さすがに日中の気温が30度を超えることが疎らになって来た先週末、
夏の疲れを癒しに朝もはよから爺さんとすーさんを叩き起こし外出した。
最初はヤクルトの工場へ見学に行くつもりが・・・予約でいっぱいだったので、
この秋の保育園の遠足予定地である、先日、レッサーパンダが熱中症で死亡してしまった動物園に行った。
何度も訪れた動物園なのでうちの娘すーさんは新鮮さなど持たなかった・・・ようだ。
まぁ、動物園は軽めのジャブってことで、その後は
”例の場所”へお連れしようぞ・・ヒィヒィヒィ。
お得意のサル山見学を終え、動物園の奥にある
ミニ鉄広場に到着。
どこにでもあるような遊具を一通りあいさつ程度に遊び終わった時、
すーさんが一言、
バス だね!
と申すのじゃ。
いや、こりゃ、電車じゃ
すーさん: 電車 シュシュシュ 出発進行!
随分、軽快な発言じゃ。
婆さん: 電車 じゃが 乗ってみるかい?
すーさん: はい! 乗ります!!
Oh! 今、何と仰せになった?
何度も誘ってみたのに絶対 ないの! と言って乗らなかった奴が。
これでやっと秋になったのかぁ~
(夏の調子の悪さから脱却したか!)
ムフフフ、婆さんとすーさんはお1人100円のミニ電車に気分よろしく乗車した。
乗車時間は約3分ほどだったであろうか、すぐに1周して停車した。
すーさんはあっさりミニ電車から降り、さっぱりした顔で
サル山 いこう!!
また、いくんですかい?
すーさん: さぁ~いらっしゃい、いらっしゃい
(あなた、サル山の呼び込み担当?)
婆さん、さすがに飽きたぞよ。
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ピン・ポン・パン・ポーーーン↑(園内放送開始)
プラネタリウムをご覧になる方は1時までになかよし広場前にお集まり下さい。
ピン・ポン・パン・ポーーーン↓(園内放送終了)
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ニャッハッハッハ、
プラネタリウムじゃと・・・?
すーさんは照度の変化に非常に弱い。
初体験のましてや事前予告していない
プラネタリウムに行くことができるのか?
動物園にいる今の婆さんには
プラネタリウムについてすーさんに説明できるのは・・?
お星様 を 見に いくよ
なんとも簡潔明瞭な説明である。
ゆっくりと辺りが暗くなっていく過程ではやはりウギャウギャもがいておったが、
完全な闇夜になり
北斗七星の説明が始まる頃には
背もたれに体を預けられるようになったすーさん。
時折、おじさんの解説にかなり余計な合いの手を入れたりしたが、
1時間の投影を無事クリアした。(拍手喝さい)
すーさんの
「はじめて物語」を2つもゲットしたのに・・・
さぁ、お次は
”例の場所”さ。
例の場所とは
「健康センター」である。
もちろん、すーさんは行ったことがない。
でもって、婆さんはすーさんに次なる目的地を伝えた。
大きなお風呂 へ いくよ
これまた簡潔明瞭な説明である。
ミニ電車や
プラネタリウムに比べれば不安材料はないに等しい。
この心の緩みが癒しとは別方向へ誘い込んでいるとは
この時は想像もしていなかった。
健康センターに到着。
婆さんとすーさんは
女湯へ。
爺さんは1人
男湯へ・・・当たり前のように入っていった。
すーさん: 大きなお風呂 いっぱーーい(ルンルン)
婆さん: その前に頭と体をきれいに洗おう
すーさん: そうしよう!
婆さんはすーさんの洗髪をした後、隣の洗い場にすーさんを座らせ
婆さん: 自分で体を洗ってね、ほれっ、これボディシャンプーだから
すーさんは自宅の狭いお風呂場とは違うからなのか、
自分の体を
ゴシゴシ、ゴシゴシ、と言いながら洗っていた。
なんか、いいねぇ~この
お任せ気分。
おっ、これはなんだ?
へぇ~
泡タイプの洗顔フォームか。
Oh! すーさんやゴシゴシ洗ったら次はシャワーでシャワシャワ流してね~。
さすが健康ランドのシャワーは勢いが違うねぇ。
すーさんがシャワーからお湯を出して体の泡を流しているのを確認したので、
婆さんは泡タイプの洗顔フォームを使って洗顔を開始した。
やめなさい
やだ やだ
なにやら、近いような遠いような場所から叫び声が・・・
婆さん、泡だらけの顔から片目分だけ隙間を作ってすーさんを見た。
しっかり立ってシャワーで泡を洗い流して・・・・・?
ない!
シャワーヘッドは手に持っていた。
だけど、シャワーから出ているはずのお湯がすーさんの体に当たって
ない!
隣と言っても通路を挟んだ隣の洗い場の中年女性に勢い良くシャワーのお湯が当たっていた。
まずい!
大急ぎで顔全体に広がっている幸せの泡を流し、
すーさんからシャワーヘッドを取り上げた。
すーさんは悲しいくらいに
無表情で
ずぶ濡れにしてしまった女性の方でも婆さんの方でもなく
正面の
鏡に向って立っていた。
とにかく、シャワーのお湯をかけてしまった女性に急いで歩み寄り謝罪した。
「まったく、何度やめてって言ってもやめないのよ」
「本当に申し訳ありません」
メガネをかけていない婆さんにはいくら顔の泡を流しても
その女性の表情をはっきり見ることはできなかった。
すーさんにちゃんといけないことは何だったのか。
今、ここで伝えなくてはいけない。
シャワーはすーさんの頭と体にかけるもの。
他の人にかけてはいけない。
あの人に謝ろうね。
すーさん: ごめんなさい
すーさんがそう言った時には相手の女性はどこかの浴槽に行ってしまったのか
いなかった。
凹んだ婆さんは浴槽に入らずこのまま
健康センターから消え去りたいと思った。
すーさんが「泡のお風呂に入る」と言ってジャグージーバスに足を入れようとするのを
無意識に阻止してしまった。
すーさんが
「なぜ??」と言わんばかりの表情でわしを見る。
そうだよね、大きなお風呂に行くよ・・って言ったのはお母さんだもんな。
すーさんは、露天風呂と屋内風呂をまるで
時計の振り子のように
何度も行き来した。
その姿をくつろいでいる多くの人達は不思議そうに見ているのだけはわかった。
既に幼児とは見えない立派な体格のすーさんの行動は、
やはり
奇怪に見える。
疲れた。
女湯から出て爺さんと合流した。
さっきのシャワー事件、屋内外のお風呂を異常に行き来することを
爺さんに話したが、全然心は軽くならなかった。
迷惑行為、奇怪な行動・・・ズシリと
重い。
初めて見た「冬のソナタ」のパチンコ台に100円入れてみた。
また100円。
またまた100円。
パチンコにとりつかれたかったのかもしれないな。
そんな婆さんを思いやってくれたのだろうか、
爺さん: 今度は俺がすーさんを入れるよ、ゆっくりとお風呂に入ってきなよ
婆さん: そうさせてもらう
爺さん: すーさん、今度はお父さんとお風呂に入ろう
すーさん: おとうさん と はいる!
男湯と
女湯の入り口の前で
「じゃぁね」と言ったらすーさんが婆さんに付いて来た。
爺さんが
「お父さんと入るからこっちだよ」とすーさんの腕を取って引き戻した。
少しだけ後ろめたい気持ちもあったが、すぐにかき消すことができた。
単身、
女湯の脱衣所のロッカーの鍵を開け、
携帯電話と小銭入れをポケットから取り出した
その瞬間、サザンのDarty Old Man の着うたがフルボリュームで鳴った。
爺さんから・・・だ。
爺さん: すーさん、そっちにいる?
婆さん: へぇ?? そっちでしょ?
爺さん: 俺に付いて来てると思ってたんだけど、いないんだ
婆さん: うそ?
(こんな時に嘘をつく奴なんていないだろうについそう応えてしまう)
爺さん: ホント
婆さん: 探してみるから
爺さん: うん
どこにいるんだよ? あいつは!
まずは
女湯のスペースから出て1階のソファーや売店を見渡した。
いない。
まさかとは思うが再度
女湯スペースに戻り脱衣所の
化粧スペースから
体重計付近も探す。
いない。
ムダだとも思ったが、脱衣所の何列もある長いロッカーの通路を探した。
婆さんのロッカーの列に戻り・・・いない・・と確認したと同時に
なぜか気になるものがあって一列手前まで後退してみると
そこに何やら人が
団子状になっているのが見えた。
その団子の
中心に見覚えのある
裸体が1つ・・・・。
いたーーー。
「この子は誰?」「どうしたの?」「誰と来たの?」
3組位のファミリーに囲まれ、お母さんや子供達から質問されていて
すーさんは脱いだ服を全部まとめて両手に抱え
裸体のまま少々困った顔をしてはいたものの
直立不動で数々の質問にただただ
無視を決め込んで
そこに・・・・
いた。
婆さん: すいませ~~~ん
すーさんは服が落ちないようにぎこちなく婆さんに向かって走ってきた。
お・・・・おとうさ~~~ん
凍りつく婆さん。
婆さん: お父さんじゃないってば、お母さんじゃないか!
すーさん: さぁ、おとうさん と お風呂に入るよ
すると、団子の中の1人のお母さんが
「よかったね」とおっしゃって下さったのが聞こえた。
婆さん: ありがとうございました。お世話をおかけしました。
素直にそう・・・言えた。
しかし、この裸体をなんとかせねば。
爺さんにも知らせないと・・・・。
すーさんをそのまま一列隣の婆さんのロッカーの前まで連れて来て、
すーさんが両手に抱えていた衣服を着せながら爺さんに電話した。
婆さん: いたよ
爺さん: どこに?
婆さん: こっち
爺さん: なんでだ?
婆さん: わからん
すーさんと離れることに気が引ける思いは倍増していたが、
とにかく、服を着せたすーさんを爺さんに引き渡した。
婆さんは一目散にハーブサウナに駆け込んだ。
ジッとして整理したかった。
しかし、整理のしようがなかった。
なんともならないザワザワ感のコントラストだけがハッキリするだけだった。
長いような短いような1人だけの入浴タイムを終了させ、
爺さんとすーさんと合流した。
爺さんは言った。
「これからこういうことが増えるんだろうね」
増えるんかい?
そうじゃな、増えるんじゃな。
【追伸】
たった1つだけ次に繋げられるかもしれないことがあった。
それは、すーさんに婆さんのロッカーのナンバー
「1125」を見せればよかったと。
すーさんは「1列」違えどほとんど
「1125」と同じ位置で
立ち往生していた。
婆さんは数字を頼りに自分のロッカー
「1125」を探り当てたが、
すーさんは具体的な情報を持たずして
正解により近い所まで辿り着いていた。
人様にご迷惑をおかけしてしまったが、この能力はすごいと言える。
【追伸2】
わしらはやっぱり
慢心していた。
トイレの
男女の区別を間違うことのないすーさんであるが、
女湯と
男湯の区別に初めてであるがゆえに曖昧さがあるはずと
配慮すべきであった。
シャワーを直噴射させてしまったご婦人にも、
優しい気持ちで
「この子は誰?」と心配して下さったお母さんにも、
本当に申し訳ないことをしまったとお詫びの気持ちが溢れて止まない。