宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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電王戦・点と線

2014-04-15 12:57:48 | 日記
松本清張の推理小説ではありません。

人とCOMの読み方の話です。

人は線で読んで、COM君は点で読むと。

まあ、棋士さんはそう表現しますね。


でも、実際はCOM君は線で読んでいるのですよ。

まったく人とおんなじです。

では、なぜ棋士さんはああいう表現をするのか?

一つの筋からまったく違う筋に躊躇なく切り替えるのがCOM君です。

そして、その切り替えに棋士さんの認識がついていけないので「点で読む」と表現するのですね。


人の場合は複数の筋を読んで「これで行こう」と決めるとそれに優先権を与えます。

そうしてほかの筋にはマイナスの係数がかかります。

それでそれらの筋は棋士さんの意識にはのぼりにくくなるのですね。

これは自動的にそうなるので、なかなかコントロールすることが難しいのです。(注1)

まあこれも一種のアンカリング効果とも言えるでしょうか。<--リンク


他方、COM君にはそのような特性はありません。

つねに見渡せる限りの水平線までを全探索して、最適手順をみつけます。

そして、さっきまで右側に行くつもりだったのが、次の手番で左側の評価値が高くなっていればなんの躊躇もなしに左に行きます。

そこには何のアンカリングも思い込みもありません。

こうして最終局の「香」や「銀」の打ち込みが選択されたのであります。

これは人間にとってはまさに脅威であります。


人と人の対局では、お互い暗黙の了解の部分があります。

「そんな手はご法度だ」とか「悪手だ」とか言われている所ですね。

ですから、お互いにその部分は読みません。


そうなるように長年に渡って訓練してきたのですからね。

当然、そうなります。

そしてこれは、人対人では「読み筋の効率的な枝刈り」としての長所になります。

でも対COM君では見事にひっくり返って「弱点」となりますね。


どうも「COM君の持っている評価関数の大局観の方が人間の大局観よりも広い」という感触があります。

どうしても人間が筋を読む時には「無意識の枝刈りで探索しない、出来ない所」が発生してしまいます。

でもCOM君はそんな「思い込みや決めつけ」はなく、全てを公平に広く読みます。

これがCOM君と戦う上での「本質的な難しさ」を生み出します。


それに加えて人間は終盤になると疲労がたまって判断ミスをしやすくなります。

この状態でCOM君に勝ちきるのはなかなか大変なことなのであります。

そういう事を屋敷さんは教えてくれたのでありました。


(注1)日経サイエンス5月号に「アインシュテルング効果」として紹介されています。<--リンク

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