万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

teacup.ブログ“Autopage”から引っ越してきました。

0304 柿本人麻呂

2006-10-31 | 巻三 雑歌
大王之 遠乃朝庭跡 蟻通 嶋門乎見者 神代之所念

大君の 遠の朝廷(みかど)と あり通ふ 島門(しまと)を見れば 神代(かむよ)し思ほゆ
―――――

「天皇が『遠い朝廷(みかど)』と通う島。(海峡の)島の門を見れば、神が治めていた時代がしのばれます」

・島門:志賀島(しかのしま 福岡県福岡市東区)、能古島(のこのしま 福岡市西区) 博多湾に位置する両島を、門に見立てたもの

0303 柿本人麻呂

2006-10-30 | 巻三 雑歌
柿本朝臣人麻呂下筑紫國時海路作歌二首

名細寸 稲見乃海之 奥津浪 千重尓隠奴 山跡嶋根者

名ぐはしき 印南(いなみ)の海の 沖つ波 千重(ちえ)に隠りぬ 大和島根は
―――――

柿本朝臣人麻呂が筑紫国に下りた時、海路で作る歌二首

「繊細で美しい、印南の海の“沖つ波”何重もの(波間に)隠れしまったよ。大和の国が」

・筑紫国:福岡県の大部分

・印南:兵庫県南部


0302 阿倍広庭

2006-10-29 | 巻三 雑歌
中納言阿倍廣庭卿歌一首

兒等之家道 差間遠焉 野干玉乃 夜渡月尓 競敢六鴨

子らが家道(いへぢ) やや間遠きを ぬばたまの 夜渡る月に 競(きほ)ひあへむかも
―――――

中納言・安倍広庭卿の歌一首

「あの娘(こ)の自宅までの道のりはやや遠い。(僕は)“ぬばたまの”夜を渡る月と競争して、月よりも先に(あの娘の家まで)着けるかな?」

0301 長屋王

2006-10-28 | 巻三 雑歌
磐金之 凝敷山乎 超不勝而 哭者泣友 色尓将出八方

岩が根の こごしき山を 越えかねて 音(ね)には泣くとも 色に出でめやも
―――――

「巨大な岩石が行く手を阻む険しい山を超えられず、泣きたい気持ちにさせられても、(男たるもの)人前では、決して顔に出したりはしないぜ」

0300 長屋王

2006-10-27 | 巻三 雑歌
長屋王駐馬寧樂山作歌二首

佐保過而 寧樂乃手祭尓 置幣者 妹乎目不離 相見染跡衣

佐保過ぎて 奈良の手向けに 置く幣(ぬさ)は 妹を目離(か)れず 相見しめとぞ
―――――

長屋王、ウマを寧楽山(ならやま)に駐めて作る歌二首

「佐保を通過して、平城山(ならやま)峠の神に差し上げる幣は『妻と会わせて欲しい』という祈りを込めたものです」

・幣の奉げ物をした場所は、添御縣坐神社(そうのみあがたにいますじんじゃ)周辺といわれる

・添御縣坐神社:奈良県奈良市歌姫町