どうして、そんなにギリシャが好きなの
いったい、ギリシャのどこが良いのと
尋ねられると 答える代わりに
カザンツァキスの「その男ゾルバ」の
文章を教えてあげることにしています。
東京はみごとな秋晴れでした。
こんな日にぴったりの名文です。
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海、秋の穏やかな気分、光に浸っている島々、永遠に裸のままでいるギリシアの上に、透明なヴェールを拡げる繊細な雨。死ぬ前にエーゲ海を渡る幸運に恵まれたものは幸いなるかな、と私は思った。
この世の喜びは多いー女たち、果実、もろもろの思想。しかし、穏やかな秋の季節に、島々の名をひとつひとつ口ずさみながら、この海の水を切って進むことほど、人の心を天国へ運ぶにふさわしい喜びはないように私には思われる。ここをおいて、人が容易に、しかも平静に、現実から夢の世界へと移行できるところが他にあるだろうか?
水と陸の境界線がだんだん小さくなってゆく。太古の時代の破船のマストから枝や果実が生え出ているようであった。
ここギリシャにおいてこそ、必然が奇跡を生み出す国のように思われた。
「その男ゾルバ」ニコス・カザンツァキス著 秋山健訳 1967年 恒文社
ギリシャ語原作の初版は1946年
「その男ゾルバ」は映画では見ましたが、原作本には目をとおしたことがなかったので・・カザンツァキスはこんな風にギリシャを描写していたんですね。
今年は没後50年ということで、先日新聞で小さな記事にもなっていました。
久しぶりにまた映画、見たくなりました。
いつか原作をお読みになってみて下さい。映画とは全く異なる主人公像や映画の終わり方から見ると後日談になる部分もあって、胸に沁みます。
今は手に入りにくい本で、Amazonで見るとユーズドで6000円くらいします。でも大きな公立図書館にはまだあるのではないかと思います。