万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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1429 若宮年魚麻呂

2009-11-30 | 巻八 春雑歌
櫻花歌一首(并短歌)

□嬬等之 頭挿乃多米尓 遊士之 蘰之多米等 敷座流 國乃波多弖尓 開尓鶏類 櫻花能 丹穂日波母安奈尓

娘子(をとめ)らが かざしのために 風流士(みやびを)の かづらのためと 敷きませる 国のはたてに 咲きにける 桜の花の にほひはもあなに


桜花の歌一首(並びに短歌)

「少女たちの、髪飾りのために。紳士の、髪飾りのために。天皇が統治する、国土の隅々にまで咲き誇る、サクラの花の、なんという美しさよ」

1428 作者未詳

2009-11-29 | 巻八 春雑歌
草香山歌一首

忍照 難波乎過而 打靡 草香乃山乎 暮晩尓 吾越来者 山毛世尓 咲有馬酔木乃 不悪 君乎何時 徃而早将見

おしてる 難波(なには)を過ぎて うち靡く 草香の山を 夕暮れに 我が越え来れば 山も狭(せ)に 咲ける馬酔木(あしび)の 悪しからぬ 君をいつしか 行きて早見(はやみ)む

右一首依作者微不顕名字


草香山の歌一首

「“おしてる”難波を過ぎて“うち靡く”草香の山を、夕暮れに超えてゆけば、山も狭しと(いっぱいに)咲いているアセビではないが、嫌いになれない(大好きな)あなたに、早くお会いしたいものです」

右の一首は作者微(いや)しきに依りて名字(なあざな)を顕(あらわ)さず

右の一首は、作者が低い(身分)であることから、名を表記しない


1427 山部赤人

2009-11-28 | 巻八 春雑歌
従明日者 春菜将採跡 標之野尓 昨日毛今日母 雪波布利管

明日よりは 春菜摘まむと 標(し)めし野に 昨日も今日も 雪は降りつつ


「明日から、春の野草を摘もうと、野に標を張っていたのですが。昨日も今日も、雪が降っています」

(ここは俺の土地だから、勝手に立ち入られないようにトラロープを張り巡らせていたんだよ。昨日も今日も、雪が降ってるじゃないか)

1426 山部赤人

2009-11-27 | 巻八 春雑歌
吾勢子尓 令見常念之 梅花 其十方不所見 雪乃零有者

我が背子に 見せむと思ひし 梅の花 それとも見えず 雪の降れれば


「私の夫に、見せようと思った、ウメの花が見えないんです。雪が降ってるから(視界が悪いんです)」

●女性の気持ちになって詠んだ詩歌か

1425 山部赤人

2009-11-26 | 巻八 春雑歌
足比奇乃 山櫻花 日並而 如是開有者 甚戀目夜裳

あしひきの 山桜花(やまさくらばな) 日並べて かく咲きたらば いたく恋ひめやも


「“あしひきの”ヤマザクラが、何日も咲きっぱなしだったら、こんなに恋しくは思わないでしょう」