ライフ&キャリアの制作現場

くらし、仕事、生き方のリセット、リメイク、リスタートのヒントになるような、なるべく本音でリアルな話にしたいと思います。

140.冷静な頭と温かい心

2020-10-19 12:09:20 | 仕事 キャリア ライフキャリア
「Cool Head ,but Warm Heart」-多分学生の頃に聞いた言葉で、何か問題にぶつかっている時に思い出すことがある。気になって調べてみたら、マーシャルという経済学者の言葉で、「冷静な頭脳と温かい心を持とう」という意味だ。意味は合っていたが、経済学者の言葉とは知らなかった。

 現在、私の仕事のおよそ半分はキャリアコンサルタントの仕事である。就職や就労、転職や再就職という人生の転機にある人や、そのような状況の中で迷ったりもがいたりしている人を対象に、セミナー講師や個別相談等の仕事を通じて支援する対人援助の仕事である。この仕事の基本的な作法と型は、このブログの80回目「キャリアコンサルティングの作法と型」に書いた通り、「傾聴」と「6ステップ」。その土台となるのが、理論と倫理だ。

 私はこの仕事を10年近く続けていて、講師や相談の様々な現場経験も積んでいる方だと思う。どんな仕事でも、それに真摯に向き合い続けてこそわかってくることや悩ましく思うことがあるし、上っ面だけなぞって自己満足したり面倒なことから逃げてばかりでは見えてこないこともあるのだろう。キャリアコンサルティングの仕事もそうだ。

 対人援助の仕事は、本来手間暇かかるし面倒なことも多い。時にはリスクもある。それは、人には様々な事情、置かれた環境、個性、欲求、価値観などがあって、こちらの思い通りには動かない事の方が多いからだ。また、キャリアコンサルティングは、対人援助の中でもいわゆるメンタルカウンセリングのような「治療モデル」ではなく、転機を乗り越え自分らしい生き方を選択できるように促すという意味で「成長モデル」と考えられている。こちらのアドバイスに従わせることが目的ではなく、あくまで自己決定を促すことが原則なのだ。人の人生に最期まで責任を持てるのは本人であり、キャリアコンサルタントの仕事は一期一会がよい。「(相談者を)変えようとするな、わかろうとせよ」。キャリアコンサルタントの基本姿勢を表す言葉の一つである。
 
 とは言え、特に相談の現場では、一定の期間にある程度の前進や結果も求められる。いつまでも相談に乗っているだけでは、支援とは言えない場合もあるからだ。ましてや、有料相談の場合は必要以上の負担を相談者にかけられない。そうすると、相談者の言動からの見立てや支援の進め方は、経験値や勘だけでなく理論や型に基づいて冷静に考える必要がある。一方、実際に相談者に接する時の態度や支援の中味は、共感的理解や人間尊重の倫理観など温かい心が求められる。これらのバランスが難しい。難しいのは、相談者にとってより良い自己決定を共に見出そうとするからであり、その答えがあるとすればそれは相談者の中にあるからだ。だから、やりがいもある。

 「智に働けば角が立つ 情に竿指せば流される 意地を通せば窮屈だ」
とかくに人にかかわる仕事は難しい。されど奥深い。改めて冒頭の言葉をかみしめるような思いがすることが増えたこの頃だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

139.レジリエンス

2020-10-03 10:41:51 | 時代 世の中 人生いろいろ
 「レジリエンス」には、回復する力、再起する力、逆境に向き合う力などの意味がある。「しなやかに立ち直る力」と考えられる。

 今、日本の経済や社会は、多少の波はありつつも徐々に回復に向かっていると考えられている。私の仕事も周囲の人々も、用心は続けながらも概ね通常業務や日常に戻っている。以前のような緊張感や不安感は和らいでいる。人間は緊張感ばかりが続いて限度を超えると、心身の故障につながる。また、社会や人間関係に支障が生じるような不安感はメディアの煽り過ぎによると感じているので、私は今の地域の落ち着いた状況に安堵している。

 では、今の状況は、今年の始まりの頃と同様の仕事や暮らしかというとそうではない面もある。リモートワークの導入や新しい生活様式など、仕事や暮らしの中で変わりつつある部分もあって、変わりながら回復している様子だ。
        

 そう考えると、回復力のベクトルは、「元に戻る」のではなく、新たな方向や価値に向かうイメージと思えてくる。約8か月前の経済や社会の状況に戻ったか否かが問題ではなく、一人一人がこれからの仕事や暮らしの中で守りたいことや成し遂げたいことを見出して行くことが課題になってくる。「もう少しこう変えたい」「もっとこうしたい」、または「このままでいい」とか。難しく考える必要はなく、すぐに解決しなくてもいい。意識や姿勢が、これまでより大切になってくるだろう。

 一方で、レジリエンスを弱めてしまうクセがある。自分にも心当たりがあるものもある。
(レジリエンス入門 ちくまプリマ―新書 参照)
・否定的側面の拡大(肯定的側面の否定 メディアやSNSの偏った情報に煽られて)
・二分化思想(少なすぎる判断基準 勝ち負け思考 白黒思考 グレーが許せない)
・「当然」「べき」「ねばならない」思考(自分だけでなく他者に対してこうだときつくなる)
・過剰な一般化(みんなこうだ、世の中全部がそうだと思いこむ そして悲観する)
・結論の飛躍(根拠のない思い込み、支離滅裂、差別や偏見にもつながりかねない)
・劣等比較(自分より劣っていると思う者と比較して優越感や自己肯定感 これは続かない)
・他者評価の全面的な受け入れ(人の言うことを鵜呑みにしたり惑わされたりでしんどくなる)

 私なりのレジリエンスを強める心がけは、以前から現実を踏まえた楽観主義かと思っている。つまり、状況や情報を見聞きしながらも、そのうち何とかできると考える事かと。そうは言っても、私もいつもそんなに強くはないから、謙虚に人の支えや助け、知恵も借りる姿勢も心がけたい。そして、この8ヶ月で特に感じたことは、人や情報や社会の動きについて、自分にとって大事なことを、惑わされずに冷静に考えてみる姿勢の大切さである。 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする