歴史だより

東洋と西洋の歴史についてのエッセイ

≪囲碁の格言 レドモンド先生の本より≫その1

2021-07-11 18:26:24 | 囲碁の話
≪囲碁の格言 レドモンド先生の本より≫その1
(2021年7月11日)




【はじめに】


 前回にひきつづき、囲碁の格言について考えてみたい。
 今回からは、マイケル・レドモンド(Michael Redmond、1963年~)九段の次の著作にもとづいて、解説してみたい。
〇マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年
 レドモンド先生は、NHKの囲碁講座の講師としても、なじみ深い棋士である。
 そのプロフィールを簡単に紹介しておく。
 レドモンド先生は、1963年生まれで、米国カリフォルニア州出身である。10歳の頃に物理学者の父に教えられて囲碁を始められたそうだ。1978年に大枝雄介九段門下となり、1981年に入段。1992年新人王戦準優勝、2000年九段となられた。数少ないアメリカ出身のプロ棋士で、非アジア人として初めて九段に昇段された。
 最近は、You Tubeでも、「囲碁初級講座」「囲碁中級講座」など、わかりやすい解説をしておられる。例えば、「耳赤の一局」と題して、井上幻庵因碩(八段)と本因坊秀策(四段)の対局を詳細に紹介しておられる(百田尚樹『幻庵』にも触れられている)。

 さて、マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』(NHK出版、2008年)の章立てでは、工夫がなされている。
布石、序盤、(形)、中盤、接近戦と、囲碁の進行に合わせた構成になっている。系統だった論理的構成である。番外編として、3つの格言がはさまれている。「左右同型中央に手あり」という代表的な格言が番外編に組み込まれている。
 以下、その目次を紹介しつつ、今回はその一部を紹介してみたい。




【レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版はこちらから】

レドモンドの基本は格言にあり (NHK囲碁シリーズ)







マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』(NHK出版、2008年)の目次は次のようになっている。
【目次】
まえがき
第1章 布石の構想
1 一にアキ隅、二にシマリ、三にヒラキ
2 星は辺と連携せよ
3 ヒラキの余地残せ
4 第一着は右上隅から
5 カカリは広い方から
6 地は攻めながら囲え
7 広い方からオサえよ
8 ハサミがある方からオサえよ
9 星の弱点は三々にあり
10 二線は敗線
11 二線ハウべからず
12 二線、三線は余計にハウな
13 三線は実線
14 四線は勝線
15 ヒラキの原則は二立三析
16 一間トビに悪手なし
17 ヒラキとハサミを兼ねよ

第2章 序盤の戦い
18 根拠を奪え
19 重くして攻めよ
20 攻めはケイマ
21 攻めは分断にあり
22 モタれて攻めよ  
23 地は攻めながら囲え
24 逃げるは一間
25 弱い石から動け
26 弱い石を作るな
27 厚みに近寄るな
28 厚みは攻めに使え
29 厚みを囲うな
30 スソアキ囲うべからず
31 大場より急場

第3章 正しい形、わるい形
32 二目の頭は見ずハネよ
33 車の後押し
34 千両マガリを逃すな
35 ポン抜き30目
36 亀の甲60目
37 ダンゴ石を作るな
38 アキ三角打つべからず
39 ツケにはハネよ
40 切り違い一方ノビよ
41 アタリアタリは俗筋の見本
42 裂かれ形を作るな
43 ケイマにツケコシあり
44 ケイマのツキダシ俗手の見本
45 ツケコシ切るべからず

第4章 中盤の攻防
46 サバキはツケよ
47 三々の弱点は肩ツキ
48 消しは肩ツキ
49 消しはボウシ
50 ボウシにケイマ
51 格言も時によりけり
52 弱い石にツケるな
53 攻めはボウシ
54 切った方を取れ
55 攻めの基本はカラミとモタレ
56 利かした石を惜しむな
57 模様に芯を入れよ
58 両ケイマ逃すべからず

第5章 接近戦の心得
59 イタチの腹ヅケ
60 天狗の鼻ヅケ
61 馬の顔、犬の顔、キリンの首 
62 鶴の巣ごもり  
63 初コウにコウなし
64 石塔シボリ
65 石の下に注意
66 三目の真ん中は急所
67 六死八生
68 死はハネにあり
69 ナカ手九九は三3、四5、五8、六12
70 眼あり眼なしはカラの攻め合い

番外編
①「一方高ければ一方低く」がヒラキの要領(50頁)
②「ダメのツマリが身のつまり」は大事な戒め(138頁)
③「左右同型中央に手あり」は便利な手筋(184頁)
あとがき




さて、今回の執筆項目は次のようになる。


・本書の「まえがき」
・各章のねらい
・攻め関連の格言
≪No. 6 地は攻めながら囲え≫
≪No. 19 重くして攻めよ≫
≪No.20 攻めはケイマ≫
≪No. 21 攻めは分断にあり≫
≪No.22 モタれて攻めよ≫
≪No. 23 地は攻めながら囲え≫
≪No. 28 厚みは攻めに使え≫
≪No. 53 攻めはボウシ≫
≪No. 55 攻めの基本はカラミとモタレ≫
≪No.70 眼あり眼なしはカラの攻め合い≫

・ケイマ関連の格言
≪No.20 攻めはケイマ≫
≪No.43 ケイマにツケコシあり≫
≪No.44 ケイマのツキダシ俗手の見本≫
≪No.45 ツケコシ切るべからず≫
≪No.50 ボウシにケイマ≫
≪No.58 両ケイマ逃すべからず≫

・石田芳夫氏によるケイマの格言







本書の「まえがき」


本書は、2008年4月から9月までの半年間「NHK囲碁の時間」で放送したものをまとめたものである。
「まえがき」(2~3頁)によれば、マイケル・レドモンド九段が格言を知ったのは、プロ棋士になってからだという。
アマの人へ言葉で伝える難しさに悩んでいた時に知ったので、格言はまさに魔法の杖であったようだ。
日本には、こんな虎の巻があったのかと、ちょっとしたカルチャーショックだったと回想している。
単なるボードゲームや勝負事としてではなく、囲碁が日本文化の一つとして溶け込んでいることを証明しているようで、深い味わいを感じたという。

日本の囲碁の歴史が醸成した格言には、上達へのエッセンスが詰まっている。
本書の目指すところとして、次の点を挙げる。
〇入門者から初級、中級の人は、自然に美しい形の碁が打てること
〇上級者の人にはもう一度、基本に立ち返ってもらうこと
(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、2~3頁)

各章のねらい


【第1章】布石の構想
・一局の中で布石は、入門者や初級者は迷うことばかりである。布石は絵を描き始めるときと同じで、楽しくも悩み多きものである。
・第1章の格言は、そのような人にピッタリのものばかりで、基本的な考え方がいっぱい詰まっているという。
・大きく道を誤らないように、石の進むべき正しい方向をアドバイスしてくれるようだ。
(レドモンド、2008年、7頁)

【第2章】序盤の戦い
・碁の楽しさは石を取る快感にある。
戦いが始まれば相手の石を攻め、追いかけ、その結果として石を召し取るか、大きな地所を作って勝利へと突き進む。
・攻めにまつわる格言はたくさんある。碁を愛する人たちは攻めるのが大好きである。攻め上手になるための金言、戒めをたくさんの格言にしたためてくれた。
(レドモンド、2008年、51頁)

【第3章】正しい形、わるい形
・初級、中級レベルからなかなか強くならない方が意外と多いようだ。
その原因として、レドモンド先生は次のように考えておられる。
「その主たる原因は、正しい形を知らずに、いわゆる俗手、俗筋、わるい形が身についてしまっているから、知らず知らずに気がつかないうちに損を重ねているのです」
つまり、正しい形を知らないこと(俗手、俗筋、わるい形が身についてしまっていること)が、強くならない原因だとする。

そこで、第3章では、次の点に留意している。
・こんな形を作ってはいけない。
・こういう打ち方は損をする。
こうした基本中の基本を教えてくれる格言を紹介している。
(レドモンド、2008年、95頁)

【第4章】中盤の攻防
・第4章では、有段、上級者向けテーマに取り組んでいる。石の動き、バランスを感覚的に吸収してほしいという。
・スポーツの世界でもよく「真似から入れ」と言われる。碁も同じらしい。
理知的なゲームであるから、ともすれば理屈っぽくなりがちだが、そんなに肩に力を入れる必要はなく、いい形や動きをなんとなく真似して打てばいいとアドバイスしている。
(レドモンド、2008年、139頁)

【第5章】接近戦の心得
・最後の章、「第5章 接近戦の心得」は、「攻め合い、死活」に強くなる格言である。
例えば、「六死八生」「死はハネにあり」「三3、四5、五8、六12」「眼あり眼なし」「石の下」「石塔シボリ」「三子の真ん中」などである。
みな格言の中でも、超有名なものばかりである。
(「死はハネにあり」は、すべての格言の中でも三指に入るほど、有名である。死活を考えるときは、ハネて狭めることを最初に考えようと教示している。まさに金言であると、レドモンド先生は評しておられる)
・明日の実戦にすぐにでも効力を発揮してくれるスグレモノである。
・また、「鶴、イタチ、馬、犬、キリン」などの動物名を使ったユニークな格言も紹介している。
(昔の人たちが智恵を働かせて、入門、初心者が覚えやすいネーミングを考えたのであろうという)
(レドモンド、2008年、185頁、216頁)

攻め関連の格言


上記の目次から、次の攻め関連の格言を説明しておこう。

≪No. 6 地は攻めながら囲え≫
≪No. 19 重くして攻めよ≫
≪No.20 攻めはケイマ≫
≪No. 21 攻めは分断にあり≫
≪No.22 モタれて攻めよ≫
≪No. 23 地は攻めながら囲え≫
≪No. 28 厚みは攻めに使え≫
≪No. 53 攻めはボウシ≫
≪No. 55 攻めの基本はカラミとモタレ≫
≪No.70 眼あり眼なしはカラの攻め合い≫

No. 6とNo. 23は、格言の言葉としては同じで重複しているが、布石、序盤といった碁の展開のどの段階で、この格言が有効になるかで、違いが出てくる。

【解説】
≪No. 6 地は攻めながら囲え≫
【「カカリは広い方から」に反した白のカカリ】
≪棋譜≫(22頁のテーマ図)

棋譜再生

白1のカカリは、「カカリは広い方から」に反している。
黒の星間の狭い隙間に白が入っていくのは、相手の敷地が広く見えるという、やきもちが過ぎる。白1は、黒からの絶好の攻撃目標となる。

【白のその後の運命】
≪棋譜≫(22頁の1図)

棋譜再生

白1のカカリにはどういう運命が待ち受けているのか。
黒は、白のカカリにコスミツケ。白がノビたら、黒は星から一間トビをする。これが相手の石を攻めるときの基本テクニックであると、レドモンド先生は推奨している。
白は小さく所帯を持とうとするが、黒はケイマして、包み込むように囲むのがよいとする。
(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、22~25頁)

≪No. 19 重くして攻めよ≫
〇先ず、「重い」「軽い」という囲碁用語の説明をしている。
 「重い」~取られては被害甚大、責任が大きい、さらに動きが鈍重というニュアンスである
 「軽い」~その逆

【「重くして攻めよ」のテーマ図】
≪棋譜≫(54頁のテーマ図)

棋譜再生

例えば、四子局の場合、右上隅で、白1とカカリっぱなしにしていると、黒から攻撃の眼が向けられる。
黒は、白のカカリに、コスミツケ、白がノビると、その白から二間の所にトブ。これが白を重くして攻める基本テクニックである。

【「重くして攻めよ」の基本テクニック】
≪棋譜≫(56頁の3図、4図)

棋譜再生

こうすれば、白が治まることができなくなる。これが白を重くした効果であると説く。
(白としては、黒がハサむと、白は星の黒にツケて、手っとり早く生き形を得る基本定石などがある)

白が一間トビしたら、黒はその間をノゾキ、白を重くするのが好手であるという。白のツギと交換して、黒は上辺を一間トビで身構える。
白はますます重くなり、辺で根拠を作ることも難しくなる。白は逃げるよりなくなってしまう。

(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、54~57頁)

≪No.20 攻めはケイマ≫
≪No. 21 攻めは分断にあり≫
【黒が主導権を握る】
≪棋譜≫(62頁のテーマ図)

棋譜再生


攻める側に立つ場合は、たいていは自分の勢力圏での戦いである。
しっかりとポイントをあげ、主導権を握ることが求められるようだ。

黒の星に対して、白は両ガカリしているので、白2子を連絡させてはいけない場面。
黒1(コスミツケ)が「重くして攻めよ」(No.19)の手筋で白2に黒3が眼目の一手である。
ここから攻めの態勢に入る。

(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、62~63頁)

≪No.22 モタれて攻めよ≫

モタれて攻めよ


≪No.22 モタれて攻めよ≫
・「モタれて攻めよ」は、少し高級なテクニック。しかし、意外と簡明で効果抜群である。
・「モタれる」とは、相手に寄りかかることである。

≪棋譜≫(65頁の1図)

棋譜再生


・黒1、3のツケノビが「モタれて攻めよ」のお手本のような好プレー
・白4と逃げれば、黒5の切りが快感である。

≪棋譜≫(65頁の2図3図)

棋譜再生

・互先の碁で、右辺の中国流の黒陣に白1が打ち込んできたとき、黒2は「攻めはケイマ」で厳しく追及する
・続いて、黒6のツケが巧い。
・白7、9と受けるしかなさそうであるが、ここで黒10のケイマが絶好。
⇒白はもはや危篤状態に陥った。

(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、65~67頁)

≪No. 23 地は攻めながら囲え≫
格言の言葉は、No. 6と同じである。
攻めに関する様々な格言の中で、究極の結論ともいうべきものは、「地は攻めながら囲え」であると、レドモンド先生はみている。
いろいろなことが、この格言に集約されているそうだ。

実戦例を紹介しつつ解説している。
・右下隅で、黒は「攻めはケイマ」からと、行動開始。白が中央へ頭を出そうとすると、黒は押した後、ケイマする。黒は中央へと支配圏を広げることになる。
(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、68~69頁)

≪No. 28 厚みは攻めに使え≫

【1図】(85頁)
≪棋譜≫

棋譜再生

上辺の白一子(10五)が宙に浮いている。
そして右上隅には、黒の外回りの勢力=「厚み」が築かれている。
碁は地を囲うゲームである。

だから今、白一子に黒A(11四)と囲っていいなら話は簡単であるが、それではあまりに元気がないという。こういうシーンでは、「厚みは攻めに使え」という格言が戦意を鼓舞してくれる。

黒1のカケが豪快な攻めである。
白2から動き出すが、黒3、5と一歩ずつ先を行く。
右上隅の厚みのパワーに向かって、相手を押しやる気分だという。
黒1から9までのように、背後から迫る要領である。
(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、84~85頁)

≪No. 53 攻めはボウシ≫
右辺の白一子(16八)への正しい攻め方は、黒1の「攻めはボウシ」がよい。
攻めるときは、一歩間隔を置いてプレッシャーをかけるのが賢い。そして中央脱出に立ちはだかることを真っ先に考える。
行く手を阻まれた白(16八)は、どう逃げ、サバくか。
下方には岩のように固い黒の厚みが待ち構えている。

【1図】(169頁)
≪棋譜≫

棋譜再生


白2には黒3のボウシが簡明な攻めである。
白4には黒5と上辺を豊かにする。
右辺の白には、黒a(18八)と打ってb(18六)とc(18十)を見合いにする強打が残されている。
白は大きな不安を抱えたままである。
(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、168~169頁)

≪No. 55 攻めの基本はカラミとモタレ≫
【テーマ図 当然の反撃~カラミ攻め】(177頁)
≪棋譜≫

棋譜再生


危なそうに見えても一つだけなら、なかなか攻めの効果が上がらない。そこで攻めの基本として、カラミ攻め、モタレ攻めが有効である。
部分的テクニックの「モタレて攻めよ」はすでに述べた。
ここでは盤面を大きく使った、カラミとモタレの攻めである。
白1の挑戦には、黒2の反撃は当然。
黒2に対して上辺の方を白3と早逃げするのは、黒4と形の急所を攻める。
右辺の白は一気に息苦しくなった。白5と頭を出しても、黒6から8と好調なカラミ攻めが続く。
(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、176~177頁)

≪No.70 眼あり眼なしはカラの攻め合い≫
眼のある石と眼のない石の攻め合いでは、眼のある石が有利という原則を教えているのが、この「眼あり眼なしはカラの攻め合い」という格言である。
但し、有利であって、必ず勝つということではないので、注意を要する。

【眼あり眼なしはカラの攻め合い】
≪棋譜≫(221頁)

棋譜再生


・黒1と眼を作り、白2から黒5まで。白は手出しできない。
(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、220~221頁)

ケイマ関連の格言


上記の目次から、次のケイマ関連の格言を説明しておこう。

≪No.20 攻めはケイマ≫
≪No.43 ケイマにツケコシあり≫
≪No.44 ケイマのツキダシ俗手の見本≫
≪No.45 ツケコシ切るべからず≫
≪No.50 ボウシにケイマ≫
≪No.58 両ケイマ逃すべからず≫

≪No.20 攻めはケイマ≫
【攻めはケイマの例】
≪棋譜≫(59頁の1図)

棋譜再生


・思いっきり攻めたい気合いのときこそ、この「攻めはケイマ」の格言がピッタリである。
・互先の碁で、双方の陣形がほぼ整ったところで、白(17九)が黒陣に深く突入してきた場合、黒は手厳しく反撃しなければならない。
・この場合、黒1のケイマが厳しい攻めである。白2がケイマで受けても、黒3も再びケイマで覆い被って、攻め倒す姿勢で、白を圧迫する。
(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、58~61頁)

≪No.43 ケイマにツケコシあり≫
・ケイマは一間トビと並んで、よく打たれる手
・長所は、「攻めはケイマ」のときに発揮されるが、一間トビと違って、弱点もはらんでいる。
・「ケイマにツケコシあり」は、ケイマに攻めるにはツケコシで切るのが本筋、急所であると説いている。
※ツケた石は捨て石になることもありうる(134頁5図参照のこと)

≪棋譜≫(134頁5図)

棋譜再生


(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、130~131頁)

≪No.44 ケイマのツキダシ俗手の見本≫
・「ケイマのツキダシ(突き出し)」は、ふだん先手だからと何気なく打ってしまう俗手である。これは、相手の弱点をなくすお手伝いをしただけで、大損であることを教えている。
・ケイマを攻めるには、ツケコシが本筋で、ツキダシが俗手であることを、レイモンド先生は証明している。

【ケイマのツキダシの例】
≪棋譜≫(132頁のテーマ図)

棋譜再生

黒1、3、5が「ケイマのツキダシ」と呼ばれる俗手である。

(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、132~135頁)

≪No.45 ツケコシ切るべからず≫
・「ケイマにツケコシ」は本筋の厳しい攻めであり、たいていは真正面から戦うしかないが、対処法もないことはないようだ。
・「ツケコシ切るべからず」の格言で対応できれば、ツケコシの威力をかわすことができる。
⇒白2、4がまさに「ツケコシ切るべからず」の一手である。黒は何か肩透かしを食った気分になる。

≪棋譜≫(136頁)

棋譜再生


【注意】「ツケコシ」は万能ではなく、「切るべからず」の対応を考えておく必要がある。
⇒ツケコシで直接攻めるのではなく、外から包むように打つべき場合もある。
(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、136~137頁)

≪No.50 ボウシにケイマ≫
・辺に構えた石に黒1がボウシするのも、よく打たれる「消しはボウシ」の常套手段であるが、これに対し白2は、「ボウシにケイマ」の格言のように、ケイマで受けるのが一番自然であるようだ。
・「広い方」にケイマするのが普通であるが、A(4七)受けて地を完成させてしまうのも考えられる。
【ボウシにケイマの例】
≪棋譜≫(160頁のテーマ図)

棋譜再生


【注意】「ボウシにケイマ」ではなく、ブツカリで受ける形もある(163頁7図)
≪棋譜≫(163頁7図)

棋譜再生


(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、160~163頁)

≪No.58 両ケイマ逃すべからず≫
・「両ケイマ逃すべからず」は、模様に関する格言でも代表的なものである。まさに金言である。
・模様が拮抗している場面では、スケールの大きさが命である。相手との大きさ比べで後れを取ってはいけない。白からツメられた大事な場面で、黒1のケイマは盤上この一手である。両方にとってケイマにあたる地点である。これは、互いに逃してはならない天王山の一手であると、レドモンド先生は強調している。
【両ケイマ逃すべからずの例】
≪棋譜≫(182頁のテーマ図)

棋譜再生

(マイケル・レドモンド『レドモンドの基本は格言にあり』NHK出版、2008年、182~183頁)


石田芳夫氏によるケイマの格言


石田芳夫氏は、前回も紹介したように、ケイマの格言について、いろいろなものがあると説く。
たとえば、
〇ケイマのツキアタリ
〇ケイマのツキダシ
⇒この二つは、初歩的な悪手のサンプルである。
(レドモンド先生は、「ケイマのツキアタリ」については言及していないが、「ケイマのツキダシ」には、「No.44 ケイマのツキダシ俗手の見本」で言及している)

また、
〇ケイマにツケコシ
〇ツケコシ切るべからず
⇒これらは絶対とはいえないが、ケイマにまつわる手筋とその心得である。
(レドモンド先生も「No.43 ケイマにツケコシ」「No.45 ツケコシ切るべからず」で言及している)

そして、実戦へのアドバイスになる格言としては、次のケイマの格言を挙げている。
〇攻めはケイマ、逃げるは一間
(レドモンド先生も「No.20 攻めはケイマ」「No.24 逃げるは一間」で、それぞれ解説している)

☆石田芳夫氏は、「ケイマのツキアタリ」というケイマの格言に関連して、次のような問題を出している。
【第90題 [黒先] 基本型】
≪棋譜≫
・白にハネられたところ。ある基本型ですがどう打ちますか。

棋譜再生


【失敗図(ツキアタリ)】
≪棋譜≫

棋譜再生

・黒1が、ケイマのツキアタリという初級ミス。
・黒3、白4までは断点が多く形もわるい。これは厚味とはいえない。

【正解図(ツギ)】
≪棋譜≫

棋譜再生

・だまって黒1とツグのが厚い本手。こうして白の応手をきくものである。
・黒1に白2なら、黒3とツケて、根拠を確保するのが、常用手段。
⇒このあと、黒は、上辺あるいは右辺からのハサミを見合いにする
(石田芳夫『目で解く上達囲碁格言』誠文堂新光社、1986年[1993年版]、159頁~160頁)

【石田芳夫『目で解く上達囲碁格言』誠文堂新光社はこちらから】


目で解く上達囲碁格言



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