万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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1636 舎人娘子

2010-06-25 | 巻八 冬雑歌
舎人娘子雪歌一首

大口能 真神之原尓 零雪者 甚莫零 家母不有國

大口(おほくち)の 真神(まかみ)の原に 降る雪は いたくな降りそ 家もあらなくに


舎人娘子の雪の歌一首

「“大口の”オオカミが棲む原に、降る雪よ。そんなにたくさん降らないで。(オオカミには屋根がついた)家がないのですから」

1635 尼 大伴家持

2010-06-24 | 巻八 秋相聞
尼作頭句并大伴宿祢家持所誂尼續末句等和歌一首

佐保河之 水乎塞上而 殖之田乎【尼作】 苅流早飯者 獨奈流倍思【家持續】

佐保川の 水を堰(せ)き上げて 植ゑし田を【尼作】 刈れる初飯(はついひ)は ひとりなるべし【家持續】


尼が頭句(冒頭部分の句)を作り、ならびに、大伴宿祢家持が尼に誂えて末句を続けて、和(こた)える歌一首

「佐保川の、水を堰き止めて、植えた田を ―」【尼の作】

「― イネを刈り取って、(炊き上げた)新米は、一人で食べるのでしょうね」【家持が続ける】

1634 尼

2010-06-23 | 巻八 秋相聞
衣手尓 水澁付左右 殖之田乎 引板吾波倍 真守有栗子

衣手に 水渋付(みしぶつ)くまで 植ゑし田を 引板我(ひきたわ)が延(は)へ まもれる苦し


「着衣の袖に、水面に浮かぶ錆のようなものを付けてまで、田植えをしましたわ。(害獣・害鳥避けの)仕掛けの縄を張って、番をするのは辛い(仕事ですね)」

1633 作者未詳

2010-06-22 | 巻八 秋相聞
或者贈尼歌二首

手母須麻尓 殖之芽子尓也 還者 雖見不飽 情将盡

手もすまに 植ゑし萩にや かへりては 見れども飽かず 心尽さむ


ある者(ひと)が、尼に贈る歌二首

「手を休めずに、植えて(育てた)ハギに花が咲くと、見ても飽きませんね。心を尽くして(育てたものですから)」

1632 大伴家持

2010-06-21 | 巻八 秋相聞
大伴宿祢家持従久邇京贈留寧樂宅坂上大娘歌一首

足日木乃 山邊尓居而 秋風之 日異吹者 妹乎之曽念

あしひきの 山辺に居(を)りて 秋風の 日に異(け)に吹けば 妹をしぞ思ふ


大伴宿祢家持、久邇京より、寧楽(なら)の宅(いえ)に留まる、坂上大娘に贈る歌一首

「“あしひきの”山麓(の家)にいて、“秋風の”(風が)日増しに吹いてくると、大娘のことを思いだす」