ギリシャへ そして ギリシャから From Greece & To Greece

ギリシャの時事ニュース、文学、映画、音楽がよくわかる
ギリシャの森林再生を支援する『百年の木の下で』の公式ブログです。

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ギリシャ人と呼ばれた男

2013-03-06 | 絵を描く

上野の都立美術館に行ったのは2月の中頃、氷雨の降る金曜日でした。

駅から美術館の入り口に辿り着くまでに足の先がジーンと冷たくなるような日でしたが、そのおかげか人が少なくてとてもゆっくり鑑賞する事ができました。そして、夜8時まで鑑賞できる金曜日はお昼の人が帰り、勤め帰りの人がくる6時前頃が特に穴場みたいです。

エル・グレコは特に好きな画家ではありませんでした。ただ画集でみた彼のコバルトとマジェンタの色に惹かれ、一度ゆっくり本物を見たいと思っていました。絵自体はちょっと悪趣味と思っていたくらいです。

実物を見て目からうろこが落ちる衝撃でした。絵画展に行くとたいてい帰りに出口で図録や絵はがきを買うのですが、今回は全くその気になれませんでした。あまりにも本物と違うからです。

『無原罪のお宿り』を信者が教会で観るようにひざまずいて見上げてみました。図録で見ると中心の碧い衣のマリアは妙に胴長で変な構図にしか見えないこの絵は3メートルもあり、絵の足元から仰ぎ観る 者を沸き上がるエネルギーで上へ上へと上昇させるのです。これはどういう事なのでしょう?

そして、比較的目線の近くにある天使の左の羽根が絵から飛び出してきます。右の羽根は羽ばたいているように見えます。これはすべて目の錯覚を利用した彼の技法で、おそらく世界で初めて描かれた「3D絵画」だったのかもしれません。

私は飽きもせずこの絵の前で立ったり跪いたりして長い事眺めました。これを体験するだけでも入場料の価値があります。

もう一点とっても面白い絵がありました。2番目の展示室にある『福音書記者 聖ヨハネ』です。まじめそうなおじさん、おじいさんの聖人に混じって彼ひとりがなにやら妖しい色気を放っています。

現代のアニメーションやゲームの登場人物のような出で立ちで、竜がとまった杯を手にして薄い微笑みを口元に浮かべてこちらを見ています。襟元の血のように赤い絵の具のひと筋はまだ濡れているように光っています。400年ほども前の作とは思えません。彼の回りをゆっくり歩いてみましたが、どの角度から観てもこちらを見ているように目が合うのです。とても不思議な魅力のある絵でした。

さて、ぐるっと回ってもう一度『福音書記者 聖ヨハネ』を観に行くと、この絵の前で長く立ち止まっていく人が多いのに気づきました。

館内にはエルグレコが最晩年まで住んでいたトレドの街並みの写真が飾ってあり、中世の石畳をあるく白いレースの襟と黒いマントのギリシャ人と呼ばれた男を想像してみました。

美術館の外へ出ると、まだ雨は止まず、空気はいっそう寒くなっていました。乾いたトレドの街をいくギリシャ男のイメージを消して駅へ向かっていると、背後からなんとギリシャ語の悪態が聞こえて来たので、私の足は停まりました。すると、ふたりのギリシャ人の若い男性がMで始まる悪態をふんだんに取り入れて、雨と寒さに大声で文句を言い合いながら自転車で私を追い越して行きました。こんなところで何をしていたのでしょう。

彼らを呼び止める事はしませんでした。ギリシャに関わる時よく起こるシンクロニシティーに私はもう驚かなくなっているのです。

地中海を横切ってその人生の後半をスペインのトレドの街の石畳を歩くことになったギリシャ人と呼ばれた男と、はるばる日本の上野公園を雨に濡れて自転車で駆け抜けるふたりの若いギリシャ人。彼らの間にある400年を思いながら込み合う山手線に乗りました。

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モリボス・アート・フェスティバル 続き

2009-11-30 | 絵を描く



今回持って行ったのは ”OLD HOUSES OF MYTILENE”
「ミティリー二の古い家 」のシリーズと 
モリボス、ペトラを描いた
「みずのいろどり」"COLOR OF WATER" シリーズ。

ほとんどが2002-2006年に
レスボス島で描いた作品です。

ギャラリーに足を運んでくれた方たちは半数が地元レスボスの方
半数がギリシャ国内外からの観光客でした。
アテネ、テサロニキから家族で夏休みに来ている方,
ベルギー、イギリス、フランスの長期滞在の方
そして、以外と多かったのがギリシャ移民の2世や3世の方たちです。

ギリシャで個展をするのは初めてのことだったので
日本とギリシャでどんな好みの違いがあるのかとても興味がありました。

例えばミティリーニに住んでいる人が
「あ、ここ知ってる、うちの近所だ」
と言ってくれたりすると やはりとても嬉しいものです。

逆にレスボスの人たちは、日本人がどういうところを
選んで描いているのか興味があったようです。

日本でも同じですが 絵を見に来てくれる方は
自分でも描くという人が多いものです。


日本との違いは、ギリシャ人のお客さんは話し好きで
長く話し込んで行かれる方が多くて、
盛り上がり、楽しいということです。ご自宅に招いてくれた方
友人になって、現在もメールの交換をしている方もいます。

残念ながら忙しくて写真を撮りわすれてしまいましたが、
ギャラリーにはリムノス島の白ワイン
レスボス島のウーゾ、ソフトドリンクと
オリーブのピクルスやナッツなどのおつまみ
お菓子などを市が用意してくれていました。

数点の絵と共にポストカードを買って下さった方が
たくさんいらっしゃいました。

ギャラリーでは一枚2ユーロで販売したのですが
まだ 小学校低学年くらいの子がポケットから大切そうに
2ユーロ硬貨を出し、4種類の中から真剣な目で
選んで買ってくれたのはとても嬉しいことでした。

今年の夏 レスボス島で個展をしたいちばんの収穫は
多くの方に出逢えたこと、私が描いたレスボスの絵が現地
の方の目に触れる機会があったことです。



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モリボス・アート・フェスティバル

2009-11-28 | 絵を描く


会場は昔、税関として使われていた立派な古い建物。(赤い矢印)
レスボス島モリボスの港にあります。

モリボス港は周辺に良質のオリーブオイルを産出する村々があり、
トルコまで5~6キロという海上輸送に最適な港でした。

ギリシャの島では北風に備えて 東あるいは西に向いて
開いた港を作っていることが良くあります。

モリボスもその例のひとつで、風から守られているだけでなく
北向きに位置する隣村のペトラの海岸では水温が低い時でも
モリボスの海岸で泳ぐと暖かかったりします。



百年以上たっている建物の中はこんな感じ
天井が高く床はモザイクです







朝、ギャラリーに来て窓を開くと、遊覧船が出発するところでした。
これまで個展やグループ展をさせてもらった中でも
一番景色のいいギャラリーです。



そして窓の下はタベルナ



新鮮なタコが売り物で、店の名前もズバリ「オフタポディ」(ギリシャ語のタコ)



看板代わりにタコの足がぶら下がってます



通りに面した窓の下にはスイカ売りのトラックが来ています。




2009 Summer Art Festival のプログラム



オープニングで
向かって左がモリボス市長ステリオス・カランドニス氏
右はミティリーニ出身でベルリン在住の写真家レオニダス・ゲギオス氏

みんなの前で なにかひとこと挨拶をと言われたので、
カバフィのΤΟΥ ΠΛΟΙΟΥ(船上で)という詩を
英語とギリシャ語で朗読しました。 


続く



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島が呼んでる!

2009-04-24 | 絵を描く
Σκάλα Σικαμιά, Λεσβος
Acrylic on Wooden board
H 250mm x W 250mm

できたてほやほや!昨夜 完成したばかり
Λεσβος レスボス島の北にある小さな港町
Σκάλα Σικαμιά スカラ・シカミアを描いた新作です。

現在の水彩画シリーズが本格的になる前
アクリル絵の具で木に描くのに凝っていた時期がありました。

ふと思い立ってまた描いてみたら 楽しくて 
時間を忘れて 没頭してしまいました。

額縁に入ってるように見えるかもしれませんが
実は 一枚の板の上に描いてあります。

庭の杏や桃や桜 春の花が咲き終わり
ミカンとレモンのつぼみがふくらんで・・・ 
いよいよ ギリシャの島が
「おいで」と呼んでいる気がします。

エーゲ海の風が運んでくる呼び声に答えて
作風が変化する時期が来ているのかもしれません。
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ギリシャ人アーティストの作品展@銀座

2008-09-02 | 絵を描く

  
     作者は世界の都市をまわり 情報化社会で起きている事実を
        彼の眼差しと心で切り取り キャンバスに収める
     彼はソクラテス/プラトンで知られるギリシャを国籍とする

       いつの間にか秘められ 閉ざされ 封印された内面を
           哲学するごとく語られた彼の作品から
          それらの出来事を 我々は改めて認知する

                        (作品展カタログより)

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ギリシャ人アーティスト、ディオニシス・クリストフィロヤニスさんの
作品展が銀座で開かれています。

ディオニシスさんは、絵画のみならずショート・フィルムなどで
多彩な才能を発揮するヴィジュアル・アーティストです。
彼のモノトーンの作品群は 押さえた色合いでありながら鮮やかに
内面の彩りを描き出しています。

DIONISIS CHRRISTOFILOGIANNIS 作品展 
9月2日(火)~10月30日(木)
日曜・月曜休み
時間 12時~18時 

2008.9.2 TUE - 10.30 THU
CLOSED ON SUNDAY AND MONDAY
OPEN HOUR 12:00 - 18:00

東京都中央区銀座6-7-15 7F
中川画廊 tel 03-3751-0113
(銀座 並木通り シャネルとヴィトンの間にあります)

今年5月日本で開かれたディオニシスさんの作品展の評論:英語
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プラタナスの木の住人

2008-04-08 | 絵を描く
             『リムノス島の羊飼い』

4月17日ロンドンのサザビーで、あるギリシャ人画家の絵が
オークションにかけられます。

村上春樹さんが、「遠い太鼓」で言及している以外、
セオフィロスは日本ではほとんど知られていません。

1873年、レスボス島のミティリーニ郊外で生まれました。

当時のレスボスの青年が皆そうであったように、一旗揚げようとスミルナ(現在トルコのイズミール)へ行きます。そこで何を生業としていたかはわかっていませんが、絵を描いて表現するという精神の解放を見つけたようです。

その後、ギリシャ神話ではケンタウロスが住むというテッサリ-の山岳地帯
ピリオンで30年を極貧の中で暮らします。

時はまさにギリシャ統一の機運があふれていた時代でした。

彼は人々を鼓舞するような演劇を創作し、アレキサンダー大王の扮装で舞台に上がります。観客は彼を笑い者にしたようですが、彼の方はそんな人々を愛してやまなかったようです。

この頃多くの絵画を描いてもいます。


レスボス島がようやくトルコからギリシャに返還され、セオフィロスはミティリーニに戻ります。

故郷にもどったのを機に、彼の絵のテーマは愛国主義的なものから、牧歌的な島の暮らしや、よく見知った人々などへと変わっていきます。

故郷でも彼は変人あるいは狂人と見られていましたが、一方で愛されてもいました。貧しいことに変わりはなかったのですが、食うに困ることもなかったのです。

ミティリーニから車で10分ほど山へ入ったところに、清らかな泉のわいている谷間があり、そこに「セオフィロ」というカフェニオンがあります。

ミティリーニの人が夏の午後などに緑陰濃い木陰に涼を求めてやってきます。

巨大なプラタナスの木の根元は中がうろになっていて、三畳ほども広さがあります。セオフィロスはそのうろの中に住んでいたのだそうです。

1934年に亡くなるまで、お金とは縁のない生活で、食事をさせてもらう代わりに、タベルナの壁に絵を描いて暮らしていたようです。

70年代までは街にセオフィロスの絵が残っていました。
現在は生まれ故郷に美術館が建てられてそこに集められています。

今でもレスボス島ではセオフィロス風の絵を描いたタベルナがありますが、
聞いてみると、そこのご主人が描いた絵で
「へ、へ、へ どうだい。セオフィロよりうまいだろ」なんて自慢してたりして、それはそれなりに嬉しくなります。

さて、サザビーでオークションにかけられるのは彼の代表作
The Death of Markos Botsaris(マルコス・ボツァリスの死)
価格は300,000 ユーロ(約5千万円)から始まるということです。

貧しく波乱に満ちた人生を送ったセオフィロスは
この金額をどう思うでしょう。




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いいんだよ そのままで 笑ってごらん

2007-10-29 | 絵を描く

私にとって絵を描くことは日記を書くのと同じ。
描こうと思ってよおく観ると それまで見えなかったことが見えてきたりします。

港のあたりで絵を描いて 坂の上にある家に帰る道 いつも卵やヨーグルトを買かう店。
店主のヨルゴスは開店と同時に階段になっている店の前の道に空き箱を2個並べます。すると犬と猫がやってきて箱の中へ。
「飼ってるの?」と訊くと「いいや」といいながら、箱の横には飲み水とペットフードがある。「こいつらはここが好きなのさ。誰にも好きなところで生きる権利はある。生きてれば腹も減るだろ」とヨルゴスさん。

お店の建物は100年以上前から雑貨屋さんだったのをヨルゴスさんが20年前に購入した。建物の壁に人の顔の彫刻がついている。
「あれはなあに」と訊くと、「この家を建てた家族の娘が幼くして亡くなって、悲しんだ両親はみんなが娘を忘れないようにってつけたんだそうだよ」と話してくれた。
「天使みたいなかわいい顔だろ。この辺のこどもらを守ってくれていると思うね」
小さな子らがお小遣いを持って、よくお菓子を買いにくるヨルゴスさんの店。
店の前は自動車が通れないが、車の多い道を渡らないと行かれない。おまけに角は見通しがわるくて危険だ。しかし、ここでこどもが事故にあった話は聞いたことがない。

この絵の原画は10月31日までブックファースト銀座コア店のMado GALLERYでごらんになれます。 
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過ぎた日も 明日も 同じ宝もの

2007-10-26 | 絵を描く

絵を描くのはいつも現場主義。
一瞬の感動を逃がさないように一気に描きます。
そして、その時思っていることや考えがそのままタイトルになります。道端で描き始めると、椅子を貸してくれる人が現れたりします。このときも、右側の日よけのある家から女性がコーヒーとクルーリというお菓子をもって来てくれました。私も編み物するわと、階段に腰掛けた彼女を実際より少し若くちょこっと細めに描いてあげたら、「あら~そっくり」といってとっても喜んでくれました。

エーゲ海の島々の景色や街角のひとコマを描いた原画展「ギリシャの島から」会期終了が迫ってきました。ぜひ見に来て下さいね。
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