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アナニアシヴィリ主演 グルジア国立バレエ「白鳥の湖」

2007-07-29 22:33:34 | Weblog
楽しみにしていた公演の一つです。ほぼ定時席のようになってしまったフェスティバルホールの上のほうで、目を皿にしてまいりました。

見るまではやや不安があったのです。なにせ、出産のブランクがありますので。が、東京のほうの公演がよかったという評をブログで見たんです。それで数年前に見て感動した公演がよみがえり、はりきっていってきました。

2時間あまりのコンパクトなものですが、なんともすばらしい舞台でした。ニーナの舞台ってどうしてこんなに温かみがあるんでしょう。

たしかにテクニックは昔のほうが上かもしれません。若いころの白鳥のビデオを持っているんですが、そのときの胸をすくようなテクニックときたら。黒鳥なんて、一度見たらすぐまた見たくなって、一回見るたびに2、3回巻き戻して見てしまったものでした。でもそのころはテクニックに惹かれていたような気がします。

3年前だったか、やはり大阪で見たときは、感動の嵐。白鳥がすばらしくて。たおやかさ、優しさ、愛が舞台に満ち満ちていました。また、黒鳥もすてきでした。ニーナの黒鳥って、妖艶っていうより、スパッとした切れ味と華やかさが身上です。見ていてす~っとしました。で、白鳥で涙した、というわけ。

が、今回は、少なくとも白鳥はまたよくなっていました。

今回も同じファジェーチェフ版で、王子役のダンサーが舞台監督(ロットバルトと一人二役(笑))にしごかれてうまく踊れず、眠ってしまう、そして2幕からは彼の夢ということになります。当然、オデットもオディールも彼の夢の中にすんでいるにすぎません。そして、オデットはプリンシパルの理想そのものを体現した存在です。

ニーナの白鳥はまさにそれ。白鳥の羽ばたきそのもののような腕の動き、バランスのよさ、回転の切れのよさ。出会いの部分から、最後の後姿のパ・ド・ブーレまで、前回よりもオデットはよかったんじゃないかしら。フェスティバルホールの床はあまりよくないのか、けっこうポアントの音が響くんですが、特にオデットのときは、ポアントの音がほとんど聞こえない。それぐらい神経をめぐらせて踊っていたんでしょうね。圧倒的でした。見た目の美しさはもちろんのこと、ちょっとした動きの一つ一つが磨きぬかれ、考え抜かれていて、瞬きをするのも惜しいぐらい。

2幕2場で王子に裏切られて嘆く姿などかわいそうでしかたなかったです。王子があらわれても、オデットと白鳥たちの嘆きはやはり大きいのか、白鳥の群舞が王子とオデットを間にはいって遠ざけたまま。ところが、最後にはオデットは王子の手をとって踊りだして、ロットバルトがやってきたときは、白鳥全員(といってもこのときは人間なんでしょう)が王子を囲みます。そして完全に白鳥に変えられて全員去っていくんですが、まるでオデットの意思を受けて、全員でロットバルトから王子をかばっているように見えました。裏切られようがなんだろうが、最後には許してしまう慈愛の象徴が白鳥と考えていいのでないかしら。

ウヴァーロフも大健闘。なにせ上背が高いので、背が高いはずのニーナがなんとも可憐に見えました。リフトなんて浮かび上がるようで美しかったです。

グルジア国立バレエは期待以上に水準が高かったです。パ・ド・トロワを踊った男性とピンクの衣装の人はよく踊っていましたし、民族舞踊もなかなか。3羽の白鳥など、白鳥の群舞のポジショニングが時に乱れたのは惜しかったですが、全体的にいい踊りだったです。衣装も、近年の旧ソバレエとしては信じられないくらい水準が高いです。セットも悪くはなかったですね。

ああ、なぜドンキも大阪でやってくれないんでしょう。やはり、大いに稼いで東京にバレエ公演をばんばん見に行くようになるしかないのかしら。


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