ライフ&キャリアの制作現場

くらし、仕事、生き方のリセット、リメイク、リスタートのヒントになるような、なるべく本音でリアルな話にしたいと思います。

75.串打ち3年 焼き一生

2017-04-08 22:31:35 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 近所のよく行く焼き鳥屋の店主を甘く見ていた。年の頃は、40歳くらい。短髪に中肉中背で、いつも胸に店名が入った黒のTシャツを着て、無愛想ではないが黙々と焼いている。目配りは行き届いていて客の注文も聞くしアルバイトに適切な指示もする。すいている時は常連客の話し相手もするが、大体は店に入る時と帰る時の挨拶か注文くらいしか直接言葉は交わさない。もともと焼き鳥屋で働いていて、独立して10年らしい。値段はそれほど高くないし、味もいい。好きな店である。

 「まじめにがんばっているから繁盛しているのだろうが、この先いつまで毎日飽きずに鳥を焼き続けるのだろう。」「焼き鳥なら1年も修業すればそれなりの仕事はできるだろうし、もっといろんな商売をすれば儲かるかもしれないのに。」などと、自分の仕事柄店主の将来やキャリアに対する余計な心配が頭に浮かんだこともある。

 「串打ち3年、焼き一生」。たまたまある人から、焼き鳥屋の苦労話を聞いた。鶏肉を切って焼くだけの単純に見える仕事だからこそ、実は難しさや奥深さがあると言う。炭火加減、焼き加減、塩加減など、ちょっと間違うと商品としての出来が大きく変わってしまうらしい。だから手だけでなく目も耳も鼻も使う。また、お客様に満足してもらうにはそれなりの接客態度も欠かせない。すし職人と同様、一生を賭けるくらいの覚悟と努力で「焼き鳥職人」を目指すべきとのことである。
 
 そんな話を聞いてから、店主に対する見方が変わった。店主にとって、お客さんに喜んでもらう事や儲けも大事なことだろうが、それよりも「職人技を究めたい」というこだわりの方が強いのではないか。「焼き鳥職人」になるという夢の途中で、日々真剣勝負をしているのではないかと。

 これもまた余計な想像かもしれないが、そんなことを想わせる魅力と味がその店にはある。

 
 
 

 

 

 

 

 
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74.相談業務で悩ましいこと

2017-04-07 23:45:51 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 「期待にこたえられなくてすみません。本当に申し訳ないです。」「いろいろ世話してもらって、やっと仕事決まって喜んでくれたのに。」「がんばろうと思ったのに続けられなくて、合わす顔が無くて情けないです。」

 数ヶ月ぶりに再就職相談に訪れたTさん(50代)は、苦渋に満ちた表情で頭を下げた。会社倒産により職を失い、長く求職活動を続けた上でやっとみつかった再就職先を辞めてしまったのである。職を失うまでは、長く技術系の仕事をしていた。再就職先は、畑違いの製造の現場だった。私は、まずTさんの仕事内容や退職理由、今の心境などを聴くことにした。

 退職理由は、仕事がなかなか覚えられず年下の上司に叱責されたこと。周囲に迷惑がかかっていると嫌味を言われたり、最後は突き放されたように感じたとのこと。そして、今の心境は冒頭に書いたようなものだった。

 傾聴の基本に立てば、Tさんの話は無条件の肯定的配慮と共感的理解を念頭に聴くことになる。そこは、何とかした。しかし、「期待にこたえられなくてすみません」から始まった冒頭のくだりは、悪い気はしなかったが違和感も感じた。Tさんの再就職が嬉しくなかった訳ではないが、正直なところその後の仕事や人生はTさん次第と思っていたからだ。勿論、また何かの機会にTさんから相談や支援を求められたら応じる気持ちはあった。

 私の役割は、Tさんの転機や困難な状況において、再就職や仕事を通してTさんの自立を支える事と考えている。寄り添う姿勢を大切にするが、Tさんの人生に責任は持てない。人の人生まで抱えきれないのだ。

 仕事や人生に悩みや苦難はつきもの。だから、一時自分を見失ったとしても、これからも自分の人生は自分で何とかするしかないということに、Tさん気づいているのだろうか、気づいてくれるだろうか。次の仕事は私に頼らず極力自力で探して、自分の人生のために働いて欲しい。
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73.コンサルタントWさん

2017-04-06 00:20:16 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 会社を辞めて10年目に入った。個人事業を開業してからだと9年目になる。細々ながらここまで何とかやってこれた。勿論、失業保険は満額もらったし、生活のために貯金の取り崩しもした。友人、知人、家族等の支えもあったし迷惑もかけたと思う。サラリーマンの方が、経済的に安定している点では良かったと思うことはあるが、戻りたいと思うことはない。サラリーマンの時代にも、個人事業を始めてからも、良い事悪い事様々な思い出はあるが、後悔はあまり無い。くよくよ考えることもあるが、根は楽観的なのかもしれない。

 こうして今自分が事業を継続していられるのは、コンサルタントWさんの影響が大きい。Wさんは、ある士業の資格を活かして主に経営コンサルタントをしている。年下だが、「脱サラ開業」の少し先輩だ。私が個人事業開業を開業した頃、いわゆる創業支援関連のセミナーや異業種交流会などにもよく顔を出した。起業のノウハウや都会から来た講師の成功体験談を聞かされることに辟易していた私にとって、Wさんの講話は印象深く共感できた。「起業して早々に花火を打ち上げるのもいいが、商売は継続してこそ意味がある。自分に合ったやり方を模索しながら、続けてゆくことが一番大事。」そんな話だった。

 Wさんとは時々、仕事場近くの商店街でばったり会う。お互いに挨拶して少し言葉を交わして、「じゃあ、また会いましょう。」と言って仕事場へ戻る。そんなWさんが昨年、将来新たな事業を始める準備として勉強会を立ち上げることにした。参加者はWさんが選んでいるとの事だったが、私にも声をかけてくれた。主旨に賛同した私は、参加を即答した。しかし、都合がつかづ欠席することも多い。それでも、Wさんは「いいですよ、お仕事優先で。来られるときに来てくれたらありがたいです。」と笑う。そして毎回連絡をくれる。そんな配慮がWさんの信用や事業継続のコツかもしれない。

 
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