legno-Diario-自閉症児は不思議生命体-

~自閉症のすーさん(小学1年生)といい婆さんのなんでもかんでも~

懺悔あるのみ

2005-03-27 05:52:00 | すーさん



この調子に乗った選択がこのあとすーさんと爺婆を苦しめることになるとは知らずに・・・婆さん一家は東京ディズニーランドへ行った。

勝手知ったるディズーランドへの道順。途中爺さんと婆さんは後部座席のすーさんに「ミッキーさんに会いに行くよ」と弾んだ声を掛けながら難なく大駐車場へ到着。
チケット購入もあっさりクリア。

入場するとワールドバーザール前の広場にはまるで婆さん一家を歓迎するようにたくさんのキャラクターが出迎えてくれていた。
着ぐるみを怖がるすーさん・・この歓迎は素通りかと思いきや少々遠くからではあるが「ウヒヒ」程度に友好気分。
「いいんじゃない? 今日のこのスタートww」
「すーさん、あそこにドナルドさんいるよ」
「ドーナルドォさん」と言って目はドナルドが皆様に囲まれながらクルクルしている姿を追っていた。 なので、一緒に写真は撮れないけど、今日のことを想い出してくれるきっかけとして、ドナルドとその周りにいて笑っている人達を写真に撮った。
「本番はこれから・・・。」

すーさんは、過去にミッキーと4回写真を撮らせてもらった。 そのうち3回は「ミッキーの家とミート・ミッキー」(アトラクション番号30番)で、残り1回は去年の9月、ディズニー・シーで大きなガタイをベビーカーに埋め、耳ふさぎをして泣いているすーさんを見つけたミッキーさんがわざわざ人垣を押しのけすーさんの為に記念撮影をしてくれたのである。 爺さんも婆さんもすーさんが泣いてばかりいた「あの時のディズニーシー」には意気消沈していたが・・・。

今日は違う。着ぐるみだってOKだったんだから、ミート・ミッキーなんて喜んじゃうよね~~~きっと。
そう疑いもしないでトゥーンタウンのゲートをくぐった。

平日だって言うのにたくさんの人がトゥーンタウンの中にいた。 ベビーカーが目につく。 
「くるま、かえるぅ~」
「もうちょっと待って、ミッキーさんに会えるよ」

ミート・ミッキーは50分待ち。 本当はいけないことなんだけど、並んで待つことだけが嫌なのであれば・・・と思った爺さんは「俺、並んでおくよ」と言って最後尾に1人並んだ。 ミート・ミッキーの前にある噴水の脇に救いを求めるように吸い寄せられ「かえるぅの~~」と声をあげるすーさん。 「ドナルドのボート」も一年前はそこそこ喜んだから「ここ、ここだよ」と中へ入ろうとしても「くるま、かえるぅ~~」と言いながら、入り口前の水の流れだけを見つめるすーさん。 

どこまで進んだかわからないミート・ミッキーに並んでいる爺さんの所へ合流しようと仕切りロープの中へ入ろうとすると火の点いたように泣き崩れるすーさん。 最近「爺さん好き」に徹しているすーさんなので「爺さんの所へ行こう!!すぐそこだよ」と言う婆さんの声はすーさんの頭の上をかすめて通り過ぎて行ってしまう。 仕方ない、携帯を出そう・・・爺さんに電話した。 
「隣のミニーの家の出口の所にいるんだけど、爺さんはどこ?」・・・婆さんはそう言っている自分の声がレベルMAXで硬くなっているのがわかった。
「あんまり進んでないけど・・ここだよ~~~~」と爺さんが茂みの向こうから手を上げた。
「ほらっ・・爺さんだよ。爺さんの所へ行こうよ、すーさん」
目で爺さんの「お~い」が確認できたすーさんは必死になった。 きっとこの時すーさんは「爺さんの所へ行ったら解放される」そう思ったのかもしれない。
「もう帰ろう!!」 爺さんと合流してから婆さんは言った。
「俺がすーさんを見てるから。もう少しでミッキーさんに会えるんだもん」 爺さんはそう言って腰が痛いのにデカイすーさんを抱っこして話しかけ時間を稼いだ。

入り口間近になると1,000円でスタッフの撮ってくれる写真サービスがあることを話してくれるキャストがいた。
去年これで撮った写真は玄関に飾ってあって、すーさんのお気に入りだった。
あの写真・・持ってくればよかった。・・・婆さんはふとそう思った。

「さぁ、これからミッキーに会えますよ、どうぞ」と目の前の縄が解かれた瞬間・・・すーさんは本格的なパニックが起きた。
爺さんはすーさんを抱きかかえて中へ3m程進んで降ろした・・・「ウギャ~~~~」泣き叫ぶすーさん。
どこからともなくすーっとちょっと年増の(失礼)キャストの人が婆さんに駆け寄ってきた。
「あの~。お子様暗い所に怖がっていらっしゃるようです。無理に中へ入らなくてもいいですよ。どうぞこちらへ」
そう言って入り口の方へ戻ることを促してきた。
「以前は大丈夫だったんですけど・・・」婆さんは力のない声で答えた。
「爺さん、もうやめよう」・・・婆さんの決断だった。

「前はここ大丈夫だったんです」と爺さんがおねおば(お姉さんとおばさんの中間)キャストに言った。
「明るさの変化がお子様には怖いのかもしれませんね。外が暗くなるころまでどこかで遊んでいるご予定ですか?」
「わかんないです」
「では、お名前をお聞かせくだされば、もし、外と中の暗さの差がなくなった頃においで頂ければもう一度待つことはなくこちらの中へご案内することができますけど」
「そうしよう」と爺さんと婆さんがおねおばキャストさんに名前を伝えた。

入り口付近で待っていた人から「あらっ、あの子帰ってきちゃったわよ。ほらっ、泣いてるから怖いのよ。怖くないののにねぇ~~」と言う声がはっきり聞こえていた。

すーさんはパニックを起こしながらもロープを超え心の支えと言うべき噴水の淵に向かった。

「少し休もう」 婆さんはそう言うしかなかった。

「俺さ、あのキャストの人に『外と中の暗さの差がなくなった頃』って言われて、そういうこともあるのかな?って思えたよ」と爺さん。

「うん、そうだね。すーさん、わしらが思っている以上に暗さに敏感になってしまったのかもしれないね」

「これからどうする?」

「・・・・・・・・・どうしようね?」

婆さんは普段外すことのない腕時計を見て決めた。

「パレードだけ見て帰ろう」

心の中では 「お~~~~~い、J蛙君聞こえるかぁ~~??わしらどこでパレード観たらいいんだよ??」

去年の11月、わしは新幹線に乗ってやってきたJ蛙君のお導きでディズニーシーでのイヴェントを全て良い位置で良いスケジュールで過ごせ、垢パンダ殿の盛り上げ効果を満喫したことが懐かしくもあり・・どっかで「あの時はよかったな」なんて思ったりしていた。

「ここでいいよ」爺さんはトゥーンタウンのゲートの下で「ディズニー・ドリームス・オン・パレード」を待つことにした。

パレードの音楽は大きい。 これですーさんがまたパニックを起こしたらそのまま駐車場行きだ・・・わしはそう思っておった。

だが、すーさんの反応は予想外だった。

爺さんの言葉を借りれば「今までに見たことのない嬉しそうな顔」をして斜め向かいに止まって踊り、話すミッキーさんに喜んでいた。

婆さんは、「どうしてこのパレードが良いのか?」知りたい気持ちもあってパレードの写真を撮影した。

爺さんはすーさんの腰を支えながら婆さんより3m離れ、よりミッキーさんに近い位置でその雄姿を見ていた。

わしは、デジカメをバックに入れようとした時自分の右小指の爪が3分の2剥がれていたことをかすかな痛みで知った。

爺さんのウエストバックにも絆創膏がないことがわかって・・・救護室・・・婆さん用として、そしてすーさん用としてかなり遠い救護室へ行くことにした。

救護室は静かだった。 看護士さんが優しい口調で迎えてくれた。

看護士さんから手渡せた絆創膏を貼りながらついつい今日、さっき、ディズニーランドへ来てからのいきさつを語ってしまった。

ネット上では言うことができないが、すーさんのようにまだ療育手帳を手にしていない、だけど、自閉症って子に対してのディズニーランド側が用意している制度があることを知った。

爺婆には、駐車場へ向かう前に行きたい場所ができた。

メインストリートハウスへ。

もし、なんらかの障碍によってディズニーランドを楽しめないまま帰路に着いてしまう前にこの「メインストリートハウス」へ相談に行くことをお勧めする。

午後5時の「ブーケ・オブ・ラヴ」(スペシャルプログラム)を大きなパニックを起こさず観ることができたすーさんは、最近好きになったハンバーグとストロベリーデザートを仕込んで再度暗くなってから「ミート・ミッキー」へ行くこととなった。

もう、この時点での爺婆にはなんの思惑も期待もなかった。

ミート・ミッキーに着いてキャストの若いお姉ちゃんに名前を告げるとさっきとは違うおねおばキャストがどこからかやってきた。

「じゃ、裏から入ってミッキーの映画を観るところに行きます」

「やだやだ・・くんま~くんま~」とすーさんは言っていたが、すーさんを抱っこする爺さんにはそれなりの覚悟が見えていた。
「じゃ、こちらへ」
案内された所は映画の撮影中のミッキーと記念写真を撮るために待つ所・・・。

「やだ~~帰るぅ~~~」と叫ぶすーさん。

キャストはすぐに又出口へ戻るように促すキャスト。

「では、今3組の人がミッキーとの撮影を待っているので、それが終わり次第すーさんをお呼びするようにしますから」

キャストは手際が良い。

でも、すーさんが既に「怖い所へまた来てしまった」とパニックを起こしている以上婆さんは1mmの期待も持ってはならん・・・そう思った。

「爺さん、これ以上はすーさんがかわいそうだ。確かにミッキーさんに会ってすぐ撮影ってことになったらまた違う展開があるかもしれないが、今日は帰ろう」

すーさんを抱っこしながら腰の痛みに耐えている爺さんに宣告した。

「わかった」

婆さんは「さぁ~今、どうぞ」・・・そう言ってくれたキャストに「申し訳ない」と詫びた。
キャストは「では、また、こちらへいらした時には楽しんでもらいたいのでいらして下さいね」と深々と腰を折って送り出してくれた。

爺さんは「もう少しだったのになぁ~」と言っておったが、婆さんはこれでいいと思った。
爺さんだって怖がるすーさんを無理矢理にどうこうすることなんて考えていない。
ただ、「もうちょっと」と思っただけだ。それは、婆さんも同じ気持ちだった。

午後7時30分からのエレクトリカルパレードも始まる直前周りの電気が消えた時「ヤバイ」と爺さんと顔を見合わせた瞬間、すーさんが「やだやだ~~かえるぅ~」と叫んだとたん周りの視線がすーさんに集まったのを見て「しばらくはディズニーランド」には来れないね」と思った。

でも・・わしらはこれでいい。
エレクトリカルパレードをこそこそ途中で切り上げても「ちょっとは楽しんでくれた」すーさんを見れたし、車に着く間に雨が突然降ってきたから「すーさんが濡れない事を教えてくれたんだ」と思えるし。

すぐに家につくよ。
家に着いたらお風呂入ろう。
今日の歯みがきはそこそこでいいよ。
今日はごめんね。

すーさんは久しぶりに夜叫びをあげた。
いつもよりグレードアップして「悲しげ」だった。
だが、婆さんは「ごめんよ、悪かったね。怖い思いをさせてしまったよ」
そう何度もすーさんの頭をグリグリしながら懺悔しておった・・・とさ。




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6 コメント

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知らなかった・・・。 (みちこ)
2005-03-27 06:53:36
>ネット上では言うことができないが、すーさんのようにまだ療育手帳を手にしていない、だけど、自閉症って子に対してのディズニーランド側が用意している制度があることを知った。

そんな制度があるんですね。

自閉症協会の掲示板過去ログ(12ページ、4番)にもTDLのサービスについて、

書かれてあったので、その程度しかしりませんでした。

そっかー。でも、お疲れ様でしたね。

ゆっくり休んでください。

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Unknown (ノノパパ)
2005-03-27 10:59:17
 お疲れ様でした。

 レジャー施設等に連れて行くと大変なことになるので、連れて行くのが億劫になってしまって、結局人のあまりいない所に連れて行ってしまいます。

 いい婆さんは、偉いな。ちゃんと連れいてって、そして沢山の経験と少しであってもその笑顔を見出すことが出来る。私も少し見習わなくちゃ。

 ちなみに私は未だTDLに行ったことがありません
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Unknown (まさるママ)
2005-03-27 19:53:19
大変でしたネ!!



TDLでは心身に障害を持っている人を対象に『待たずにアトラクション』に案内するというサポート『ゲストアシスタンスカード』があったんだけど、不正する人が続出で今は、診断書提出か、手帳を見せないといけないらしい・・・。

『ゲストアシスタンスカード』を復活させようと頑張っているHPがある

http://www.eft.gr.jp/gacard/tdrcampaign.htm

詳しく載っているよ!!



まさるはミッキー系に全然興味なくて・・・

すぐ出て来た記憶が・・・

でも婆さんは、優しいネ~

私なんか、『せっかく高いお金払ったのに』怒った記憶が遠くで・・・。
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たびたびすんません。 (まさるママ)
2005-03-27 20:06:49
この前、養護のお友達は人気アトラクションにだけ用意されている『ファストパス』を利用したって言ってた。

使い方はカンタンで、利用するアトラクションの前にある発券機にパスポートを差し込んで「ファストパス・チケット」を受け取るだけ、チケットには指定時間が明記されているので、その時間内に戻ってくれば、いつもよりずっと少ない待ち時間でアトラクションを楽しむことができるらしい。

でもやっぱり『疲れた』って言ってたヨ
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研ぎ澄まされた感覚 (うさこ86)
2005-03-28 00:36:25
わたしがブログで知り合ったりちゃさんの娘ちゃんが、ちょうどすーさんと同じような感覚の持ち主で、普段外食する時などにも『入れるお店』と『入れないお店』があり、人から『わがまま』と思われて…と言っておられました。

あと、いつも通っているピアノ教室の先生のお宅のマンションで、たまたまエントランスホールの照明がついていない日に、そこから先に入れなくて帰ってきたこともあるそうです。



一般的には何でもないように思える事でも、この子達にとってはとてつもなく辛い事であるという場合があるんですね。

研ぎ澄まされた感覚ゆえに、暗さひとつにしても『真っ暗』に思えたりするのかもしれません。



…と思うと、すーさんが以前から『夜目を閉じるのが恐い』事を思い起こすと、周囲の暗さによって、何らかの恐怖感を呼び覚ますのだとしたら…。暗闇がすーさんのウィークポイントなのかもしれないね。



私だって、もし『バンジージャンプ、飛んでみなさいよ!みんな飛んでるよ!恐くないよ!平気平気!ほら、下で男前が待ってるよ』なんて言われても絶対嫌!!

すーさんにとっては、暗がりに対してそれと同じくらいの恐怖感があるのかもしれないと思うと、いくら可愛いミッキーさんとて、すーさんの気持ちを平気に変えるのは難しいだろうね。

いや、実際の気持ちはすーさんに聞いてみないとわからないけど、なんだかそんな気がする。



ディズニーランドと言えば『アトラクション!』と思いがちで、私なんかついつい出来るだけ沢山のアトラクションを制覇するぞ~!と思ってしまうんだけど、よくよく考えてみれば、苦手な暗がりに行く事無く楽しめる場所やイベントも沢山あるし、今回のように昼間のパレードを見たり、ステージで繰り広げられるショーを楽しんだり、すーさんオリジナルのディズニーの楽しみ方ができれば、それでいいんじゃないかな



いい婆さんのように、決して無理強いせずすーさんの気持ちを大事にしてあげた事は、すーさんにとっても救われたし、ディズニーが大キライにならずに、今後に可能性を残せたと思う。



昼間のパレードで、すーさんを喜ばせる事ができたんだから、それだけでも収穫だ。

次回のディズニーランド(ディズニーシー)ですーさんにどんな喜ばせ方をするか、いい爺さんと楽しんであれこれ計画するのもいいかも!



すーさん、今夜は楽しいパレードの夢を見るんだよ~
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そういえば (ぴろりんぱ)
2005-03-28 20:49:49
我が長男も暗いトコがだめだったときがあった。



某飲料メーカーの見学に行ったとき、最初映画を見せてくれるんだけど、

「暗い~!」とパニック起こして一人だけずっと外に出ていた。



うーん。



そんな長男も今年の正月には真っ暗い映画館で「ゴジラ」を見たよ。

そして“映画を映画館で見る”ことに快感を覚えたのか、

「デュエルマスターズを見に行く」と言って聞かない。



すーさんも何年か後には暗いのも平気になるかも~。



私は「デズニーランドは親が疲れるから」と、行かない人よ~



子どもめっさ行きたがってたよー。



シーに1回行ったきりだー。







さて。



それではしばしさらばじゃ~~。
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