「あたしゃ、年中雑魚寝だに」と
まるで自慢げに話しているが、
なんの自慢にも成りはしないのだ。
おはようございます。
せっかく買ったベッドに行かず、
リビングで雑魚寝をしているのは、
そもそも、うめの為に始めた事だった。
まるで一心同体だった私達は、
どちらからでもなく、
気づけば、寝る時はベッド、という概念を捨てていた。
私達は、一つの心臓を共有しているかの如く、
当たり前のように、くっついて過ごした。
生きるための必然のようだった。
互いに支え合いながら、座ったが最後、
もう動かない。決して動かない。
それを、我が家では、「猫ルール」と呼んだ。
支え合う私達は、動かないというルールだ。
人という字を猫と人とで形成しても、人という字は出来上がる。
この猫ルールが発令されたら、
夕飯の片付けも、すべて、おじさん。
お茶が飲みたければ、「おーい、お茶」と叫ぶだけ。
テレビのリモコンも、エアコンのリモコンも、
おじさんを介しての、リモートコントロールだった。
そうやって、私とうめは、支え合って生きていた。
寝る時も、そのままゴロンと寝転がって、
朝まで寝ていたという訳だ。
厳密に申せば、
私が熟睡した頃、うめはそっと私から距離を取っていた。
私の酷い寝相に、命の危険を感じていたのだろう。
程々を知っていたのは、私ではなく、いつも、うめだった。
そんな、うめは、もう居ない。
考えてみれば、すっかり猫ルールも発令されなくなって、
それでも、私は雑魚寝を続けていた。
他の猫達にとっても、それが当たり前になっていたが、
しかし、ここ最近、夜の冷え込みがきつくて、
私は、ついに雑魚寝を、徐々に止めていく事にした。
始めは、私がベッドに行くたびに、
猫達がぞろぞろと着いてきて、騒ぎ出していたが、
今では、寝しなには雑魚寝、
夜が深まったらそーっとベッドへ、というパターンで、
猫達も落ち着いて、そのまま寝ていられるようになった。
ところがだ。
そうなると、今度は、ベッドで共に寝る、おじさんが大変だ。
酷い寝相もさることながら、寝言な。
私の、覚醒しているかのような、はっきりとした寝言な。
必ず「ねぇ、ちょっと聞いて」から始まる寝言な。
「ねぇ、ちょっと聞いて。
私ね、カリフォルニアピザを頼んだのに、
かりんとうピザが届いたんだよ。どうよ、これ?」
だそうだ。
知らんがな。
「ぶわっ!苦しかった~。
ねぇ、ちょっと聞いて。チョークスリーパーかけられた。
グラビアアイドルに。」
だそうだ。
不覚にも、笑っちゃった、おじさん。
私が楽しみにしていたプリンを、
おじさんに食べられたが、
「いいよ、全然いいよ」と笑顔で許した、その夜。
「ねぇ、ちょっと聞いて。許せない、ぜってー許せない。
私のプリン食べやがって。八つ裂きにしてやる!」
だそうだ。
朝、改めて、丁重な謝罪を受けた。
こうして、我が家は、朝になると、
おじさんからの、寝言報告を受けるというルールが出来た。
そんな我が家の、よねルールは?
雑魚寝の時に、よねタイム。
ねんねだぞ。
そろそろ、寝なされよ。
よねタイムが終わったら、ベッドに寝に行く、
我が家の新たなルールが出来た。