1126 作者未詳 2009-01-31 | 巻七 雑歌 年月毛 末經尓 明日香川 湍瀬由渡之 石走無 年月も いまだ経なくに 明日香川 瀬々(せぜ)ゆ渡しし 石橋(いしはし)もなし 「年月も、あまり過ぎてはいないのだが。明日香川の複数の瀬に渡した、石橋も(今は)ない」
1125 作者未詳 2009-01-30 | 巻七 雑歌 思故郷 清湍尓 千鳥妻喚 山際尓 霞立良武 甘南備乃里 清き瀬に 千鳥妻呼び 山の際に 霞立つらむ 神(かむ)なびの里 故郷を思(しの)ぶ 「清らかな川瀬にて、チドリがつれあいをよぶ。山の裾に、霧が立ちこめる。神霊が鎮座まします山の里よ」
1124 作者未詳 2009-01-29 | 巻七 雑歌 佐保川尓 小驟千鳥 夜三更而 尓音聞者 宿不難尓 佐保川に 騒(さわ)ける千鳥 さ夜更(よふ)けて 汝(な)が声聞けば 寐(い)ねかてなくに 「佐保川で、騒ぐチドリ。夜は更ける。おまえの声を聞けば、眠れなくなる」
1123 作者未詳 2009-01-28 | 巻七 雑歌 佐保河之 清河原尓 鳴知鳥 河津跡二 忘金都毛 佐保川の 清き川原に 鳴く千鳥 かはづと二つ 忘れかねつも 「佐保川の、清らかな川原で、チドリが鳴く。カエルと一緒だよ。忘れられないなあ」
1122 作者未詳 2009-01-27 | 巻七 雑歌 詠鳥 山際尓 渡秋沙乃 行将居 其河瀬尓 浪立勿湯目 山の際(ま)に 渡るあきさの 行きて居(ゐ)む その川の瀬に 波立つなゆめ 鳥を詠む 「山の稜線にそって、飛ぶアイサが、(浅瀬に)降りて休息するよ。その川の瀬よ。波立たないでおくれ」 ●あきさ(秋沙):アイサ カモ科アイサ属の鳥の総称