ライフ&キャリアの制作現場

くらし、仕事、生き方のリセット、リメイク、リスタートのヒントになるような、なるべく本音でリアルな話にしたいと思います。

72.誰のために働くか

2017-03-28 23:11:57 | シニア 人生100年
 Kさんは、長年の商売をやめた。諸事情で事業継続が困難になったからである。やめるまでの苦悩もあったし、やめてからも後片付けに苦労した。再スタートを切るまでの紆余曲折もあった。そして、50代にして単身、縁もゆかりもない土地で卒業以来の就職活動を始めた。

 私は、就職支援関係のセミナー講師をしていたので、Kさんのことを知った。Kさんは、就職活動の進め方を知らなかった。若い頃に転職歴はあったが、人のつてで再就職しその後独立して商売を始めて続けていたから無理もなかった。

 Kさんは、早く仕事を見つけたいと一生懸命だった。しかし、悲壮感はあまり感じられず、どこか泰然としながらも謙虚だった。
Kさんは言った。「何もかも無くしましたから、もう一回生きて行くだけです。」「自己PRや応募動機とか、あまり文章を書いたことがないので教えてください。」「これからは、自分のような人間でも誰かのお役に立てる所で長く働き続けたい。」私はKさんに、ノウハウも必要だけど自身の生き様や覚悟を大切にするようにと伝えた。

 Kさんは客商売をしていたので礼儀正しかった。目尻の皺はやさしそうで、眼力には力強さも感じた。年齢の割に体力もあった。そんなKさんは、介護福祉関係の仕事の求人が多いことに注目して図書館などで自主的に情報収集を行い、資格取得のために研修を受講することにした。そうして目標どおり研修を修了して、介護福祉関係の企業に再就職した。

 Kさんはこうも言っていた。「仕事は確かにお客様や誰かのためにやるものだけど、まず自分を大事にして自分のためにやると覚悟しないと、どこかでしんどくなって続かなくなるものかもしれない・・・。」

 Kさんが再就職先で働き始めて10日後、電話の伝言があった。「報告が遅くなって申し訳ありません。無事仕事が決まり、働き始めました。その節はお世話になりました。」

 

 
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71.自分の言葉で自分を語る

2017-03-22 23:47:33 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 転職面接のロールプレイの採用担当者役を、セミナーや個別対応ですることがある。相手の応募職種や業界を聞いて、なるべくリアルなイメージで行うよう心がけている。勿論、実際の面接は企業によって、形式、雰囲気、評価ポイントなども異なるから、受けてみないとわからない。100%面接合格法などあり得ない。その気合は良いが、そんなテクニックもどきで合格するほど、企業は甘くない。とにかく頭数だけ必要な求人は別として、いわゆる採用選考のための面接で、1社か2社受けてたまたま受かっても確かに100%。仮に10社受けて10社とも合格すれば100%だが、現実の転職でなかなか受からずに10社受けることはあっても、受かりながら10社面接する応募者などいない。

 面接がうまい応募者は確かにいる。しかし、だからと言って採用されるとは限らない。採用する方は、概ね「募集職種や自社に合った人材か」「本当に自社でやる気があるのか」「他の社員ともチームワークやコミュニケーションがうまく行きそうか」といった視点を持って面接している。その上で、具体的な各社の評価ポイントをチェックしているし、第一印象の影響も大きい。

 では、応募者はどうすればよいか。定番の自己PR、応募動機、転職理由等の想定質問に対する自分なりの応答をシュミレーションすることは必要。ただ、それらを自分の言葉で自分らしく表現することがより大事なことと思う。誰もが言いそうなことではなく、自分で考え抜いた言葉で態度で表情で、本気で表現しようとすれば迫力が違ってくる。それこそが、まさに転機における人間力と思う。

 シビアな言い方かもしれないが、新卒大量採用する大企業と違い、中小企業が即戦力となりうる人材を中途採用しようとすれば、採用担当者も本気になる。なぜなら、うまい話に期待して、後で裏切られた苦い経験を持つ人事・採用担当者は少なくないからだ。
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70.高校生の就職支援への思い

2017-03-19 23:21:11 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 先日、来春卒業する高校2年生の就職支援に関する講義をする機会があった。男女共学の県立高校。学年の2~3割の生徒が就職を目指すのだろう。参加者は、男子3割、女子7割。担当の先生の指導が行き届いていたのか、礼儀正しく素直な生徒が多かった。

 この講義は厚生労働省の委託事業で、年に5~6回、受託先から依頼された学校に行き基本的にはプログラム通りの講義や演習を講師数名で行う。就職に対する心構えや仕事のこと、コミュニケーションや面接ロールプレイなど、5時間にわたる。

 私は普段、中高年を対象としたキャリア支援に携わることが多いので、高校生を相手にするのは新鮮である。ただし、私がメイン講師を努める際は、「多くの生徒にとって講師は、親兄姉や先生等以外で初めて接する社会人である」という自覚と、「楽しそうにがんばってる(講師として働いている)大人の姿を見せる」という意識を持って臨んでいる。服装、言葉遣いや姿勢にも気を遣うし、上から目線で諭す様な物言いは極力しない。生徒の迷いや不安をやわらげて、就職への意欲が高まるような気づきを重視している。たった1日の講義でどれほど意欲向上したり気づきがあったりするのかわからないが、先生や生徒のアンケートは毎回良好だ。よって、一定の役割や責任は概ね果たせていると考えているが、本当は生徒たちのその後が知りたいと思う。

 「7・5・3問題」というように、約5割の高卒就職者は3年以内に離職するという現実もある。しかし、若いうちはいろいろと自分の道を探索したり迷ったりしてもいいから、何度でもチャレンジしたり再スタートしたり、素直な姿勢で教えてもらい助けてもらいながら歩いてゆけばいいと思う。そんな時、「自分の親のような年齢でがんばってる大人が学校に来て何か言ってたな・・・」と、一人でも少しでも思い出してくれたら素直に嬉しい。(写真はフリー素材)

 

 
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69.引き際

2017-03-16 23:04:21 | シニア 人生100年
 定年後も長く働くことや、生涯現役を目指すシニアが増えている。内閣府の「高齢期に向けた『備え』に関する意識調査」によると、4人に1人は「働けるうちはいつまでも」と考えており、約半数が70歳以上まで働きたいと考えている。また、シニアの働く動機には、健康や社会とのつながりを保つための他に、「生活のため」という本音も少なくない。
 
 定年後をどのように送るかは人それぞれの自由であるし、個人の価値観や事情もあるだろう。健康や社会とのつながりのために働けるうちは働くという考えも、理解できるし共感できる。一方、いつの世もどこの世界もそうなのかもしれないが、「まだまだ働いてほしい」と思うシニアと「そろそろ引退してほしい」と思うシニアがいることも現実だろう。その違いは何か。一概には言えないが、「自己中心」か「自利利他」かの違いが大きいと思う。
 
 創業者や政治家ならともかく、一組織人や個人事業主などの立場でいつまでも後進に道を譲らず、自分に都合のよい主張ばかりを頑固に押し通そうとすると、周囲から敬遠されてますます孤立するだけだ。勿論、そのような立場になるまでにはそれなりに努力や貢献もされてきたのだろうが、それはその人にとっての過去であり周囲の者の将来にとっては障壁となることもある。一方、「自利利他」の精神には、積み重ねて来られたキャリアの厚みが背景にある。歳を重ねてもなお粉骨砕身、自らの役割や責任を全うしようとされる姿勢には敬意を感じる。

 自分にもいずれ引き際がやってくる。まだまだ先のことと思うが、いつになるかはわからない。そろそろかと思うようになったら余裕を持って後進に道を譲り、すーっと跡を濁さず第一線から引き、見守り役になれたらいい。それまでは、いろいろな相手と協力し切磋琢磨しながら共に成長して行く謙虚さを大事にしたい。そんなことを想うこのごろである。
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