万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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1605 大伴家持

2010-05-25 | 巻八 秋雑歌
大伴宿祢家持歌一首

高圓之 野邊乃秋芽子 此日之 暁露尓 開兼可聞

高円(たかまと)の 野辺(のへ)の秋萩 このころの 暁露(あかときつゆ)に 咲きにけむかも


大伴宿祢家持の歌一首

「高円の、野原に(自生する)秋のハギ。この頃の、明け方に降りる露で、(花が)咲いたことでしょう」

1604 大原今城

2010-05-24 | 巻八 秋雑歌
大原真人今城傷惜寧樂故郷歌一首

秋去者 春日山之 黄葉見流 寧樂乃京師乃 荒良久惜毛

秋されば 春日の山の 黄葉見(もみちみ)る 奈良の都の 荒(あ)るらく惜しも


大原真人今城、寧楽(なら)の故郷を傷み惜しむ歌一首

「秋が来ると、春日の山のもみじが見られる、奈良の都(=平城京)でした。(遷都の影響で、日ごとに)荒れてゆく(平城京)が、惜しまれるのです」

●聖武天皇が、平城京から久邇京に遷都した頃に詠んだ詩歌か

1603 大伴家持

2010-05-23 | 巻八 秋雑歌
頃者之 朝開尓聞者 足日木篦 山呼令響 狭尾壮鹿鳴哭

このころの 朝明(あさけ)に聞けば あしひきの 山呼び響(とよ)め さを鹿鳴くも

右二首天平十五年癸未八月十六日作


「この頃は、明け方に聞けば、“あしひきの”山中で(妻を)呼ぶため(声を)響かせて、牡鹿が鳴くよ」

右の二首は、天平15年(西暦743年)年・癸未・8月16日の作

1602 大伴家持

2010-05-22 | 巻八 秋雑歌
大伴宿祢家持鹿鳴歌二首

山妣姑乃 相響左右 妻戀尓 鹿鳴山邊尓 獨耳為手

山彦の 相響(あひとよ)むまで 妻恋ひに 鹿鳴(かな)く山辺(やまへ)に 独りのみして


大伴宿祢家持の、鹿鳴(しかのね)の歌二首

「やまびこが響き合うまで、妻を呼ぶ。牡鹿が鳴く山のほとりで、(私は)独りでいる」

1601 石川広成

2010-05-21 | 巻八 秋雑歌
頬布 君之家有 波奈須為寸 穂出秋乃 過良久惜母

めづらしき 君が家なる 花すすき 穂に出づる秋の 過(す)ぐらく惜しも


「すばらしい。あなたの家の、ススキの花よ。(ススキの)穂を(この世に)出した秋が、(日ごと)過ぎてゆくのが惜しいのだ」