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マドンナのナイショ話

あなたに話したいあれこれ

ニューヨーク恋物語 第8章横浜編

2008年08月07日 | ニューヨーク恋物語
「まえがき」


残暑お見舞い申し上げます。


今日は「立秋」
暦の上では、秋を迎えましたが、まだまだ暑いですね。


お盆休みも目前で、今週は上半期の踏ん張り時です。
皆さん、無理しないように、がんばってくださいね。


そして明日から、いよいよ北京五輪も始まります。
甲子園では、連日球児たちの熱戦が繰り広げられています。
それにプロ野球も、どんな展開になることやら・・・。


とにかく、暑い。
昨日の夕方降ったバケツをひっくり返したような雨に
街路樹や公園の草花が救われたような感じです。


あと少し、あと少しだけ、暑いのを我慢して乗り切りましょうね。


         


                          


T1616


さて、ブログでは遅れております、「ニューヨーク恋物語」の更新です。
楽しみに待っていてくれたなら、嬉しいです。


「ニューヨーク恋物語 第8章横浜編」、いよいよ大沢と今日子の別れの日。
恋人たちを遠く離れ離れにさせるのは、可愛そうですね。


T1717


でも、それをあえて遠距離に持っていく作者の心情。
距離をおくことで、見えなかった部分が見えることってありますよね。
恋人でも、夫婦でも、親子でも。


この2人は、そんな試練の中でも、気持ち変わらず、一途に想い合ってほしいと・・・
そんな作者の願いから、このような物語ができたのかもしれません。


T1414


上の3枚の写真は、「タイムズ・スクエア」で、撮ったものです。


尚、今回の物語の、挿絵の写真は、全て私が撮ったもので
私のHP「マドンナの夢ギャラリー」で使用したものです。


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ミューヨーク恋物語2008  BGM 愛し君へ(森山直太朗)


         


                          


ニューヨーク恋物語 第8章横浜編




8ny1

みなとみらいでの最後の夜は終わった。


昨夜、ホテルの部屋から見下ろした夜景は
たぶん二人にとって生涯忘れられないような気がする。


いつまでもこのスイートルームでいたかったが
もうそんな時間は残っていなかった。


8ny2

早々にホテルをチェックアウトすると
二人は今日子のマンションに戻った。


昨日は予期せぬみなとみらいでの夜だっただけに
出発の用意は何も出来ていなかった。
部屋に戻ると、二人はスーツケースに荷物を詰め始めた。


8ny3

「会社の書類はみんな寝室の机の上にまとめてあるわ。」


「梅干と、ちりめん山椒と、塩昆布を少しだけ入れておく。」


8ny4

「ネクタイ、新しいのを2~3本買っておいたよ。」


「あなたのワイシャツは、すべてアイロン掛けしてあるわ。」


「この紙袋は、ニューヨーク支店の人たちへの日本みやげが入っている。」


「あなたは、すぐにお腹を壊すから、整腸剤も買って来た。」


8ny5

「横浜の八幡さまのお守り、入れておくから。」


今日子はまるで大沢の妻のように動いてくれた。
年は下でも、いつも姉さん女房のようだった。


8ny6

この一週間、仕事をしながらずっと大沢の世話をしてくれた。


たぶん眠る時間など、ごくわずかだったに違いない。
けれど朝になると、明るい笑顔で「おはよう!」と言ってくれた。


8ny7

荷物の準備が整うと、今日子は大沢に言った。


「ねえ・・・ この部屋の鍵を持って行って。」


大沢は言葉の意味がわからなかった。


8ny8a

「時差があるからたいへんだけれど
 この鍵で、毎晩私の部屋に浸入して。
 私、あなたを待っているわ。」


8ny8b

「毎晩、浸入していいの? 僕は、毎晩オオカミになっていいの?」


「そうよ。  でもニューヨークのオオカミは優しいの。
 泣いている私の涙をそっと拭いてくれ、怒っている私の気持ちを静めてくれ
 笑っている私と一緒に笑ってくれ、落ち込んでいる私を励ましてくれ
 哀しみは二分の一に、喜びは二倍にしてくれるの。」


「赤頭巾ちゃんのオオカミとは、大違いだ。 
 僕は、正義の味方のオオカミなんだね。」


「この鍵で毎晩、私の心の扉を開いて、私の心にいつも触れて。」


8ny9

「わかった。
 ニューヨークのオフィスのランチタイムが、丁度日本の真夜中だ。
 オオカミはランチもしないで、今日子のところに来るよ」


8ny10

大沢の心を繋ぎとめようとする、今日子の女心がいじらしかった。


この鍵は、今日子の心の扉を開く鍵。
今日子のSOSを開く鍵。
大沢は大切に、背広の内ポケットに入れた。


8ny11

横浜から成田までの道のりは、今日子が運転した。
今日子はいつも安全運転だった。
「ユーミンの曲をかけると寂しくなるから、FMでいい?」


ユーミンの曲には、思い出がたくさんありすぎた。
アルバムが出ると、真っ先に買って二人で聴いた。
車の中では、ほとんどユーミンしかかけなかった。


8ny12

そして二人で、湘南や横須賀や茅ヶ崎に出かけた。
時には房総あたりまで車を走らせた。
代わる代わる車を運転して・・・・。


今日子をサイドシートに乗せると、今日子はナビゲータより詳しいナビをした。
今日子は、地図にない道を冒険しながら目的地へ行くのが好きだった。


8ny13

守りの姿勢で、堅実な大沢に対して
今日子はいつも攻めの姿勢で、冒険好きだった。


大沢の不安をよそに
今日子はナビゲータを無視して、どんどん自分流のナビをしていった。


8ny14

今日子といると、大沢はいつも多くの発見をした。
そんな前向きで、奔放な今日子がとても好きだった。


8ny15

高速道路は渋滞もなく、車はお昼過ぎには成田に着いた。


8ny16

二人は国際線の出発ロビーにいた。


「私、夏休みを取って、ニューヨークに行くわ。」


「待っているよ。  早く今日子にニューヨークを案内したい。
 今日子と行きたいところがたくさんある。
 ニューヨークの夜は、世界中のどこよりも、エキサイティングだ。」


「自由の女神、セントラル・パーク、マンハッタンの夜景。
 ウエストサイドやイーストサイド・・・ 」


「ミッドタウンに、通称リップスティック・ビルと呼ばれるビルがある。
 遠目に見ると、ビルが口紅の形をしている。
 そこにとても美味しいレストランがる。」


「他にも素敵なカフェがたくさんある。
 ニューヨーカーは、その時々のシーンに合わせて、カフェを利用する。
 今日子に、そんなニューヨークを見せてやりたいよ。」


「夏の終わりには、きっとお休みを取るわ。
 そして私、ニューヨークに行く。」


8ny17

出発ロビーにアナウンスが流れた。


「15時30分発、ニューヨーク行きノースウエスト18便。
 只今、搭乗手続き中。 出発の方は、お急ぎください。」


大沢は席を立った。


8ny18

「お酒の飲み過ぎに気をつけて。」


「朝のコーヒー、ブラックはダメよ。」


「毎日、食事はきちんと取って。」


「どんなに帰宅が遅くても、シャワーは浴びてね。
 きっとあなたの疲れを取ってくれる。」


「雨が三日以上降ったら、私たちのてるてる坊主を吊るして。」


今日子の口から止めどなく言葉が続いた。


8ny19

「いつもメールして。」


「いつも私を想って。」


「いつも私を愛して。」


「I Love You と、いつも私に言って。」


今日子は大沢に向かって懇願した。


「わかった。 すべてわかった。 今日子の言う通りにするよ。」


8ny20

今日子は目を潤ませた。


「私、泣いてなんかいない。」


精いっぱいの強がりを言った今日子の頬に、涙がこぼれ落ちた。
そして二人は、もう一度しっかりと抱擁して別れた。


今日子は展望デッキから、大沢の乗った飛行機を見送った。
飛行機はゆっくり滑走路を移動し始めた。


8ny21

15時30分発、ニューヨーク行きノースウエスト18便。
定刻どおりの出発。


大沢を乗せた飛行機は、空の彼方へ消えて行った。


第9章へ 続く・・・


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ニューヨーク恋物語 第7章横浜編

2008年07月25日 | ニューヨーク恋物語
「まえがき」


毎日、暑いですね。


岩手の方では地震があったり・・・
全国のどこかで毎日のように哀しい事件があったり、胸が痛みます。


どうか、平和な日本でありますように・・・。


大阪は今日は「天神祭」の本宮です。
船渡御では、100隻の船が行き交い、約5000発の花火が打ち上げられます。


今夜の大川辺りは、週末と重なって、もの凄い人出でしょう。
天神祭が終ると、いよいよ浪速の夏の幕開けです。


みなさんもどうか、お身体ご自愛くださいね。


         


                           


700j1212


さて、遅れております「ニューヨーク恋物語」


mixiでは、第7章を一週間早くアップしたのですが
ブログは、お菓子ネタで盛り上がっていて、なかなかアップできず。
週末と、天神さんが重なったので、アップしちゃおう。・・・の勢いで
今日、2つ目のエントリです。


さて、こんなにも暑いのに、今回の「ニューヨーク恋物語」は
この物語の中でも、最も「熱い章」です。
どうもすみません。 m(__)m   (笑)


P1616


いくつかのクライマックスシーンの中のひとつでもあります。
今回は、写真の選択に、考え込みました。


写真1枚で、いろいろに想像できるのが、物語です。
私のセンスと、読者のみなさんのセンスがぴったりの写真だといいのですが・・・・。


G909


この章が終われば、最終章までの展開は早いです。
早いテンポで、二人の状況が変わっていくので
きっと連載を楽しみにしていただけると思います。


この章は、単なる「官能小説」としてではなく
これまでの「大沢と今日子」の続編として読んでくださると嬉しいです。




上の写真は
1 ワールド・トレード・センター、崩壊の鉄骨の一部
2 ダコタ・アパート(今もオノ ヨーコさん在住)
3 レストラン プラネット・ハリウッド


物語の挿絵の写真は、
「NIGHT Windows ~東京の夜景」のShinshinさんと
過去の「マドンナの夢ギャラリー」の更新写真です。


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ミューヨーク恋物語2008  BGM 愛し君へ(森山直太朗)


         


                           


ニューヨーク恋物語 第7章横浜編


7ny1
赤レンガ倉庫からホテルに戻った二人は、ラウンジでお酒を飲んだ。
ランドマークタワーのラウンジからは、港の灯りがきれいに見えた。


7ny2
「こうしてあなたとお酒を飲むのも、今夜が最後ね。
 この一週間、本当にありがとう。
 そして今日は、私のためにこんな素敵な一日を・・・・・・」


そこまで言うと、今日子は急に涙がこみ上げて来た。


「バカだな。今日子は本当に、泣き虫なんだから・・・」


大沢が帰国した日にも、今日子は車の中で泣いた。
そして大沢に同じ台詞を言われた。


7ny3
「私、一緒にニューヨークに行けなくて、ごめんなさい。」


「わかっている。  いつかその時が来るのを僕は待っている。」


大沢はどんな時でも冷静で、今日子に愛情を押し付けなかった。
それは大沢の愛の深さだった。


「ねぇ・・ ・ ニューヨークの夜景ってきれい?」


7ny4
「マンハッタンの夜景を一度今日子に、見せてやりたいと思うよ。
 エンパイア・ステート・ビルから見る夜景は世界一のパノラマで
 南北にのびる道は、まるで地上の天の川のようなんだ。


 ブルックリン橋のたもとに立つと、なぜか横浜のベイブリッジを想う。
 僕には、今日子との 横浜での思い出が多すぎる。」


「私、いつかニューヨークに行っていい?」


「ああ・・・。 僕はニューヨークで君を待っている。」


7ny5
ほろ酔い気分で部屋に戻った。
今夜ここで、最後の夜を迎えると思うと、二人は動揺した。
大沢は先にシャワーを浴びた。


7ny6
今日子は、部屋の窓から、みなとみらいの夜景を見下ろしていた。
明日の夜には、大沢はいない。
夢のような一週間が、もうすぐ終わろうとしていた。


7ny24
大沢が部屋に戻ると、今度は今日子がバスルームに入った。


浴室からは、今日子のシャワーを浴びる音が、かすかに聞こえてくる。
大沢は、胸の高鳴りを覚えた。


7ny7
やがて今日子がバスルームから出てきた時のために
大沢は部屋の明かりをすべて消した。


7ny8
部屋はいつ今日子が全裸になってもいいように、空調が入れられ
カーテンが開かれた。


ベイブリッジが目の前に広がった。
大沢はじっと今日子を待った。


7ny9
「今日子、今夜 最後のお願いがある」


今日子が部屋に戻ると、大沢はぎこちなく言った。


「残りのカメラのメモリで、今日子の写真を撮らせてほしい」


今日子は、初め意味がよくわからなかった。


大沢は、今日子の全裸の写真を撮らせて欲しいというのだ。
いつもなら冗談ではぐらかす今日子だが、今夜は素直に承諾した。


7ny10
今日子はバスローブを脱ぐと、大沢の指示にしたがった。
長い黒髪を巻き上げると、髪留めで留めた。


うなじにかかる後れ毛が、今夜は今日子を一層色っぽくさせた。
みなとみらいの夜景と月の光の中で、今日子の裸体は、くっきりと浮かびあがった。


7ny11
抜けるような白い肌、小さいけれど、形の整った乳房。
くびれた腰から、下腹部にかけてのなだらかな曲線。


大腿部から足のつま先まで、大沢が愛した今日子の裸体だった。
大沢は無言で、今日子の写真を撮った。
今日子もまた、無言でカメラのフレームを見つめた。


7ny12
「ありがとう。 この写真、大切にするよ。」


撮り終わった大沢は、今日子に心から礼を言った。
大沢は窓辺にいる今日子を抱き上げると、ベットに運んだ。


7ny13
「ニューヨークに帰ったら、私の写真に、毎晩キスをして」


「わかった。 毎晩キスの嵐だ。 こんなふうにキスの嵐だ。」


そう言うと、大沢は今日子にキスをした。
大沢のキスはいつも優しかった。


7ny14
けれど今夜の大沢は、今日子の唇を強く吸ってきた。
別れを惜しむ二人は、今夜はバリアフリーのセックスがしたかった。
そのために、この部屋を予約した。


大沢は今日子の乳房に顔を埋め
まるで赤ん坊のように、繰り返し・・・繰り返し・・・吸ってきた。


7ny15
大沢の唇は、乳房から下腹部へと下りて行き、股間で止まった。
大沢は今日子の股間に顔を伏せ、ピンクに息づく花びらに、そっと触れた。


7ny16
「今日子・・・ 君は、美しい。 今日子・・・ 君は、素晴らしい。」


大沢の歓喜と感動の台詞は、いつまでも続いた。
大沢は半ばかすれた声で、呪文のように繰り返した。


7ny17
今日子は身をよじり、初めは恥じらいをみせていたが
次第に上体をそらし、今にも弾けそうな体を必死で繋ぎとめていた。
今日子の口から発する喘ぎの声は、今夜は、とても切なく大沢の耳に響いた。


7ny18
今日子は一刻も早く、大沢と結ばれたいと願った。
けれど大沢は、今日子の体のすべてを 自分の中に記憶しておきたかった。


これから何ヶ月もこの体に触れられぬ切なさに
大沢はもう耐える自信がなかった。


7ny19
「今日子・・・ 愛している。 今日子・・・ 愛している。」


「僕はこんなにも今日子を愛している。」


大沢は繰り返し、同じ言葉を耳元でささやきながら、唇を押し当てた。
二人は羞恥の心をかなぐり捨て、ひたすら求めあった。


7ny20
「お願い・・・・・ 早く来て・・・」


「大沢君・・・・ 早く来て・・・」


今日子の哀願の声は、次第に大きくなった。
大沢は生々しく息づいている今日子に未練を残しながら
今日子の花びらへ、静かに侵入して行った。


7ny21
何度果てかけて、何度とどまり、何度とどまって、果てかけたことか。
二人は歓喜の頂点でさまよい、悶えながら、果てていった。
そして気だるさの中で、抱き合ったまま眠りについた。


7ny22
どれくらい時間が経っただろう。
今日子はまどろみの中で、大沢の呼ぶ声を聞いた。


「今日子・・・。 今日子・・・。」


「・・・・  ・・・・ ・・・・」


「今日子・・・。  朝陽が昇り始める。」    

          
今日子は全身をシーツで覆ったまま、大沢の横に立った。
そして窓から外を眺めた。


7ny23
みなとみらいの観覧車が、6時の時報を知らせていた。
昇り始めた朝陽を眺めながら、二人は別れの朝を迎えた。


第8章へ 続く・・・


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ニューヨーク恋物語 第6章横浜編

2008年07月19日 | ニューヨーク恋物語
「まえがき」


暑い日が続きますね。
19日、関東甲信、東海地方が梅雨明けし、夏本番を迎えました。


今日は、全国で453人の人が
熱中症の症状で、救急車で病院に運ばれたそうです。
暑い時は、本当に気をつけなきゃね。


今週もいろいろなことをブログに載せたくて・・・
それで2008年版、「ニューヨーク恋物語」が2週間ぶりの更新となりました。


mixiでは、週一にアップして、明日がもう第7章。
こちらは1週間遅れでごめんなさい。


でもブログはまだまだ、楽しいネタがいっぱいファイルに保存されています。
これからもどうか、私のブログをお楽しみくださいね。


         


                          


P2


さて、12章ある「ニューヨーク恋物語」も、今回は第6章。
ようやく半分過ぎることになります。


このあたりまで来ると、熱心に読んで下さる読者のみなさんの心の中に
すっかり「大沢と今日子」の像が出来上がってきます。
3年前がそうでした。


B3


このストーリーの結末をすでに知っている方もいらっしゃるわけですが
3年前は、全くわからない展開。
読者の人たちは、もの凄く楽しみにしてくれていました。


そんなのが支えとなって、私はこの物語を連載できたのかもしれません。
だから読者のみなさんには、今でも感謝しています。


A10


そして今ここで読んでくださる読者のみなさんにも、心から感謝して
今日の「まえがき」とします。


上の写真は左から
1  タイム・ワーナー・センター 
2  5番街のグッチ
3  セント・パトリック大聖堂 


物語の挿絵の写真は、
「NIGHT Windows ~東京の夜景」のShinshinさんと
過去の「マドンナの夢ギャラリー」の更新写真です。


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ミューヨーク恋物語2008  BGM 愛し君へ(森山直太朗)


         


                          


「ニューヨーク恋物語 第6章横浜編」


6ny1
一週間は夢ように過ぎていった。


大沢と今日子は毎朝肩を並べて、東京のオフィスへと向かった。
駅までの10分の道のりを短く感じるのは
大沢の話がとても面白いからだった。


毎朝、大沢は今日子を笑わせてくれた。


6ny2
帰りはいつも待ち合わせをして、必ず一緒に帰った。
時にはたくさんの食材を買って帰り、部屋で食事をした。


こんな季節に「鍋」は可笑しいけれど
ニューヨークでは一人で「鍋」はできないからと、今日子は支度をしてくれた。
二人は、「鍋」を囲んで向き合って、よく食べた。


毎日が新鮮で、夢のようだった。
月曜日の夕方には、大沢はニューヨークへ帰ってしまう。
けれど今は、別れのことは考えないで、精いっぱい楽しく過ごしたかった。




6ny3
日曜日、大沢は今日子に、素敵な一日をプレゼントしてくれた。
久しぶりに、二人でドライブだ。
今日子は嬉しくて、朝からバスケットいっぱいのお弁当を作った。


6ny4
昨夜心配して、吊るしたてるてる坊主は、忠実に約束を果たしてくれた。
今日は雲ひとつない青空だった。


大沢と今日子は湘南の海へ出かけた。
大沢の運転するレジェンドは、風を切って走った。


6ny5
海開きまで、まだ1ヶ月以上ある。
季節外れの海は、とても静かで、サーフボードを持った若者のグループがいた。


若者はサーフィンをしたり、ビーチで戯れたり
その若さに、二人は少し眩しさを感じていた。




6ny6
「若いっていいよね」 今日子が言うと
「僕たちも、彼等に負けないくらい若いよ」と、大沢は言った。


今日子は若くないから、色々に考えて・・・
色々考えるから、踏み切れないことがたくさんあって、仕事を辞められない。
今日子にとって、大沢も仕事も大切で、天秤に掛けられなかった。


6ny7
砂浜に、大きなシートを敷いて
今日子はバスケットからランチボックスを出した。


サンドイッチにホットドック・・・・。  天むすびも作った。
フライドチキンに、卵焼きに、ウインナーソーセージ。
バスケットの中は、すべて大沢の好物のものばかりだった。


6ny8
「僕、このウインナー大好き」
そう言って、箸で摘んだのは、真っ赤なタコウインナー。


「僕、このりんご大好き」
そう言って、手づかみしたのは、ウサギの耳を形どったりんご。


子供が喜ぶようなことをすると、決まってはしゃいで喜ぶ大沢を
今日子はとても可愛らしいと思った。


6ny9
二人は昔から、湘南の海を見ながら過ごすのが好きだった。


寄せては返す波は、まるでレモンソーダーの泡のように消えていった。
潮の香りを体中で感じると、日常の疲れをかき消した。


6ny10
潮風は今日子の髪を乱した。
今日子は右手で髪を押さえながら、大沢に語りかけた。


「ねえ・・・ 私 仕事辞めようかしら?」


大沢は今日子の揺れる気持ちが、手に取るようにわかっていた。
大沢は「仕事を辞めろ」と言うことが、今日子の幸せなのかと考えた。


今日子にとって子供の頃から夢に描いた職業だった。
今、一人の男のためにその夢を捨てさせていいのかと・・・・。


6ny11
大沢は自分には自信はあったが、
一方では裏腹な気持ちの自信喪失の自分がいた。


「ゆっくり考えて、結論を出せばいい。 僕はいつまでも今日子を待っている。」
大沢はそういうのがやっとだった。


6ny12
どれくらい湘南の海でいただろう。
パラソルの下で寝転んで、二人は他愛もないおしゃべりをした。


一緒にいると、お互い、安堵の気持ちでいっぱいになった。
夕陽はゆっくりゆっくり西に傾き始めた。


6ny13
大沢の車は湘南から「みなとみらい」へと向かった。


「ねえ・・・ お家に帰らないの?」 と今日子が尋ねると
大沢は、「ランドマークタワーへ行こう」と言った。


今日子は首をかしげながら大沢の指示に従った。


6ny14
ランドマークタワーでは、よく食事やショッピングをした。
日曜日には、ここで待ち合わせて、みなとみらいでデートした。
二人にとって楽しい場所でもあった。


ランドマークタワーは、52階から高層ホテルの客室だった。
大沢は今日子を残してフロントに行った。
今日子には、その意味がわからなかった。


しばらくして今日子のところに戻ると、大沢は言った。
「今夜、僕たち、このホテルでお泊りだ」


今日子は驚いて
「嘘でしょう? からかわないで」 と言った。


6ny15
「ホラ! 僕たちのルームキーだよ。」


今日子は言葉を失った。
大沢がランドマークタワーにあるホテルを予約してくれていた。
摩天楼のビルから夜景を見ながら、最後の夜を過ごそうと言うのだ。


6ny16
ベルボーイがフロントから部屋に案内してくれた。
部屋はベイサイド側の64階だった。
今日子はまだ信じられなかった。


「嬉しいわ。 私、こんなに幸せでいいのかしら?」
もっと嬉しい気持ちを言葉にして、大沢に伝えたいのに
胸がいっぱいで、言葉が出てこなかった。


6ny17
一週間は短かった。
今夜は二人で過ごす最後の夜だ。


こんな素敵な部屋を二人のためにと思うと
今日子は大沢の気持ちが、愛しくて涙が出た。


6ny18
「今夜みなとみらいで、もうひとつ行っておきたいところがある。」
大沢は今日子に言った。
「明日、ニューヨークに発つ前に、赤レンガ倉庫に行っておきたい。」


6ny19
ミレニアムの年に、あるイベントがあって
大沢と今日子は、赤レンガ倉庫で初めて出会った。


どちらも友人を介しての出会いだったけれど
二人は初めて会った時から、お互い不思議な魅力を感じていた。


6ny20
大沢は、今日子の聡明さに憧れていた。
女にしておくには、惜しいと思うことがあった。
けれどいつも謙虚で、女らしくて、家庭的であった。


6ny21
今日子もまた大沢の知識の豊富さに、憧れていた。
何を話しても、大沢は知らないことがなかった。
けれどそれを自慢するでもなく、優しくて、穏やかだった。


6ny22
そんな二人が付き合い始めるには、それほど時間がかからなかった。
みなとみらいの「赤レンガ倉庫」は、二人の出会いの場所であった。
そこに立つと、あの日の大沢と今日子が戻って来た。


真っ直ぐな長い黒髪。
パープル色のスカートに、黒のセーター。
エルメスのバーキンを持っていたけれど、少しも嫌味ではなかった。
きっと物腰の柔らかさが、そうさせたのだと思う。


6ny23
「初対面の時、あなたはここで、私のバーキンばかり見ていたわ。」


「だってこの若さで、エルメスのバーキンだなんて
 これはどこかの叔父様からのプレゼントかと思ったよ。」


「失礼ね。 趣味は時計とバックよ。
 あの頃の私は、そのために働いていたんだから。」  


「でも今日子がバーキンを持つと、全然嫌味じゃないんだ。
 今日子はバーキンがよく似合う女だよ。
 今日子のキャリアとステータスが、君を浮き上がらせない。」


6ny24
二人は思い出話を始めた。
他愛もないやり取りを 月が見て笑っていたかもしれない。


そんな幸せな二人の間に、時間は止まることなく流れていった。
砂時計がこぼれてゆく音が、耳元でする。
今の二人にとって、切なくて、やりきれない音だ。


「今日子、帰ろう。 ホテルの部屋に戻ろう。」
そう言って大沢は今日子の手を引いた。


6ny25
みなとみらいでの最後の夜を 美しい思い出にしたいと思いながら
二人はランドマークのホテルに向かって、ゆっくりと歩き出した。


第7章へ 続く・・・




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ニューヨーク恋物語 第5章東京編

2008年07月05日 | ニューヨーク恋物語
「まえがき」


今週はプライベートで、少々凹むことがあり・・・
けれどどんなに凹んでいても・・・・
時間は過ぎてゆくし、時間が経つと傷口が段々と塞いでくる。


T1


立ち直れないかも・・・なんて思っていたけれど、何とか踏ん張れそうです。
人って、強いんだなぁ・・・と思う。


そんな中で毎日ブログを更新して、たくさんの人がアクセスしてくれて
私の平凡なブログを見てくれることは、私にとって大きな喜びです。
そんなことに、救われた一週間だった。


J1


さて、2週間ぶりの「ニューヨーク恋物語」です。
ブログへの更新と、mixiへの連載の足並みがやっと揃いました。


mixiでは、森山直太郎さんの「愛し君へ」を You Tubeで聴きながら
公開しているので、ちょっと雰囲気あるんです。


Jj15


今回は写真をふんだんに使ってあります。
あまり使うと、後半は写真大丈夫かな? なんて、自分で心配してみたり。(笑)


上の写真は
1  タイムズ・スクエア
2  NYの自由の女神 (お台場のではありません・笑)
3  NYの市内観光バス


物語の挿絵の写真は、「NIGHT Windows ~東京の夜景」のShinshinさんと
過去の「マドンナの夢ギャラリー」の更新写真です。


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ミューヨーク恋物語2008  BGM 愛し君へ(森山直太朗)


         


                          


「ニューヨーク恋物語 第5章東京編」


5ny1
昨夜大沢の腕の中で眠りについた今日子は
朝まで何度も目を覚ました。


目を覚ます度に、大沢が消えているような不安があった。
今日子は大沢に抱かれる時、何度も問いかけた。


5ny2
「私たち、夢じゃないよね・・・  ねぇ・・・大沢君、夢じゃないと言って」
それは慟哭にも似た、今日子の溢れてくる感情だった。


その度に大沢は今日子の耳元で囁いた。
「夢じゃない。 本物の今日子と僕だ」


5ny3
朝が来て・・・・
目覚めと共に今日子はいつもと違う自分を見つけた。


昨夜の喜びを認識し、もう大沢とは離れたくないと思った。
今、この瞬間も、砂時計がこぼれ落ちるように、時間が過ぎてゆく。


5ny4
食卓に軽い朝食を用意して
今日子は大沢のカップにコーヒーを注いだ。


「おはよう」
そう言って大沢を起こした。


5ny5
「うん?おはよう・・・ もう朝?」
「食事の支度が出来たわ。 今日から本社勤務だね。」


「嫌だなぁ・・・。 いつまでもここで今日子といたい」
大沢は子供のように駄々をこねた。


5ny6
洗面所で大沢が顔を洗う音。
「お~い 今日子、ヘアームースどこにある?」と、聞く声。
「ねぇ 僕の靴下は?」と、大沢はいつも今日子を頼った。


朝食の時のBGMは今でも変わらずユーミンのアルバム。
朝の慌しい時間でさえ愛に溢れていた。


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大沢の会社は新宿で、今日子の会社は渋谷にあった。
二人は支度が整うと「横浜駅」に向かった。


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駅への道筋でスポーツドリンクを買う大沢は昔と変わらない。
コインを入れる時、「ねぇ、今日は何にしよう?」と
今日子に質問するような、独り言まで一緒だ。


「あなたが飲むドリンクでしょ?」
毎回同じ独り言に、同じ返答。
こんなやり取りを今日子は懐かしいと、心が和んだ。


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この時間帯の横浜駅はかなりのラッシュアワーだ。
大沢はいつも今日子をかばうように横にぴったりいてくれた。


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朝目覚めると大沢が横にいて、カーテン越しに同じ風を感じ
同じ朝食を取り、同じ電車で東京に向かう。


その時、今日子はまるで大沢と夫婦になったような錯覚をする。
横浜でそんな生活が出来たらどんなにいいかと思う。


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大沢は、今日は、帰宅が何時になるかわからなかった。
それでも二人は待ち合わせをして一緒に帰ろうと約束した。


少しでも二人の時間を持ちたかった。
渋谷で今日子と別れた大沢は山手線で新宿に向かった。


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仕事に忙殺されて一日はあっという間に過ぎた。
二人は何とか7時に新宿で待ち合わすことが出来た。


今日子は大沢と一緒にいる一週間
思い出をたくさん作りたいと望んだ。
大沢もそんな今日子に、出来るだけ応えてやりたいと思った。


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二人は山手線で新橋まで行き、そこからゆりかもめに乗った。
そしてお台場に向かった。


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お台場もまた、二人にはたくさんの思い出があった。
初めて喧嘩をしたのもお台場だった。


大沢の集めているコレクションに今日子が嫉妬して
「もうそんなの見たくない」と言って怒った。


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三回目のデートで
「今日子さんと呼んでいいですか?」と言ったのもお台場だ。
「今日子さん」と、呼び始めて「今日子」になるまでは、とても早かった。


初めて「今日子」と呼んだ時、大沢は恥ずかしそうに目をそらせた。
大沢は一時も早く、「今日子」と呼んで、今日子に近づきたかった。


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二人は、フジテレビの球体展望室から眺めるお台場の夜景が好きだった。
海浜公園を歩くのも好きだった。


アクアシティお台場やデックス東京ビーチやヴィーナスフォートにも
よく二人で行った。
二人で買ったお揃いのものも今日子の部屋にたくさんあった。


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夕食を食べた後、二人はどこへ行くともなく歩いた。
この季節、夜風はとても心地よかった。


大沢は今日子と手を繋いだ。
指と指を絡ませる時、今日子はいつも大沢に言われた。


「今日子の爪が痛いよ」・・・と。


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長く伸ばしてネイルアートした今日子の爪と
深爪の対照的な大沢の手は他人から見れば滑稽だった。


けれども何千回と、指と指を絡めていくうちに
その対照が、二人の間では不自然ではなくなった。


今日も今日子は大沢の手を「爪攻撃」した。
それを愛情表現だということも大沢はわかっていた。


5ny19
時々今日子は無茶を言って大沢を困らせた。
「ねぇ・・・ 私もう一歩も歩けない。私をおぶって」


そんな無茶を言って大沢の愛情を確かめたがった。
おぶってやると今日子は、いつも大沢の背中で眠ってしまう。
大沢はそんな今日子をとても愛しいと思った。


「帰ろうか?」
大沢はそう言った。


5ny20
今日子は少し後ずさりして言った。
「ねぇ・・・ 私、もう一歩も歩けない。 大沢君、私をおぶって帰って」


大沢の顔が微笑んだ。
そして今日子にキスをした。


5ny21
これから横浜の今日子のマンションへ帰る。
愛の巣は、今夜も二人の帰宅を待っていた。


第6章へ 続く・・・




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ニューヨーク恋物語 第4章横浜編

2008年06月21日 | ニューヨーク恋物語
「まえがき」


3年前に書いた「ニューヨーク恋物語」は、12章で構成された物語です。
その中で、最終章は別として、3つのクライマックスがあります。


A3
その1つ目のクライマックスが、今日お届けする「第4章 横浜編」
ニューヨークから帰国した大沢が今日子と結ばれる夜。


3年前は自分の未熟さから、このクライマックスシーンに
挿絵の写真は、たった2枚しか掲載していないお粗末なもの。


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けれど当時は、私のHP「マドンナの夢ギャラリー」に
初めて登場した大沢と今日子のセックス描写に
多くのWebの友人や、リアルな友人は盛り上がってくれました。


今回のリバイバル、「ニューヨーク恋物語2008」は14枚の写真を使いました。
大沢と今日子の濡れ場シーンにどんな写真を使おうかと
悩んでみたり、ワクワクしたみたり、結構楽しい写真の選択でした。


今回は、私の選んだ14枚の写真で
「ニューヨーク恋物語 第4章横浜編」を楽しんで頂けたら嬉しいです。


J9
挿絵の写真は、「NIGHT Windows ~東京の夜景」のShinshinさんと
過去の「マドンナの夢ギャラリー」の更新写真です。


上の写真は
1 メトロポリタン美術館
2 ブロードウェイのマジェスティック劇場 (オペラ座の怪人上演中)
3 グランド・ゼロ (ワールド・トレード・センター跡地)


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ミューヨーク恋物語2008  BGM 愛し君へ(森山直太朗)


         


                          


「ニューヨーク恋物語・第4章 横浜編」


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ディナーが終わって、汐留で酔いを醒ました二人は
今日子のマンションに向かった。


今日子のマンションはランドマークの向かい側にあり
夜になると横浜の夜景がきれいに見えた。


4ny2
大沢は今日子の部屋に入ると懐かしさがこみ上げて来た。
何度この部屋で愛を確かめ合ったことか。
大沢はそんな昔のことを思い出していた。


4ny3
テーブルの上の小さな花瓶に花が生けられ
大沢を歓迎する今日子の気持ちを表していた。


4ny4
今日子はすぐにバスを用意してくれた。
バスタブには並々とお湯が張られ、大沢の疲労を和らげてくれた。


ニューヨークを発って20時間以上の時間が流れていた。
大沢はやっとこの場所に戻って来たことを実感した。


バスから上がると、大沢のバスローブが用意されていた。
今日子のさりげない気配りを
大沢はこれまでにも嬉しいと感じて来た。


リビングに戻るとテーブルには、酒が用意され
今日子はキッチンにいた。


4ny5
僅かな食材で今日子はいつも美味しいものを作ってくれた。
今日子の手は、まるでマジックハンドのように料理が上手かった。


仕事では素晴らしいキャリアを持ちながら
一方では家庭的な今日子に
多分大沢は一番魅かれたような気がする。
今日子の安らぎは、いつも大沢を少年のようにさせてくれた。


4ny6_2
今日子は大沢のグラスに酒を注いだ。
二人はもう一度乾杯をした。
酒を飲みながら話をすると、大沢は酔いが回って来た。


そんな大沢を残して、今日子はバスルームへと席を立った。
衣服を脱ぐと今日子の裸体が現れた。


今日子は自分の裸体を鏡に映した。
今、この体が大沢を受け入れようとしていた。


4ny7
シャワーを浴びると
今日子は自分の体がキリキリと火照っていくのを感じた。
バスから上がった今日子は、髪を梳かしてコロンを付けた。
そして大沢の横たわるベットに向かった。


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大沢の名前を呼ぶと返事がなかった。
「眠ってしまったの? きっと疲れたのね」


今日子はそう言うと、大沢の眠っているベットに入った。
大沢は目を覚ました。


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「タヌキ寝入りだったの?」
「タヌキ? 今夜の僕はオオカミのつもりだが・・・」


4ny10
そう言うと大沢は今日子の体に触れて来た。
大沢の愛撫はいつもゆっくりと優しかった。


その優しさが次第に
今日子の体を瑞々しい女の体に変えていった。


4ny11
喜びと哀しみが隣り合わせであるように
大沢は今日子と結ばれる時
なぜか愛しさと切なさが交差する。


この切なさは何なのかと、危惧することがある。
きっとそれが二人の運命なのかもしれないと思うことがある。


4ny12
大沢の唇は今日子の唇を求め、首筋からうなじ
そして小さいけれど形のいい乳房でとまり
まるで赤ん坊が母親を求めるかのように、今日子を求めてきた。


照明を落としても、今夜は窓からの月灯りで
大沢は今日子の裸体がはっきりと確認できた。


4ny13
今日子もまた、何度この瞬間を想って暮らして来ただろう。
どうにもならない距離にいつも苛立ちを覚え
それでもお互い愛さずにはいられなかった。


4ny14
今日子の体はまるで花びらが開くかのように・・・
大沢に身をゆだねた。
二人は蜜の時間へと、ゆっくりゆっくり 堕ちていった。


第5章へ 続く・・・





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