万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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1631 大伴家持

2010-06-20 | 巻八 秋相聞
大伴宿祢家持贈安倍女郎歌一首

今造 久邇能京尓 秋夜乃 長尓獨 宿之苦左

今造る 久迩(くに)の都に 秋の夜の 長きにひとり 寝(ぬ)るが苦しさ


大伴宿祢家持、安倍女郎に贈る歌一首

「今現在建造中の、恭仁京の都にいる。秋の夜長に、一人で、寝るのが苦しいのだ」

1630 大伴家持

2010-06-19 | 巻八 秋相聞
反歌

高圓之 野邊乃容花 面影尓 所見乍妹者 忘不勝裳

高円の 野辺のかほ花 面影に 見えつつ妹は 忘れかねつも


反歌

「高円山の、野原の顔花(かおばな)のような、(美しい)面影の大嬢が、忘れられないよ」

●顔花:アサガオ、オモダカ、カキツバタ、シャクヤク、ヒルガオ、ムクゲなど または 美しい花の意 諸説あるが未詳

1629 大伴家持

2010-06-18 | 巻八 秋相聞
大伴宿祢家持贈坂上大嬢歌一首(并短歌)

叩々 物乎念者 将言為便 将為々便毛奈之 妹与吾 手携而 旦者 庭尓出立 夕者 床打拂 白細乃 袖指代而 佐寐之夜也 常尓有家類 足日木能 山鳥許曽婆 峯向尓 嬬問為云 打蝉乃 人有我哉 如何為跡可 一日一夜毛 離居而 嘆戀良武 許己念者 胸許曽痛 其故尓 情奈具夜登 高圓乃 山尓毛野尓母 打行而 遊徃杼 花耳 穂日手有者 毎見 益而所思 奈何為而 忘物曽 戀云物呼

ねもころに 物を思へば 言はむすべ 為(せ)むすべもなし 妹と我(あ)れと 手携(てたづ)さはりて 朝(あした)には 庭に出で立ち 夕(ゆふへ)には 床(とこ)うち掃(はら)ひ 白栲の 袖さし交へて さ寝し夜や 常にありける あしひきの 山鳥こそば 峰向(をむか)ひに 妻問ひすといへ うつせみの 人なる我れや 何すとか 一日一夜(ひとひひとよ)も 離(さか)り居て 嘆き恋ふらむ ここ思へば 胸こそ痛き そこ故に 心なぐやと 高円(たかまと)の 山にも野にも うち行きて 遊び歩けど 花のみ にほひてあれば 見るごとに まして偲はゆ いかにして 忘れむものぞ 恋といふものを


大伴宿祢家持が、坂上大嬢に贈る歌一首(ならびに短歌)

「(二人の仲が)親しくなるほど、ものを思えど、言葉はなく、なにをすればよいのか分からない。

大嬢(きみ)と家持(ぼく)、手を取り合って、朝は庭に出て、夜には寝室を片付けて“白栲の”袖を交えて、抱き合う夜が、日常であった。“あしひきの”ヤマドリ(のオス)は峰の向こうに(別れて棲む)メスをたずねるという。

“うつせみの”人間である私は、一日一夜(大嬢と)離れて暮らすだけで、嘆き苦しむのか。このようなことを思うだけで、胸が痛い。それゆえに、心を慰めようと、高円山の、山頂や野原へ出かけては遊び歩くが、花が香ると、(その花を)見るたびに、(大嬢のことが)しのばれる。どうやって、忘れられようか。恋というものを」

1628 大伴家持

2010-06-17 | 巻八 秋相聞
吾屋前之 芽子乃下葉者 秋風毛 未吹者 如此曽毛美照

我が宿の 萩の下葉(したば)は 秋風も いまだ吹かねば かくぞもみてる

右二首天平十二年庚辰夏六月徃来


「私の自宅の、ハギの下葉は、秋の風がまだ吹かないのに、すっかり色づいたよ」

右の二首は、天平12年(西暦740年)・庚辰・夏6月、(坂上大嬢の元に)往来(したさいに詠む)

1627 大伴家持

2010-06-16 | 巻八 秋相聞
大伴宿祢家持攀非時藤花并芽子黄葉二物贈坂上大嬢歌二首

吾屋前之 非時藤之 目頬布 今毛見壮鹿 妹之咲容乎

我が宿の 時じき藤の めづらしく 今も見てしか 妹が笑(ゑ)まひを


大伴宿祢家持、季節はずれの藤の花ならびに芽子(ハギ)の黄葉(もみじ)の二つの物をよじり、坂上大嬢に贈る歌二首

「私の自宅に咲いた、季節はずれのフジがめずらしい。今、見たいものは、大嬢の笑顔だ」