二年乙丑春三月幸三香原離宮之時得娘子作歌一首(并短歌) 笠朝臣金村
三香乃原 客之屋取尓 珠桙乃 道能去相尓 天雲之 外耳見管 言将問 縁乃無者 情耳 咽乍有尓 天地 神祇辞因而 敷細乃 衣手易而 自妻跡 憑有今夜 秋夜之 百夜乃長 有与宿鴨
三香の原 旅の宿りに 玉桙の 道の行き逢ひに 天雲の 外のみ見つつ 言問はむ よしのなければ 心のみ 咽せつつあるに 天地の 神言寄せて 敷栲の 衣手交へて 己妻と 頼める今夜 秋の夜の 百夜の長さ ありこせぬかも
神亀2年(西暦725年)・乙丑・春3月。三香原離宮(みかのはらのとつみや)に(行)幸する時。娘子(おとめ)を得て作る歌一首(ならびに短歌) 笠朝臣金村
「三香の原の、旅の宿にて。“玉桙の”道の通りすがりに(少女と)出会う。“天雲の”(少女を)遠くに見かけても、声をかけるチャンスがない。心の中で咽び泣くのみ。(だが)全世界の神が(少女との仲を)取り持ってくれた。“敷栲の”着物の袖を交わして(=夫婦の契りを結んで)、少女が私の妻と、なった今夜。秋の夜は百夜の長さ。(今夜は)そうあってほしい」
三香乃原 客之屋取尓 珠桙乃 道能去相尓 天雲之 外耳見管 言将問 縁乃無者 情耳 咽乍有尓 天地 神祇辞因而 敷細乃 衣手易而 自妻跡 憑有今夜 秋夜之 百夜乃長 有与宿鴨
三香の原 旅の宿りに 玉桙の 道の行き逢ひに 天雲の 外のみ見つつ 言問はむ よしのなければ 心のみ 咽せつつあるに 天地の 神言寄せて 敷栲の 衣手交へて 己妻と 頼める今夜 秋の夜の 百夜の長さ ありこせぬかも
神亀2年(西暦725年)・乙丑・春3月。三香原離宮(みかのはらのとつみや)に(行)幸する時。娘子(おとめ)を得て作る歌一首(ならびに短歌) 笠朝臣金村
「三香の原の、旅の宿にて。“玉桙の”道の通りすがりに(少女と)出会う。“天雲の”(少女を)遠くに見かけても、声をかけるチャンスがない。心の中で咽び泣くのみ。(だが)全世界の神が(少女との仲を)取り持ってくれた。“敷栲の”着物の袖を交わして(=夫婦の契りを結んで)、少女が私の妻と、なった今夜。秋の夜は百夜の長さ。(今夜は)そうあってほしい」