万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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1338 作者未詳

2009-08-31 | 巻七 比喩歌
吾屋前尓 生土針 従心毛 不想人之 衣尓須良由奈

我がやどに 生(お)ふるつちはり 心ゆも 思はぬ人の 衣(きぬ)に摺(す)らゆな


「我が家(の庭)に、生えたメハジキよ。心から、思ってもいない男から(プロポーズを受けて、その男の)色に染まってはいけません」

●つちはり(土針):メハジキ(目弾き) ツクバネソウ(衝羽根草) エンレイソウ(延齢草)ともいわれる

1337 作者未詳

2009-08-30 | 巻七 比喩歌
葛城乃 高間草野 早知而 標指益乎 今悔拭

葛城の 高間の草野(かやの) 早知りて 標刺さましを 今ぞ悔しき


「葛城の、高間山のカヤ野原。早くに知っていれば、標を立てていたものを。今となっては悔しいのみ」

(葛城の高間山に、俺が恋した女が住んでいた。彼女の存在を早く知っていれば、俺がモーションをかけたのに。彼女が人妻となってしまった現在、悔しいったらないぜ)

1336 作者未詳

2009-08-29 | 巻七 比喩歌
寄草

冬隠 春乃大野乎 焼人者 焼不足香文 吾情熾

冬こもり 春の大野を 焼く人は 焼き足らねかも 我が心焼く


草に寄せる

「“冬こもり”春の広大な原野を、焼く人は、(野焼きだけでは)焼き足らないのかしら。私の心まで焼いているわ(恋はすべてを焼き尽くす)」

1335 作者未詳

2009-08-28 | 巻七 比喩歌
思□ 痛文為便無 玉手次 雲飛山仁 吾印結

思ひあまり いたもすべなみ 玉たすき 畝傍(うねび)の山に 我れ標結(しめゆ)ひつ


「思うあまり、やるせなくて。“玉たすき”畝傍山に、僕は標縄を張る」

●畝傍山:奈良県橿原市の北西部 標高199メートル

1334 作者未詳

2009-08-27 | 巻七 比喩歌
奥山之 於石蘿生 恐常 思情乎 何如裳勢武

奥山の 岩に苔生(こけむ)し 畏(かしこ)けど 思ふ心を いかにかもせむ


「“奥山の”岩に苔むして、恐ろしいのだが。(山を)思う心は、どうしようもない」