ライフ&キャリアの制作現場

くらし、仕事、生き方のリセット、リメイク、リスタートのヒントになるような、なるべく本音でリアルな話にしたいと思います。

65.話のリアリティー

2016-11-29 22:28:50 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 キャリアコンサルタントとして就職支援のセミナー講師や面談をする際の主要なテーマの一つに、面接対策がある。その中でも、自己PRや志望動機は採否を決める大きな要素となる。新卒採用から中高年の転職まで、業界や職種を問わず採用担当者が重視する共通事項だから。

 このような面接対策のアドバイスをする際に、私が伝えるポイントが3つある。その一つが「リアリティー(現実感)」だ。面接マニュアル本には「具体的なエピソードを述べましょう」などと書かれている部分だが、私は誇張も卑屈もない「等身大の自分を自分の言葉で表現する」ことの意義を伝えたい。学生ならば人生経験も未熟だから多少の誇張や思い上がりもあってよいが、中高年ともなるとしっかりと自己理解や客観視ができているかは肝要だと思う。

 例えば、人脈の広さをアピールしながらその大部分がSNS上の“お友達”だったり、キャリアアップのために自己研鑽を積んできたと言いながら、研修等のインプットばかりでアウトプット体験の乏しい頭でっかちだったり。採用側が知りたいのは、バーチャルリアリティーの世界の話ではなく、現実の「あなた」が仕事ができるのか、本気でやるのか、コミュニケーションが取れるのかということだ。「なるほどな」と納得できるかどうかということが大切なのだ。

 では、対策はどうすればよいか。結局のところ、本人の経験値や人間力ということになるが、まずは本人が、良いことも悪いことも含めて自分自身にきちんと向き合って、それをできるだけ自己開示してもらうことが必要。そして、アドバイスや提案を素直に聞く姿勢も。それから自分の言葉で自分らしく表現する方法を考える。

 面倒なことかもしれないが、キャリアのスタートや人生の転機にそのくらいの努力は惜しまないことだ。相手が望めば、そのプロセスに寄り添い可能性を引き出すことが私の仕事と考えている。

 

 
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64.講師の仕事の心得

2016-11-28 23:38:39 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 ファイナンシャル・プランナーやキャリアコンサルタントとしての仕事の柱に、「講師」の仕事がある。私は、FPとしては、ライフプランやそれにかかるお金の話、社会保障制度、相続などをよくテーマにする。また、FP資格新規取得者のメンターとして、倫理、コンプライアンス、相談業務の実践的指導を目的とした研修を行うこともある。キャリアコンサルタントとしては、就職支援の各ステップに関する内容が中心だが、職業訓練や、高校生からシニア層までのキャリア支援講習、キャリアコンサルタントを養成するための講座の講師をすることもある。

 講師としてのキャリアは、少人数から最大で100名程度のものまで、様々な機会や依頼を受けて主に地元で地道に経験と実績を積み重ねてきた。全国からお呼びがかかり1回数時間で何十万も報酬をもらえるような人気講師には遠く及ばないが、講師の仕事は相手や現場が違うことが多いし、時々県外に出張する機会もあるからおもしろい仕事である。

 私が講師をする仕事はほとんどの場合、受講者との距離が非常に近い。よって、緊張感もあるが手ごたえも感じやすい。多くの受講者ががこちらの話に反応し引き込まれてくる感覚を覚えるとき、自分の調子も上がってくる。そして、アンケートに様々な意見や感想が書かれているのを見たとき、この仕事の深さを感じる。

 そんな講師の仕事で心がけていることがある。研修とセミナーでは少しスタンスが異なるが、基本は受講者の目線や反応、場の空気に敏感になることである。上から目線にならないように伝えるべきテーマは伝えるが、伝え方は臨機応変に行う。講師の満足よりも受講者の気づきや納得感を、ぶれることなく大事にする。受講者はお客様という感覚に近い。いろいろなお客様がいるが、講師としては、お客様は賢いという謙虚な気持ちで共有する時間を楽しく有意義なものにしたいと思う。
 





 
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63.ゆるやかにまとめて伴走する

2016-11-25 23:46:53 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 ある全国規模のNPO法人の地方組織のリーダーをしている。リーダーと言っても、行事(イベント、会議、研修会等)の準備や運営、予算管理などが主な役割だ。NPO法人なので、原則として営利目的の活動は行わず、行事といってもNPOの目的に沿った「普及広報活動」の一環である。

 毎年秋に、このNPOの全国一斉イベントがある。内容は、主に一般生活者向けのセミナーであるが、本部から大まかな方針が示されたあとは、セミナー等の内容の企画、講師の人選、広報、集客、準備、運営、総括まで、役員を中心に協力して進めないと廻して行けない。自分も含めて役員は皆、基本的に本業を持ちながらのボランティア活動になるし、役員間の命令系統や主従関係はないので、いかにイベントの実施に向けて関係者をまとめて行くかは、リーダーの力量による。

 私の場合、リーダーは率先して皆をリードすべき、役員は行事運営への協力を優先すべきという考えを緩和して、「やりたい人に任せてみる」ことにした。勿論、自分自身も関与するし、大まかな方針、満たすべき基準、予算等は明示するし責任も持つが、それ以外の具体的な事柄は、委員会を作ってそのメンバーに大幅に任せることにした。

 結果、秋のイベントは、自分としては大きな収穫があったと思っている。想定外の出来事や思うようにいかなかった事、様々な意見もあったが、来場者のアンケートによれば大変好評だった。それよりも収穫だったのは、委員や役員から来年はこうしようという建設的なアイデアや気づきが多く出てきたことだ。

 組織運営はリーダー一人の力では続かない。なるべく多くのモチベーションのある人を緩やかに巻き込み、任せてまとめて目標に向けて伴走する。そんな時間や場作りをする。自分なりのリーダーシップのとり方が見えてきた。また、自分の任期後の組織運営の形もできてきたように思う。

 

 

 
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62.お詫びのしかた

2016-11-13 00:20:54 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 社会人暦が30年を超え、今の仕事柄多くの働く人を見たり一緒に仕事をしていると、人の仕事ぶりや人間性の様なところまで見えてくる。もちろん、その人のすべてがわかる訳ではないが、一面や本質をついていることがある。

 日々の仕事の中で、特に人を相手にする仕事をしていると、様々な行き違いや思い違い、トラブル、クレーム、誤解や衝突も茶飯事だ。ちょっとしたミスで済むこと、深刻なもの、お互い様のこともあれば、一方的にどちらかが悪いこともある。私自身、若い頃あまり優秀な社員ではなかったから、よくお詫びをした記憶がある。相手は、お客様だったり、取引先だったり、上司や同僚だったり、相手が誰であれ謝罪の意味だけでなく、事を収めるためにもよく頭を下げたものである。

 ところで、仕事の中でお詫びをする相手の怒りや不満の原因には、自分を蔑ろにされたと感じたということが多いのではないかと思う。具体的には、レスポンスが遅すぎる、約束を守ってもらえない、頼んだことを放置されたなど、言葉は悪いが「なめられた」と思った時ではないか。

 そのような相手の怒りや不興を買ったときのお詫びは、「すみません」ではなく「申し訳ありません」が社会人の常識。潔く、誠意や責任感のあるお詫びができるか否かは、その人の社会人としての経験、仕事力、人間力にも影響されると思う。相手の不満や不安に対する感性に乏しく、お詫びすらまともにできないようでは仕事の現場からいずれ淘汰されるだろう。今は自らの立場が守られ責任に鈍感でいられても、環境が変われば適応できなくなり惨めな思いをするだろう。

 仕事の責任を取るとは、相手の不満や不安をできるだけ解消し、人の助けを借りてでも課題の推進や問題解決に向けて、厳しい状況からも逃げずに汗をかき泥をかぶって、できる限りやり遂げること。頭を下げた分だけ見えた事や身についた事もある。

 
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61.キャリアコンサルティングの目線

2016-11-05 23:09:41 | 仕事 キャリア ライフキャリア
 キャリアコンサルタントの活動領域の中で、現状ではその多くがハローワーク等の就職マッチングの場で働いている。基本的にはどの領域であれ、まず相談者の話をよく聴くことで関係を構築し、見立てをして、その人に合った展開へとつなげて行く。

 かつては、職業紹介機関等の中には、上から目線で事務的な対応をする職員が少なくないと言われた。勿論、親身になって懸命に仕事をする職員もいたが、「目線を下げて相談者の話を親身に聞くように」と上司から指導され戸惑う職員も少なからずいた。

 しかし、言葉尻を捕らえるようだが、「目線を下げる」という言葉の裏には、どこか“お上意識”のようなものがあると思う。相手を下に見て、目線を下げてやってる、俺(私)が何とかしてやるという意識が隠されてはいなかっただろうか。なかなか就職できない、自分の思い通りにならない相談者は、事務的にあしらうようなことはなかっただろうか。

 確かに、相談者にもいろいろな事情や価値観を持った人がいる。非常識な人間もいるし、相当困難な事情のある人もいるから、腹立たしいことや面倒に思うことも、人間だからあるだろう。しかし、そんな溝や壁は「目線を合わせる」努力をすることで、緩和されたり解消されることもあるというのが私の実感だ。目線を合わせるとは、つまり、無条件の肯定的配慮と共感的理解に努めることだろう。

 以前にあるハローワーク職員から聞いた話がある。「ここには仕事をなくした、つらい気持ちや状況の人が来るのだから、あまり明るい挨拶や笑顔はいらない。」ここにも、上から目線の臭いがする。相手への配慮は必要だが、暗く希望が持てない雰囲気の中で前向きな気持ちになれるだろうか。見下されたと感じた相談者は来なくなるだろう。

 さまざまな事情や価値観を持った一人の人間として、対等な目線で、限られた時間と場所の中で誠実に向き合えばいいと思う。
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60.還暦過ぎた人の再就職支援に思うこと

2016-11-01 22:38:19 | シニア 人生100年
 還暦を過ぎた人の再就職相談や支援のための面談の仕事をしている。大企業や公務員のように、定年後の再就職先がある程度確保されているシニアとは事情が異なり、中小零細企業に長く勤めたり転職を繰り返してきた人、自営業をやめた人、ブランクのある人など、雇用保険や年金も十分ではない人の相談が多い。再就職先がなかなか見つからず悩んでいる人や、あきらめかけている人も少なくない。最近では、家族や子供の支援も得られず独居生活で、最終的には生活保護に頼らざるを得なくなる人もいる。

 そのような人たちとの面談を行う際に、まず心がけていることがある。それは、その人の半生(歴史)を聴くということ。キャリアとは、過去、現在、未来のつながりだから、次に踏み出す勇気も、壁を乗り越える胆力も、自分の居場所を見つける気力も、これまでの人生を肯定的に捉えることから始めないと本物になりにくいと思うからだ。勿論、相手によっては過去のことを話したがらない場合もあるし、関係構築が不十分な段階で人生や本心を聞き出そうとしても逆効果となる。

 「これまで、お仕事中心でがんばってこられたんですね。振り返ってみてどう思いますか?」「へえー、そんなご経験があるんですか。よかったら、もう少し聞かせてください。」「いろいろご苦労されたんですね。」など切り出し方は相手にもよるが、こちらが話を聴く姿勢を見せると、少しづつ話し始める人が多い。そして、ひたすら聴いているうちに時間が来て、「あっ、すみません、しゃべりすぎました。普段あまりこんな話ししないので。ありがとうございました。」とすっきりした表情になる。

 「年齢的に無理ですよ。」と訳知り顔でアドバイスしたところで、相手の役には立たない。相手の持つ宝を引き出し、ささやかでも希望につなげてゆくことが役割だとつくづく思う。人生の先輩方のいろいろなお話は、おもしろくためになる。
 
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