万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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1654 坂上郎女

2010-07-13 | 巻八 冬雑歌
大伴坂上郎女雪歌一首

松影乃 淺茅之上乃 白雪乎 不令消将置 言者可聞奈吉

松蔭の 浅茅の上の 白雪を 消たずて置かむ ことはかもなき


大伴坂上郎女、雪の歌一首

「マツの陰の、小さなチガヤの上に、(残る)白雪が、(溶けて)消えぬようこのまま置いておく、(有効な)手段はないのでしょうか」

1653 県犬養娘子

2010-07-12 | 巻八 冬雑歌
縣犬養娘子依梅發思歌一首

如今 心乎常尓 念有者 先咲花乃 地尓将落八方

今のごと 心を常に 思へらば まづ咲く花の 地に落ちめやも


県犬養娘子、梅に依りて思いを発(おこ)す歌一首

「(昔も)今も、(わたしの)心は常に、(あなたを)思っています。(それでも)一番早く咲く(ウメの)花のように、(わたしの心も)地面に落ちるのでしょうか」

1652 他田広津娘子

2010-07-11 | 巻八 冬雑歌
他田廣津娘子梅歌一首

梅花 折毛不折毛 見都礼杼母 今夜能花尓 尚不如家利

梅の花 折りも折らずも 見つれども 今夜(こよひ)の花に なほしかずけり


他田広津娘子、梅の歌一首

「ウメの花は、手折っては(または)手折らずに、見てまいりました。(しかし)今夜の花の、(素晴らしさには全く)およびませんね」

1651 坂上郎女

2010-07-10 | 巻八 冬雑歌
大伴坂上郎女歌一首

沫雪乃 比日續而 如此落者 梅始花 散香過南

淡雪の このころ継ぎて かく降らば 梅の初花 散りか過ぎなむ


大伴坂上郎女の歌一首

「淡雪が、最近はいつも、降っていますわ。(これでは、せっかく咲いた)ウメの初花が、散ってしまいますね」

1650 阿倍虫麻呂

2010-07-09 | 巻八 冬雑歌
御在西池邊肆宴歌一首

池邊乃 松之末葉尓 零雪者 五百重零敷 明日左倍母将見

池の辺の 松の末葉(うらば)に 降る雪は 五百重降(いほへふ)りしけ 明日さへも見む

右一首作者未詳 但堅子阿倍朝臣虫麻呂傳誦之


(聖武天皇が)西の池の辺(ほとり)に御在中に、宴を開催したときの歌一首

「池のほとりの、マツの枝先の葉に、降る雪は、いくえにも重なって降るといいます。明日にも(降り積もった雪を)見ましょう」

右の一首は、作者未詳。但し、堅子(じゅし)・阿倍朝臣虫麻呂が伝誦したものか