ライフ&キャリアの制作現場

くらし、仕事、生き方のリセット、リメイク、リスタートのヒントになるような、なるべく本音でリアルな話にしたいと思います。

91.終活は必要か?

2018-05-05 23:30:21 | 時代 世の中 人生いろいろ
 数年前まで、FPとして「終活」に関するセミナー講師をする機会があった。エンディングノートの書き方、相続、葬儀やお墓、終末医療や介護の事など、一般的な内容だった。

 ところが、この数年「終活」というテーマですることはなくなった。超高齢社会となった日本で、マスコミで取り上げられることも増えて、世間の認識やその必要性は高まっていると思う。高齢者の方を中心にセミナーなども賑わっているが、私には積極的に取り上げたいテーマではなくなった。

 「終活は必要と思うか?」と問われたら、「自分にもいつか必要になるだろうが、まだいい。」「必要と思う人はやればいいし、必要と思わなければあえてやらなくていい。」という正直な思いだ。

 病で余命宣告をされた方や余生を心静かに送りたい方など、人生の終焉が感じられるようになった方々が、自らの意思表示の可能なうちに、家族や信頼できる人に財産分与などに関する意思を形にする「遺言」やリヴィングウィルが大切なことはよくわかる。誰しも人生いつどうなるかわからないから、相続トラブル防止のためにも、なるべく早めに準備や整理しておく方が良いだろう。それによって気づくこともある。

 では、「終活をすれば安心か?」と問われたらどう答えるか。「今の自分には終活の安心よりこれからの生活や人生の安心の方が大事。」「安心は、人それぞれの人生観や内面の問題なのでわからない。」というのが率直なところ。

 人生100年といわれる時代。それでも人生の長さは自分で決められないならば、私自身や人の日々の生活や仕事、そして生涯現役のキャリアを、最後まで心身ともにできるだけ健やかにして行く、いわば「健活」を考えて行きたいと思う。人の一生に余計な時間はないと考えるなら、「終わりの時よりも終わりまでの時間」をどう豊かに、どのように深めて行くかという思いの方を大切にしたい。
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90.手つき、手さばき

2018-05-03 15:39:56 | シニア 人生100年
手つきや手さばきには、その人の人柄や生き様が表れる。ちょっと大げさかもしれないが。
 
 乾杯の盃を交わす時、最年長のKさんはお猪口を持つ右手をすっと下げた。Kさんは、同じ職場で嘱託の立場で一緒に仕事をしていたが、基本的に上下関係はなかった。元は大手企業の管理職。偉そうぶらず、立場をわきまえて人を立て、70過ぎてもこちらが心配になるくらい動き回ってきっちりと仕事をしておられた。こちらもリスペクトしていた方だ。
        
 よく行く焼き鳥屋の店主。年齢は40前後だろうか。「串うち3年、焼一生」と言われる焼き鳥職人の世界で10年はやっている。これまで、何本の串を焼いたのだろう、これからあと何年、焼き続けて行くのだろう。塩を振る時に添える左手。炭火から立ち上る熱気や煙で塩が飛ぶのを防いでいるのだろうか。変わらないまじめで丁寧な仕事ぶり、目配り、そして味が、お客を離さないし新たに呼んでいるのだろう。
     
 時々行くお好み焼き屋のアルバイトスタッフ。軽快な手さばきでネタをこねる、片手で卵を割る、鉄板に具を広げ手早く丸く形を整える。金属製のへらが当たるたびにカチャカチャと、焼けたお好み焼きにソースをかけるたびにジューッと、音がする。パフォーマンスの要素もあるのだろう。ここまでできるようになるには、どのくらい修業をしたのだろう。でき上ったお好み焼きを両手で力強く二つに割いて、「お待たせしました。」と、ほっと笑った。いつか、正社員になるのだろうか。
           
 ショットバーの雇われ店長の知人。元々バーの経営をしていたが、一度店を閉めて一般企業で働いたそう。その後、やはり好きな仕事をもう一度やりたいと、業界に復帰した。愛想が良いほうではないが、黙々と果汁を搾り、氷を割り、シェイカーを振り、注文したお任せカクテルをグラスに注いだ。シェイカーを置くと、少し小指を立てた左手ですっとショートカクテルを送り出した。ちょっとクールに「どうですか?」と聞く。「うん、おいしいです。」の言葉に「ありがとうございます。」と控えめに笑った。

 特別に凝視したり観察したりしているわけではないが、仕事や人に対する思いや姿勢が、手つきや手さばきから自然と伝わってくることがある。そんな心地良さの中、ちょっと自分自身の手を見てみる。
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