートンさんに従えば、「光速未満で飛び出したニュートリノはBHに再吸収される」と言う事になります。
他方でアインシュタインに従うならば「光速の74.5%未満ではBHに再吸収される」と言う事であり、いずれの場合も「そのような低レベルエネルギーのニュートリノがホーキング放射されたとしてもBHの質量は減らない」と言う事であります。

それでは以下、具体的に見ていきましょう。
「ホーキングさんが考えたこと・16」によれば、ホライズン近傍からエネルギーを質量換算した値⊿M(Kg)=2.443E-09でニュートリノが飛び出します。
(ここではプランクスケールに到達したBHが出す事になる最初のニュートリノ放出を事例として取り上げています。)

⊿M(Kg)=2.443E-09をエネルギーに戻すと
⊿E=(2.443E-09)*(2.998*10^8)^2(J)=2.196E+08(J)

このエネルギーをニュートリノの運動エネルギーが受け持つ、1/2*m*V^2=⊿Eとするのがニュートンさんのやり方です。
ニュートリノの静止質量は「ホーキングさんが考えたこと・2」から最大でm=1.1*10^ー34(kg)と思われます。

それでV=sqrt(⊿E*2/m)=sqrt(2*(2.196E+08)/(1.1*10^ー34))
V=1.998E+21=6665046667723.04*C
実に光速の6665046667723倍のスピードですから、優にBHの重力圏からは脱出致します。
そしてBH脱出時には光速Cに相当する運動エネルギーが消費されるだけですので残りのエネルギーは1/2*m*(VーC)^2
こうして放射されたニュートリノはほとんどエネルギーを失わずに脱出可能となることがわかります。
(ニュートリノを仮想粒子ーー>実体化させる為のエネルギーEはE=(1.1*10^ー34)*(2.998*10^8)^2=9.887E-18(J).
2.196E+08(J)に対して相当に小さいので、ここでは無視しています。)

一方で相対論によればニュートリノが満足すべき式は
⊿E+m*C^2=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)
となる事になります。
整理して
P=sqrt((⊿E^2+2*⊿E*m*C^2)/C^2)
m*C^2=(1.1*10^ー34)*C^2=9.887E-18(J).

以上より
P=0.732488
P=m*V/sqrt(1-V^2/C^2)よりVを求めます。
Wolframによれば
V≒C

これでもいいのですがβ=V/Cを使って上の式を変形して
P=m*β*C/sqrt(1-β^2)
としてβを求めます。
結果はβ=1でした。
ちなみに手計算では
β=sqrt((2.2211E+25)^2/((2.2211E+25)^2+1))<1で
βは1未満のはずなのですが計算機の桁数が足りない模様です。

まあいずれにせよVはCに相当に近い値であって、「BH脱出条件のVは光速の74.5%以上」という条件はクリア、めでたくBHからは脱出する事になります。
そうして、ニュートリノがBH脱出につかったエネルギーはニュートリノが持つ事になるポテンシャルエネルギーUp相当であって
Up=G*M*m/Rs=1/2*m*C^2であり
従ってBH脱出後のニュートリノが満足すべき式は
⊿E+m*C^2-Up=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)
となり
⊿E+1/2*m*C^2=sqrt(P^2*C^2+m^2*C^4)
となります。

ここで⊿E>>m*C^2であって(エネルギーの差は26ケタ!)、この式を解いてもPの値にはほとんど変化は現われません。
したがってBH脱出後もこのニュートリノは光速で飛び続ける、というのが結論となります。
そしてそのニュートリノがもつエネルギーはほぼBHのホライズン近傍で放出されたエネルギー、2.196E+08(J)という値のままであって、これをたったひとつのニュートリノが運ぶ、という事になります。

注1
通常の惑星に隕石が落下する場合は、隕石の自由落下による運動エネルギーは主に温度に変換され、最終的には熱放射(赤外線放射)の形で宇宙に戻る事になります。
従って隕石の直撃をうけた惑星の質量増加分はほぼ隕石のもつ静止質量分と言う事になります。
ここの所が「硬い表面を持つ惑星の場合」とそのような表面を持たないBHとの場合の顕著な相違点となります。

注2
ニュートリノがエネルギーを運び出す役割をしているのは、超新星爆発でも同じです。<--リンク
そうして、そのようなメカニズムがないと「超新星爆発そのものが起こらず」したがって「大質量のBHの誕生もない」と言う事になります。
但しこの記事中に「ニュートリノの速度の話」がでてきていますが、今の所はニュートリノの速度は光速を超えるということは確認されていません。

そうしてカミオカンデの例はこちらです。<--リンク
あるいはこう言う説明、超新星爆発とニュートリノ重力崩壊型超新星爆発の
ニュートリノ加熱メカニズム
もあります。<--リンク
ご参考までに。

注3
以上の結果は
「ホーキングさんが考えたこと・16」の注6の記述を訂正する事になります。

『・・・詳細なお話は後程とさせていただきますが、概算ではホライズン近傍で持っていたエネルギーはかなりの部分、ポテンシャル井戸を登るのに費やされ、残りの8%ほどのエネルギーが観測される事になるもの思われます。』

実際は「ポテンシャルの井戸を登るのにほとんどエネルギーは消費されない」が正解となるようです。

追伸
上記「超新星爆発とニュートリノ」によれば、超新星爆発でニュートリノが持ち出すエネルギー総量は3*10^46(J)程度とか。(SN1987Aの場合)
平均的なニュートリノ一個の持ち出すエネルギーは40Mev=6.4*10^-12(J).
そうなると、一回の爆発で発生するニュートリノの個数は5*10^57個程度。

さてそれで、その当時の地球のニュートリノ観測実力は5*10^57個発生の爆発に対して、カミオカンデ+その他合計で24個。
これがスーパーカミオカンデ完成でSK単体で8000個に増えました。
つまり6*10^53個のニュートリノが発生したとすれば、そのうちの1つは観測にかかる、という実力です。

さて他方でマイクロBHがプラス質量からマイナス質量へジャンプする際に放出するニュートリノ一つ当たりのエネルギーは2.2*10^9(J)程度とみられます。
そうして、地球を中心にしてその周りに地球近傍と同程度の密度で半径20万光年のダークマターの存在を想定し、それがマイクロBHだとした場合の想定される個数は5.2*10^51個程度。
このダークマターが一億年あたり1.07%程度がプラスからマイナスにジャンプしている、と想定されます。
そうすると年に5.6*10^41個の高エネルギーニュートリノが発生している事になります。
(以上の議論詳細につきましては「ホーキングさんが考えたこと・7・9・16」を参照願います。)

従ってこのイベントによる1年あたりの発生エネルギー総量EはE=(2.2*10^9)*(5.6*10^41)=1.2*10^51(J)
ちなみにこれは一回の超新星爆発の4万倍程度に相当します。
そう言う意味では、地球近傍で発生している高エネルギー現象としては、このマイクロBHに起因するものが一番である可能性があります。

さてそれで、そのイベントをスーパーカミオカンデが一年の稼働時間で観測する確率PはP=5.6*10^41/(6*10^53)
P=9.3*10^-13
このままでは人類はこのイベントを観測する事はできそうもありいません。

しかしながら、宇宙の始まりから137億年のニュートリノ発生のイベントによる合計ニュートリノ数を考えますとP=1.3%ほどとなります。
つまり77年に一回ほどはスーパーカミオカンデでこの高エネルギーのニュートリノが観測できる、と言う事になります。

そうして、地球にやってくる高エネルギーニュートリノは我々の銀河の外からも飛来してきている、そのように推定する事は妥当な事であります。
それゆえに、SKでの高エネルギーニュートリノの観測確率はP=1.3%を下限値としてそれよりも増えるであろう事は十分に予想できる事になります。

そう言う訳で、ざっとしたところではありますが、まあ現状ではこの辺りの推定が妥当なところであろうと思われます。
つまり、「なにやらとても高いエネルギーをもったニュートリノが地球にやってきている事をSKで観測できる可能性がある」という事になります。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/v1SmY
http://archive.fo/Xd0at
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