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光る源氏の物語

2008-07-30 05:36:08 | 
光る源氏の物語〈下〉 (中公文庫)
大野 晋,丸谷 才一
中央公論社

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今年は源氏物語千年紀なんだそうで、書店に源氏関係の本がならんでます。

今度こそ原文で全部読もうか、とか、一度、与謝野晶子のをダウンロードしてみようか...
こういうイベントの年をきっかけにして読んでみるのはいいかもしれません。

源氏をめぐる評論というか対談でおもしろかったのがこの本。先日なくなった国語学者の大野晋と作家の丸谷才一がもてる知識と自分の好みをすべて生かし、源氏の全巻について熱く語っています。ほめる時は大いにほめ、逆にけなすときは、辛らつな言葉がいきかい...

とっても斬新です。知識人の男性が源氏を読むとこうなるのね、ってたいへん驚きましたし、大いに笑いもしました。

たとえば、宇治十帖。大君の心理はわからないと、大野さんはのたまいます。まあ、そう思う人はおおいでしょう。ところがそのあとの行動がおかしい。でも、理解したい。そのために何をやったかというと、なんと女心を理解するために、ボーヴォワールの「第二の性」を読んだというのです。あっけにとられちゃいました。源氏と第二の性ですって あまりの衝撃に、図書館に第二の性を借りにいってしまいました。しかし、あの二冊に関連性をみいだすのは...大野さんはじめ小数派にちがいない。

他にも女性にはまず思いもつかないような解釈と指摘が随所にとびかっています。ここに興味をもつの、ってとこも。つまり、作者が顔をしかめるんじゃないか、と心配したくなるような下世話なところにも多大なるエネルギーが注がれるわけ。かと思うと、いきなり日本文化論や文学論が展開されたり...とにかく目まぐるしく、深く、広く話題が広がっていきます。


有数の国語学者と作家の数々の指摘は勉強にもなりましたが、同時に、視点がかわるとここまで受ける印象がちがうのか、という新鮮な驚きを味わえる本でした。絶版になっていたのですが、千年紀のせいか復活したようです。再読してみようかな。

失われた本を求めて 光る源氏の物語

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