万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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0151 額田王

2006-05-31 | 巻二 挽歌
天皇大殯之時歌二首

如是有乃 懐知勢婆 大御船 泊之登萬里人 標結麻思乎 【額田王】

かからむと かねて知りせば 大御船 泊(は)てし泊りに 標結(しめゆ)はましを 【額田王】


天智天皇の大殯の時の歌二首

「あらかじめ(悲劇が起こることが)分かっていたら、天智さまのお船が停泊中の港に、注連縄を結いましたものを(死出の旅にでられないようにしたかったものです)」 【額田王】

●大殯(おおあらき):貴人の遺体を、墳墓が完成するまで仮に納めて置くこと または その場所

●標結(しめゆ):悪霊が入らないように標縄(しめなわ)を結う


0150 婦人 姓氏未詳

2006-05-30 | 巻二 挽歌
天皇崩時婦人作歌一首 (姓氏未詳)

空蝉師 神尓不勝者 離居而 朝嘆君 放居而 吾戀君 玉有者 手尓巻持而 衣有者 脱時毛無 吾戀 君曽伎賊乃夜 夢所見鶴

うつせみし 神に堪へねば 離れ居て 朝嘆く君 放(さか)り居て 我(あ)が恋ふる君 玉ならば 手に巻き持ちて 衣(きぬ)ならば 脱く時もなく 我が恋ふる 君ぞ昨夜(きぞ)の夜 夢(いめ)に見えつる


(天智)天皇が崩御されたとき、ある女性が作る歌 (姓氏未詳)

「この世の人(人間)は、神には及びません。現世から離れた天智天皇陛下を思い、嘆きます。(魂は)遠くに離れていても、私が恋する陛下さま。(天智さまが)玉ならば(私は、それを)手に巻いて持ちましょう。(天智さまが)衣ならば、脱衣いたしません。わたくしが恋する天智さまが、昨夜、私の夢に現れました」

0149 倭皇后

2006-05-29 | 巻二 挽歌
天皇崩後之時倭太后御作歌一首

人者縦 念息登母 玉蘰 影尓所見乍 不所忘鴨

人はよし 思ひやむとも 玉葛 影に見えつつ 忘らえぬかも


天智天皇が崩御後、倭皇后が作る歌一首

「(時が過ぎ)人が亡き天智天皇を忘れようとも“玉葛”私には(あのひとの)面影が見えて、忘れることなどできません」

0148 倭皇后

2006-05-28 | 巻二 挽歌
一書曰近江天皇聖躰不豫御病急時太后奉獻御歌一首

青旗乃 木旗能上乎 賀欲布跡羽 目尓者雖視 直尓不相香裳

青旗の 木幡(こはた)の上を 通ふとは 目には見れども 直(ただ)に逢はぬかも


一書に曰く、近江天皇が不治の病に倒れ、容態が急変したとき、太后(倭皇后)が奉る御歌一首

「“青旗の”(山科の)木幡の上空を(天智天皇の)御魂が通っているのが目に見えるようです。ですが、あなたさまとはもう、直接にお会いすることができないのですね」

0147 倭皇后

2006-05-27 | 巻二 挽歌
近江大津宮御宇天皇代 天命開別天皇謚曰天智天皇

天皇聖躬不豫之時太后奉御歌一首

天原 振放見者 大王乃 御壽者長久 天足有

天の原 振り放(さ)け見れば 大君の 御寿(みいのち)は長く 天足らしたり


(天智)天皇が不治の病に冒されたとき、太后(倭皇后)が奉る御歌一首

「“天の原”振り仰いで遠方を見渡せば、“大君の”御命は長く、それはそれは天を満たしておられます」

●近江大津宮:滋賀県大津市