万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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1519 山上憶良

2010-02-28 | 巻八 秋雑歌
久方之 漢瀬尓 船泛而 今夜可君之 我許来益武

久方の 天の川瀬に 舟浮けて 今夜(こよひ)か君が 我がり来まさむ

右神亀元年七月七日夜左大臣宅


「“久方の”天の川の浅瀬に、小舟を浮かべて。今夜はあなた、私の元に来てくださるのね」

右は、神亀元年(西暦724年)7月7日の夜、左大臣宅(にて作る)

1518 山上憶良

2010-02-27 | 巻八 秋雑歌
山上臣憶良七夕歌十二首

天漢 相向立而 吾戀之 君来益奈利 紐解設奈 【一云 向河】

天の川 相向き立ちて 我(あ)が恋ひし 君来ますなり 紐解き設(ま)けな 【一云 川に向ひて】

右養老八年七月七日應令


山上臣憶良の、七夕の歌十二首

「天の川に、向かい合って立っている、私の恋する夫(ひと)が来るわ。さ、着衣の紐を解いて、寝具の準備をしましょう 【川に向かって】」

右は、養老8年(西暦724年)7月7日、令に応(こた)える

●養老8年2月4日(ユリウス暦724年3月3日)、『神亀』に改元したので、「養老8年7月7日」という日付は存在しない


1517 長屋王

2010-02-26 | 巻八 秋雑歌
長屋王歌一首

味酒 三輪乃祝之 山照 秋乃黄葉乃 散莫惜毛

味酒(うまさけ) 三輪のはふりの 山照らす 秋の黄葉(もみち)の 散らまく惜しも


長屋王の歌一首

「“味酒”三輪の神職が仕えた、(その)山を(美しく)照らす、秋のもみじの葉が、散ってゆくのが残念だ」

1516 山部王

2010-02-25 | 巻八 秋雑歌
山部王惜秋葉歌一首

秋山尓 黄反木葉乃 移去者 更哉秋乎 欲見世武

秋山に もみつ木(こ)の葉の うつりなば さらにや秋を 見まく欲りせむ


山部王が、秋葉(あきつは)を惜しむ歌一首

「秋の山(を飾る)、もみじの木の葉が、散ったあとでは、さらに秋(の季節)を、見たくてたまらなくなるでしょう」

●秋葉(あきつは):秋の木の葉

1515 但馬皇女

2010-02-24 | 巻八 秋雑歌
但馬皇女御歌一首(一書云子部王作)

事繁 里尓不住者 今朝鳴之 鴈尓副而 去益物乎 【一云 國尓不有者】

言繁(ことしげ)き 里に住まずは 今朝鳴きし 雁にたぐひて 行かましものを 【一云 国にあらずは】


但馬皇女の御歌一首(一書が云(つた)えるには、子部王の作である)

「(男女の)噂で持ちきりの、里になんか住まないで、今朝鳴いたガンと一緒に、(遠くまで)行きたいものですわ」