万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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1580 文馬養

2010-04-30 | 巻八 秋雑歌
棹壮鹿之 来立鳴野之 秋芽子者 露霜負而 落去之物乎

さを鹿の 来立(きた)ち鳴く野の 秋萩は 露霜負ひて 散りにしものを

右二首文忌寸馬養

天平十年戊寅秋八月廿日



「“さを鹿の”(牡鹿が)来て立って鳴く野原の、秋のハギは、露や霜に打たれて、散ってしまったよ」

右二首は、文忌寸馬養(ふみのいみきうまかい)

天平10年(西暦738年)年・戊寅・秋・8月20日


1579 文馬養

2010-04-29 | 巻八 秋雑歌
朝扉開而 物念時尓 白露乃 置有秋芽子 所見喚鶏本名

朝戸開けて 物思(ものも)ふ時に 白露の 置ける秋萩 見えつつもとな


「朝、戸を開けて、物思いの時間を過ごしていると、“白露の”(露が)降りている秋のハギが、ふと目に入ります」

1578 阿倍虫麻呂

2010-04-28 | 巻八 秋雑歌
今朝鳴而 行之鴈鳴 寒可聞 此野乃淺茅 色付尓家類

今朝鳴きて 行きし雁(かり)が音 寒みかも この野の浅茅 色づきにける

右二首阿倍朝臣蟲麻呂


「今朝の(夜明け頃)、(上空を)飛ぶガンの鳴き声が(聞こえてきた)。寒いからか。この野原のまばらに生えたチガヤも、(茶色く)色づいてきた」

右の二首は、阿倍朝臣虫麻呂

1577 阿倍虫麻呂

2010-04-27 | 巻八 秋雑歌
秋野之 草花我末乎 押靡而 来之久毛知久 相流君可聞

秋の野の 尾花が末(うれ)を 押しなべて 来(こ)しくもしるく 逢へる君かも


「秋の野原(に群生する)、ススキの穂先を、押し分けて、やって来たから、きみに会えたのです」

1576 巨曽倍津島

2010-04-26 | 巻八 秋雑歌
此岳尓 小壮鹿履起 宇加□良比 可聞可聞為良久 君故尓許曽

この岡に 小鹿踏み起し うかねらひ かもかもすらく 君故にこそ

右一首長門守巨曽倍朝臣津嶋


「この丘で、小さなシカを(捕獲するため)、地面を踏んで“うかねらふ”(窺がい狙う)。とにもかくにも、あなたのためなんです」

右の一首は、長門守・巨曽倍朝臣津島