ライフ&キャリアの制作現場

くらし、仕事、生き方のリセット、リメイク、リスタートのヒントになるような、なるべく本音でリアルな話にしたいと思います。

132.選客万来

2020-06-13 09:54:33 | 時代 世の中 人生いろいろ
 最近、ネットニュースで目に留まった記事がある。大阪のある食堂が、緊急事態宣言の中、あえて新規開店したという。周囲から開店延期の勧めもあり、店主も逡巡したものの、「黙って待っていてもいつ終息するか分からへん。それなら対策を徹底してやってみよう」と、開店を決断したという内容だった。
              

 前回のブログ(131)で紹介した焼き鳥屋の他にも、私がよく行く飲食店の中に、先が見通せない中、急激に変化して行く状況に翻弄されて、一時期休業を余儀なくされた店があった。大手チェーン店のような資本力や人材のない小さな店は、経営的にも精神的にも窮地に追い込まれたことだろう。自分や家族の健康と生活を守らないと、従業員の雇用を守らないと、そして何より客の安全を守らないと・・・。早速に行政の支援に頼った店もあれば、何から手をつけたらよいかわからず途方に暮れていた店もあった。そんなそれぞれの苦悩や苦労を何とか耐え忍び、まだ客足が戻らないうちから再開にこぎつけた店もあった。

 あるメディアは、感染者数が〇日連続で二桁を超えたとか、逆にX日連続20人を下回ったとか、相変わらず意味不明の数字を報じている。また、「第二波を警戒せよ。気を緩めるな。」と仰々しいのに空疎なニュースが続いている。「おうちで過ごそう」などとのん気な同調圧力の雰囲気もまだ残る。勿論、不安の度合いは人によって違うし、地域やそれぞれの立場で事情や考え方はあると思うが、現実はもっと深刻な社会問題が起き、さらに困難な状況に置かれた人々もいるのだろうに。

 そんな中、仕事や商売の現場では、不安や困難と向き合いながらも、一歩ずつ前へ、とっくに元へ、進んでいる人々も多くいる。働かないと生きて行けないし、何もリスクを取らないと逆に何も守れない人々が、私も含めて多数いる。悲観や非難や否定ばかりでは何も生まれない。「様子見」という思考停止では変化から取り残される。行政や誰かが守ってくれるという依存心だけでは、大切な人も仕事も守れない。理屈でなく感覚的にわかっている。
 
 商売もサービスも、売り手と買い手、する側とされる側、双方向のもの。一人や一方だけでは成り立たない。これからは、そこに一層の信頼関係が必要になってくると思う。飲食店で言えば、きちんと対策がされているか、店主や店員の客への配慮があるか、そして仕事ぶりに誇りや謙虚さが感じられるか。人それぞれの好みや使い分けはあっても、これまで以上に客が自分に合った店を選ぶようになると思う。長く付き合える店は、流行りや格付け、表面的な接客でなく、大切なことを守り続けている店。ほっとできる、居心地の良い店、と私は思う。

 客が店を選ぶ。「選客万来」。選ばれる店としてこの先も商売を続けて行くには何が大切か。「お客様の安心と安全」と唱えるのは簡単だが、自分事としてどうすればよいか。一方、客として自分が店を選ぶ時に大切にしたいことは何か。自分の仕事やくらしにつながる大事なことは何か。考え直したことや新たに気づいたことが、それぞれにあったこの数か月だったと思う。

 苦しかった胸の内を漏らしてくれた小さな店の主。この苦境を乗り越えつつある中で、仕事に向き合う目に力が戻ってきた。以前はちょっとクールな印象もあった喫茶店主。ある朝偶然すれ違った時、立ち止まってマスクをずらして「おはようございます」。目が穏やかに笑って見えた。

「過剰な自粛ムードに勝つにはお客さんや地域の信頼を得るしかない。これからもやれることは全てしていきます」(冒頭の記事の食堂店主の話し)

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